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第五章 楽しい?学園生活を送る私達

8.断罪エンドを迎えた貴女

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現クライシス侯爵令嬢のナディアは、相変わらずの言動で、ヤードリック王子に付き纏い、とうとうヤードリックが所属する上級クラス学級に突撃をしてしまった。その事を息子ヤードリックの護衛騎士から聞いた国王夫妻は、このままでは息子の今後の勉学に支障をきたしてしまうと酷く危機感を持った。それにより王家は、クライシス侯爵家に苦情を申し入れたのだ。

「ナディアよ!貴様は一体何をしてくれた!!」
父親であるクライシス侯爵の執務室に呼びつけられたナディアは、入室早々怒声を浴びた。
一体なんのことで父親に怒鳴られたのかさっぱり分からないナディアは、
「パパ…あ!えと…お父様。どうしたのですか?そんなに怒ったら、高血圧なってぶっ倒れちゃいますよ?」
「は?何だ!?その高血圧やらとは…。またお前は訳の分からない事を……。まぁいい。王宮より、お前に対する苦情を描き示した書簡が届いた。どうやらお前、本日、王子殿下のご勉学の邪魔をしたそうだな。」
「え?邪魔?」
「邪魔にしかならないだろう?侯爵位を持つ我が家の娘のくせに最下位学級クラスに所属するという実に恥さらしの貴様なんぞ、最上位学級に在席されておられる王子殿下の学級に入る事など、到底許されぬ事なのだぞ!なのに貴様は……。書簡によれば貴様は、教室前の廊下で控えていた殿下側仕えの騎士の静止を無視し、殿下のおわす席に近づいて行ったとある。」
と言うクライシス侯爵の手は、書簡をくしゃりと握り潰したまま震えていた。
恐らく我が娘の愚行に対する怒りからだろうが、クライシス侯爵の名を著しく汚された事へが主な怒りの理由だろう。怒りで額に血管が浮き出ていても未だ怒髪天まで達していなかった侯爵であったが、
「でもぉー確かにそうかもだけどー。ちゃんと休み時間にしたんだもの。だから王子様の邪魔にはなってないじゃん!」
のナディアの反論には、流石の侯爵も怒りが頂点に達した様だった。
両の手でバーンと、執務机が真っ二つになりそうな程の凄い音を立てながら立ち上がったクライシス侯爵は、
「もう良い!貴様は勘当だ!!学園も本日限りで退学させる!」
と言い、執事長を呼びつけナディアを自室に押し込めておくよう指示を出すのと同時に、学園に【退学届】を送る手配をした。

翌日
クライシス侯爵が出した命令により、ナディアの部屋にあった服飾品は全て売り捌き、修道院へ向かう間に必要と思われる既製品の服を買い、残りを寄付金となった。
また、貴族女性の象徴とも言える長い髪も、肩口で切りそろえられた。そしてその髪をも売り捌かれた。そして、それで得られた金を娘に持たせ、
「お前は本日を持って、クライシスの名を名乗る事は出来ない。平民となり、隣国との境にある戒律の厳しい修道院に入るのだ。其方で生涯、己のした数々の愚行を反省して生きるのだ。いいな!」
と言った父クライシス侯爵の言葉に、ナディアは何も抵抗する事無く従った。
そんな彼女の様子に、クライシス侯爵は少し面食らった様だったが、"これを機に全うに生きて欲しい”という、親心を乗せた眼差まなざしを向けた。

そしてその翌日の早朝
クライシス侯爵令嬢ナディア 改め ナディアは、クライシス侯爵の最後の温情で用意された乗り心地の良い馬車に乗り、国境にそびえ立つストリック山のふもとにあるストリック修道院へと旅立った。

ナディアが王都から約5日間かけて到着して目にしたストリック修道院は、要塞の様な造りをしており、あわよくば脱走を と思っていた彼女の考えを見事に打ち砕いた。

「ヒロインを虐めていないのに、修道院送りとか笑える。悪役令嬢ナディアの断罪エンドって事か」
と、自分を乗せて来た馬車が王都に向け戻っていくのを見ながらそう呟いた彼女の言葉は、誰にも聞かれることは無かったのだった。
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