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第二章 前世其ノ壱
第二幕 お茶会⑷
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邸に戻り、その日のお茶会の話を夕食時にお父様に聞いていただきたくて、私はお父様のお帰りを今か今かと部屋で待っていました。
なのに…お母様が
「お父様がお帰りになるまで、この本を読んでいらっしゃい。」
と、呆れたお顔をされながら、そう仰いました。
きっと本日のお茶会の時に、淑女を忘れ興奮して殿下とお話してしまった事を、お兄様からお聞きになったのだと思います。
その結果、お母様から課題を与えられてしまいました。
でも、そんな事はどうでも良くなる程、私の頭の中は殿下の事でいっぱいでした。
(殿下はどんなお菓子を好まれるのかしら…もう直ぐ18歳におなりなのだから、お酒もお召しになるのよね?だったら、ワインに合うお菓子がいいかしら?)
私は、どんなお菓子を作ってお届けしようか、そればかりを考え目の前の『淑女とは』と書かれた分厚い本の表紙を開けることなく机の上に置いたままにしていました。
後でお母様から、
「淑女とはどんな女性である。と本に書かれていたの?」
と聞かれて何も答えられず、酷く叱られてしまう事など、その時の私は全く思ってもおりませんでした。
夕食時、お父様に今日のお茶会での事を興奮してお話した事でも、お母様からきつく注意を受けてしまったのは、当然の事でした。
「アリアンヌよ。そんなにきつく言わなくても大丈夫だと思うぞ?アイリーンだってきっと分かっているはずだからね。そうだろう?アイリーン。」
「はい、お父様。分かっております。……でも……全て私が悪いのです。あれ程淑女教育をお母様から受けましたのに、あの様にはしゃいでしまったのですから。……お母様、それからお兄様、本当にごめんなさい。」
私が頭を下げ謝罪すると、
「分かれば良いのですアイリーン。でも覚えておきなさい。貴女の行いは、お父様のお仕事にも影響を及ぼすのです。」
「はい、お母様。」
お母様の言葉を俯きながら聞いていると、
「アイリーン。僕達は貴族なんだ。振る舞いを一歩間違えただけで、直ぐにそこをつついて蹴落とそうとする人達がいるんだよ。だから気をつけなくちゃならないんだ。」
「はい、お兄様。」
「分かってくれたらそれでいいよアイリーン。二度と同じ過ちをしない事が大事なんだよ。これからも淑女の勉強を頑張りなさい。」
「はい、お父様。」
「さあ、折角の料理が冷めてしまったね。食べようか。」
お父様が暗くなりかけた私を励ます様に仰いました。
「そうね、頂きましょう。アンソニー、アイリーン。」
「「はい!お母様」」
再び明るい話し声が聞こえてきた食堂。私は家族の笑顔に包まれながら、家族から愛されている事に幸せを感じておりました。
なのに…お母様が
「お父様がお帰りになるまで、この本を読んでいらっしゃい。」
と、呆れたお顔をされながら、そう仰いました。
きっと本日のお茶会の時に、淑女を忘れ興奮して殿下とお話してしまった事を、お兄様からお聞きになったのだと思います。
その結果、お母様から課題を与えられてしまいました。
でも、そんな事はどうでも良くなる程、私の頭の中は殿下の事でいっぱいでした。
(殿下はどんなお菓子を好まれるのかしら…もう直ぐ18歳におなりなのだから、お酒もお召しになるのよね?だったら、ワインに合うお菓子がいいかしら?)
私は、どんなお菓子を作ってお届けしようか、そればかりを考え目の前の『淑女とは』と書かれた分厚い本の表紙を開けることなく机の上に置いたままにしていました。
後でお母様から、
「淑女とはどんな女性である。と本に書かれていたの?」
と聞かれて何も答えられず、酷く叱られてしまう事など、その時の私は全く思ってもおりませんでした。
夕食時、お父様に今日のお茶会での事を興奮してお話した事でも、お母様からきつく注意を受けてしまったのは、当然の事でした。
「アリアンヌよ。そんなにきつく言わなくても大丈夫だと思うぞ?アイリーンだってきっと分かっているはずだからね。そうだろう?アイリーン。」
「はい、お父様。分かっております。……でも……全て私が悪いのです。あれ程淑女教育をお母様から受けましたのに、あの様にはしゃいでしまったのですから。……お母様、それからお兄様、本当にごめんなさい。」
私が頭を下げ謝罪すると、
「分かれば良いのですアイリーン。でも覚えておきなさい。貴女の行いは、お父様のお仕事にも影響を及ぼすのです。」
「はい、お母様。」
お母様の言葉を俯きながら聞いていると、
「アイリーン。僕達は貴族なんだ。振る舞いを一歩間違えただけで、直ぐにそこをつついて蹴落とそうとする人達がいるんだよ。だから気をつけなくちゃならないんだ。」
「はい、お兄様。」
「分かってくれたらそれでいいよアイリーン。二度と同じ過ちをしない事が大事なんだよ。これからも淑女の勉強を頑張りなさい。」
「はい、お父様。」
「さあ、折角の料理が冷めてしまったね。食べようか。」
お父様が暗くなりかけた私を励ます様に仰いました。
「そうね、頂きましょう。アンソニー、アイリーン。」
「「はい!お母様」」
再び明るい話し声が聞こえてきた食堂。私は家族の笑顔に包まれながら、家族から愛されている事に幸せを感じておりました。
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