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第6章 番外編(聖獣ユニコーンとの出会い)

白馬と帰宅

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「着いたわよ、マーミリアン。起きられる?」
と仰った母上の声に私は目を開けると、
目の前には森の泉が広がっていた。

戻ってこれたと安堵したが直ぐに私は違和感を覚えた。
「白馬?私の白馬は?」

そう。腕に抱いていた筈の白馬が居なくなっていたんだ。

「安心なさい、マーミリアン。白馬はもう馬車にいるわ。」
「え?もうですか?」
「そうよ。あなたにとって、初めての転移魔法だったわね。ごめんなさい。無茶をさせたわね。」
と仰って、母上は私の頭を撫でながら、回復魔法をかけて下さった。

どうやら私は、初めての転移魔法に酔ってしまい、気を失っていたらしいんだ。

ご多分にもれず、ターシャも父上の腕の中で気を失ってしまった為、既に母上から回復魔法をかけられた後、馬車に乗せられ、白馬と一緒に寝ているそうだ。

「歩けるか?マーミリアン。」
と父上から聞かれた私は、
「大丈夫です。」
と答え、なんとか自力で馬車まで歩いていき、扉を開けて白馬の様子を確認しようとして驚いた。

何故なら馬車の中は、いつもとは違い、向かい合わせの座席がなくなっていて、まるで寝台の様に平らになっていたからだ。

「どうなってるの?」
と思わず呟くと、
「この馬車のそれぞれの座席の下にはね?可動式の台が収納されていたのよ。それを引っ張り出して、座席と同じ高さに出来る器具を台の下に敷けば、座席が寝台ベッドになる特別仕様の馬車なの。」
と母上が教えて下さった。

「そうだったのですか。生まれて初めて知りました。」
と感心していると、
「ユニコ…… コホン!白馬が心配だから、直ぐに屋敷に帰るわ。マーミリアン?自分で乗れる?」
と母上に聞かれ、私は自力で馬車に這い上がった。

そして、母上がいつもされる様に馬車の扉に内側から鍵をかけると、既に寝ているターシャと白馬の間に座り、積んであったクッション二つをターシャの頭の上に置いて馬車が揺れてもターシャが頭をぶつけない様にしてやると、白馬の頭の下にもクッションを敷いてやった。

「出すぞ、マーミリアン」
と父上の声が御者台から聞こえたから、私ははめ込んでいるガラス窓をコンコンと叩き、了承の意を伝えた。

馬車はゆっくりと走り出し、やがてそれは速さを増していく。

猛烈な速さなのは、外の飛ぶように後ろに流れていく景色から分かったが、だがしかし、馬車は一向に揺れない。

きっと母上が、馬車を結界で守り、父上の愛馬マークと母上の愛馬スコットに身体強化魔法をかけたのだろう。

そして今朝、屋敷から泉までかけた移動時間の半分程の時間で、私達を乗せた馬車は、カルディール伯爵邸に到着したんだ。

私が馬車の内鍵を開けると、父上は
「先ずはナターシャを寝かせてくる。マーミリアンは、俺が戻るまで白馬を診ててやりなさい。」
と仰って、ターシャを抱いて屋敷の中に入って行った。

私は父上の言いつけどおり、白馬の様子を注意深く診ていると、白馬が薄らと眼を開けて私を見たんだ。

「気がついたかい?ここはカルディール伯爵邸、私達の家だよ。怪我が治るまで、お前は此処で暮らすんだ。大丈夫!絶対治るからね?」
と言ってやれば、白馬は、少しだけ首を上げて、私に頭をを擦り付けてきた。

私はそんな白馬の鼻筋を優しく撫でてやりながら、父上の到着を待った。

翌日から私は、次期伯爵家の当主となるべく始まっている、家庭教師(母上が先生なのだが)によるあらゆる方面の座学や、父上と同じ騎士としての剣術の勉学の合間に、白馬の世話を焼くという忙しい日が始まったんだ。
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