王子様に恋をした【完結】

Saeko

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第二章 前世其ノ壱

第三幕 社交界デビュー⑹

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御者の

「公爵家に到着致しました。」

の声に、私は馬車の窓から外を覗き見ました。
すると、夕暮れではありましたが、それはそれは綺麗なお庭が見えたのでした。

「なんて素敵で綺麗なお庭なの。今度また明るい内に来てみたいわ。」

と小さな声で呟いていたら、

「それは、ご招待がない限り難しいだろうね。」

とお兄様から冷静に言われてしまいました。

「でもアイリーン?王宮のお庭はもっと素晴らしいんだよ。アイリーンに一度見せてあげたいといつも思っているんだ。」

「そうなんですね。」

お兄様のお言葉を聞き、私はまだ見ぬ王宮の庭園を想像しながら馬車を降りました。

公爵家のお屋敷の中へと入ると、広く綺麗なエントランスホールがありました。ホールの真ん中には、お庭に咲いていた花々なのでしょうか。大きな花瓶に、それはもう言葉に出来ない程美しく花が生けてありました。

私達家族は、その素晴らしいエントランスホールを抜け、今夜の夜会が行われるホールへと入りました。

ホールの天井には豪華なシャンデリアが
床には磨きあげられ美しい模様を作り出していた大理石が敷き詰められていました。

流石ガーディランス公爵家です。そもそもガーディランス公爵様のご党首のお母様は、王家であるアンダーソンのご出身の方。
前陛下の王弟のご息女でいらっしゃり、現陛下とは従兄妹関係になられるそうです。
リュークアッセンドラ殿下とガーディランス公爵家のご令息のロイド様は縁続きのご関係なのです。

リュークアッセンドラ殿下とロイド様は、1歳違いということもあり、『リューク』『ロイ』と呼び合い、お小さい頃はよく双方のお屋敷のお庭で仲良く遊んでいたとの事でした。

そんな仲の良さもあるのか、王太子殿下は、1歳年下のロイド様を補佐につけ、王太子としての執務にあたっておられました。

今日はそんなロイド様のご生誕祭なのですから、王太子殿下がお越しになられるのは当然の事であり、お年頃のお2人のお妃候補として伯爵以上の令嬢が集まりました。

令嬢達は、綺麗なドレスに身を包み、豪華な宝石を見に纏っておられます。

「あら、ご覧になって?ターナドリー様。あちらにハイデバード公爵家のサラティーニ様がいらっしゃるわ。」

「本当ですの?カタリーナ様。まあ、本当ですわ。サラティーニ様が夜会に来られるなんて、お珍しいこと。」

「何を仰っていらっしゃるの?サラティーニ様は、リュークアッセンドラ殿下とロイド様の幼馴染みでいらっしゃいますのよ。ロイド様のご生誕祭に来られるのは当たり前ではありませんか。」

「失礼致しました、ローズウェルト様」

「お勉強不足ですわね。ターナドリー様。」

「……」

ローズウェルト様と呼ばれた令嬢に、とがめられたターナドリー様は唇を噛んで俯いていらっしゃいました。


そうなのね。
あちらでにこやかに談笑していらっしゃる令嬢が、サラティーニ公爵令嬢様でしたの。お噂どおりとてもお綺麗な方で、私はしばしサラティーニ様のご一団に見とれておりました。
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