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第5章 異世界で得たものは
エピローグ
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「「父様~!お帰りなさ~い。」」
「今戻った。いい子にしてたか?マーミリアン。ナターシャ。」
リックの言葉に「はい。」と答える息子マーミリアン6歳と娘ナターシャ3歳。
「父様。今度の父様の非番の日、また剣術の稽古をつけてくれますか?」
「わかった。」
リックに頭を撫でられ、嬉しそうに目を細める息子マーミリアン。
何故息子がそのような事を言うのかと言うと、それは彼が5歳の誕生日を迎えた誕生祭の時だった。
「父様。母様。私は、将来父様の跡を継ぎ、騎士になりたいと思っております。」
と集まって下さった侯爵夫妻や領地の皆さんの前で堂々と宣言し、私達を驚かせた。
あまりに吃驚した私は、2歳になった娘のナターシャを落としそうになった程。
一方リックといえばは至って冷静で、
「そうか。では、マーミリアン。これから父様が毎日やる事を書いてやるから、後で執務室に来なさい。」
「はい!父様。」
「今日はお前の誕生祭だ。今は存分に楽しみなさい。」
「はい、父様。ありがとうございます。」
マーミリアンは、リックと同じシトリン色の瞳を輝かせ、大きなケーキを口いっぱいにほうばる。いつもは下ろしている日の当たり具合では金髪に見える明るい茶髪を後ろへ流し固めた姿は、リックの幼い頃にそっくりだとお義母様は涙ぐんだ。
私の腕の中から出ようとする娘ナターシャは、マーミリアンと同じ髪色、女神イズール様の加護を受け瑠璃色の瞳をしている。
兄が大好きなナターシャは、私から降りるとマーミリアンに向い走り出す。
「兄様~」
途中侍女のサラから何かを受け取り、マーミリアンにそれを差し出す。
「開けてもいいかい?ターシャ」
「私、心を込めて作りましたの。喜んで下さると嬉しいですわ。」
と精一杯の貴族言葉で兄の誕生日を祝っている。
家紋である剣と月の焼印が押された木箱を開けると、そこには黄色と瑠璃色の刺繍糸で編まれた組紐が2本入っていた。1本は手首に、もう1本は髪を結わえる為だそう。
「ありがとう、ターシャ。」
頭を兄に優しく撫でてもらい、嬉しそうに頬を赤く染め抱きつく妹。
「あなた達、本当に仲がいいわね。」
手を繋いでお義父さまお義母様の元へ走って行く2人に声をかけると、
「はい。私はターシャが大好きですから。」
「私もリア兄様が大好きです。」
と言って2人共リックに似た笑顔を浮かべていた。
いつもは、侯爵領の教会に隣接して建設をした、庶民の子も貴族の子も通える学校の理事をしている私と、両領地の自衛団長をしながら、学校で剣術と馬術の指導をしてくれているリック。
多忙を極めている私達は、普段の子育てを侍女のサラとサラの母親のリタに任せっきりなのだが、子供達の誕生祭と日々の夕食の時間くらいは子供達と時間を過ごす様にしている。
リックの帰宅後、4人で囲んだ食卓
「母様?」
「なぁに?ナターシャ。」
「私、今度母様がお休みの日に、泉の森に住む青龍に会いに行きたいです。」
「ナターシャは青龍に会いたいのね。じゃ、後で魔法のお手紙を青龍に書きましょうね。」
「はい!母様。」
「え?ターシャ、青龍に会いに行くの?母様。私も会いに行きたいです。」
リックと剣術の話をしていたはずのマーミリアンが身体を斜め向かいに座る私の方に乗り出してきた。
「いいわよ?だったらマーミリアンも後で父様と母様のお部屋にいらっしゃいね。一緒に書きましょう。」
「父様も!父様も一緒に行って欲しいです。父様?駄目ですか?」
「わかった。私も一緒に行こう。父様も青龍に会うのが楽しみだ。」
たわいもない話をしながら、夜が更けていく。
愛する夫と可愛い子供達に囲まれ、転生した先のこの世界での生活は、私を幸せにしてくれた。
元の世界にいるお父さんお母さん。
茉子は元気にやっています。
2人にとっての孫に会わせてあげることは叶わないかもしれないけど、この世界で私は幸せに暮らしているから。だから安心して下さい。
(女神様。いつか私の両親に会うことがあったら、あなた達の娘さんは新しい生を受けて幸せに暮らしていますよ。って伝えてね。)
愛する人達と護るべき世界の為に、私は聖女マコとして、教会のイズール様の像に向かい今日も祈りを捧げるのだった。
«fin»
「今戻った。いい子にしてたか?マーミリアン。ナターシャ。」
リックの言葉に「はい。」と答える息子マーミリアン6歳と娘ナターシャ3歳。
「父様。今度の父様の非番の日、また剣術の稽古をつけてくれますか?」
「わかった。」
リックに頭を撫でられ、嬉しそうに目を細める息子マーミリアン。
何故息子がそのような事を言うのかと言うと、それは彼が5歳の誕生日を迎えた誕生祭の時だった。
「父様。母様。私は、将来父様の跡を継ぎ、騎士になりたいと思っております。」
と集まって下さった侯爵夫妻や領地の皆さんの前で堂々と宣言し、私達を驚かせた。
あまりに吃驚した私は、2歳になった娘のナターシャを落としそうになった程。
一方リックといえばは至って冷静で、
「そうか。では、マーミリアン。これから父様が毎日やる事を書いてやるから、後で執務室に来なさい。」
「はい!父様。」
「今日はお前の誕生祭だ。今は存分に楽しみなさい。」
「はい、父様。ありがとうございます。」
マーミリアンは、リックと同じシトリン色の瞳を輝かせ、大きなケーキを口いっぱいにほうばる。いつもは下ろしている日の当たり具合では金髪に見える明るい茶髪を後ろへ流し固めた姿は、リックの幼い頃にそっくりだとお義母様は涙ぐんだ。
私の腕の中から出ようとする娘ナターシャは、マーミリアンと同じ髪色、女神イズール様の加護を受け瑠璃色の瞳をしている。
兄が大好きなナターシャは、私から降りるとマーミリアンに向い走り出す。
「兄様~」
途中侍女のサラから何かを受け取り、マーミリアンにそれを差し出す。
「開けてもいいかい?ターシャ」
「私、心を込めて作りましたの。喜んで下さると嬉しいですわ。」
と精一杯の貴族言葉で兄の誕生日を祝っている。
家紋である剣と月の焼印が押された木箱を開けると、そこには黄色と瑠璃色の刺繍糸で編まれた組紐が2本入っていた。1本は手首に、もう1本は髪を結わえる為だそう。
「ありがとう、ターシャ。」
頭を兄に優しく撫でてもらい、嬉しそうに頬を赤く染め抱きつく妹。
「あなた達、本当に仲がいいわね。」
手を繋いでお義父さまお義母様の元へ走って行く2人に声をかけると、
「はい。私はターシャが大好きですから。」
「私もリア兄様が大好きです。」
と言って2人共リックに似た笑顔を浮かべていた。
いつもは、侯爵領の教会に隣接して建設をした、庶民の子も貴族の子も通える学校の理事をしている私と、両領地の自衛団長をしながら、学校で剣術と馬術の指導をしてくれているリック。
多忙を極めている私達は、普段の子育てを侍女のサラとサラの母親のリタに任せっきりなのだが、子供達の誕生祭と日々の夕食の時間くらいは子供達と時間を過ごす様にしている。
リックの帰宅後、4人で囲んだ食卓
「母様?」
「なぁに?ナターシャ。」
「私、今度母様がお休みの日に、泉の森に住む青龍に会いに行きたいです。」
「ナターシャは青龍に会いたいのね。じゃ、後で魔法のお手紙を青龍に書きましょうね。」
「はい!母様。」
「え?ターシャ、青龍に会いに行くの?母様。私も会いに行きたいです。」
リックと剣術の話をしていたはずのマーミリアンが身体を斜め向かいに座る私の方に乗り出してきた。
「いいわよ?だったらマーミリアンも後で父様と母様のお部屋にいらっしゃいね。一緒に書きましょう。」
「父様も!父様も一緒に行って欲しいです。父様?駄目ですか?」
「わかった。私も一緒に行こう。父様も青龍に会うのが楽しみだ。」
たわいもない話をしながら、夜が更けていく。
愛する夫と可愛い子供達に囲まれ、転生した先のこの世界での生活は、私を幸せにしてくれた。
元の世界にいるお父さんお母さん。
茉子は元気にやっています。
2人にとっての孫に会わせてあげることは叶わないかもしれないけど、この世界で私は幸せに暮らしているから。だから安心して下さい。
(女神様。いつか私の両親に会うことがあったら、あなた達の娘さんは新しい生を受けて幸せに暮らしていますよ。って伝えてね。)
愛する人達と護るべき世界の為に、私は聖女マコとして、教会のイズール様の像に向かい今日も祈りを捧げるのだった。
«fin»
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