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「ハワード殿下。昨日の課題をお出し下さい」
と、俺…いや私の貴族としての心構えと知識等々の再教育係になったのは、チャイギル伯爵、御歳四十三歳だ。
伯爵は学園の教授職に就いていながら、今回は私の家庭教師となったのだ。
学園を卒業したばかりの私が、何故また改めて家庭教師からの教えを乞うことになったのか。
その理由は、先日行われた学園の卒業舞踏会での俺…違った、私のマリヴェル元公爵令嬢への(父上…いや陛下の仰るところの)愚行のせいだ。
卒業舞踏会という公の場で、王命であったマリヴェル公爵令嬢アンジェーヌ嬢との婚約を、一方的に破棄したばかりでなく、公爵家では領地経営の教育を受けると言いながら、アンジェーヌ嬢の妹 リーナカレンデュナ嬢との話に夢中でいた事、また学園でも婚約者のアンジェーヌ嬢を差し置いてリーナとの交流を最優先していたから。他にもアンジェーヌ嬢に対して行ってきた内容 ┄ 申し訳程度のドレスの贈り物(従者に頼んで適当に選ばせたものだったのが事実だが)に手紙(これも俺が書いたものでは無い)を添えて送っていた事 ┄ が暴露されてしまったからだ。
それだけでなく、リーナ(カレンデュナ嬢)を本妻にし、リーナが公爵領の業務を覚える迄、アンジェーヌ嬢を愛妾として娶るという名案を、アンジェーヌから即時却下されたばかりでなく、婚約破棄を苦にしたアンジェーヌは『傷物になった令嬢は修道院に行く』と言い残し、光の玉となって夜空へ飛び立ってしまったのだ。
そんな醜聞を犯した私に、陛下より要再教育の命が下ってしまったのだ。
私にとって、再教育など甚だ不本意だったが、王命だと言われてしまえば、例え私が王子という身分であっても従わざるを得ない。
しかし…しかしだ!
私のあの夜の行動の、何処が愚行だというのだろう。
確かに元マリヴェル公爵令嬢との婚約は王命だった(全然身に覚えがないが、母上…あ~、王妃殿下がそう仰るのだからそうなんだろう。)が、可愛いリーナを正妻にし、地味で不細工(ではなかったが…)なアンジェーヌを側室という名の愛妾にしてやれば、王家とマリヴェル公爵家との関係はより一層強固なものになるといっても過言ではないはず。いや、正に名案中の名案としか言えない!
とは言っても、愛妾にするは後付けの理由だ。本当の理由は、あのアンジェーヌの素晴らしい身体つきを見たからなのだ。
彼女があの様に豊満な身体つきであった事は、あの時まで全くもって知らなかった。最も関心が無さすぎて、あれの事など少しも見てはいなかったわけだがな…。
それでもだ!両陛下ならあれが名案であると分かってくださると思ってたのに……。
等と考えていたら、
「殿下?課題を!!」
と、伯爵が持っていた狩猟時に馬に打つ鞭で机をビシッと打ったのだ。
その音にハッとした私は、おずおずと伯爵の前に課題を差し出したのだった。
と、俺…いや私の貴族としての心構えと知識等々の再教育係になったのは、チャイギル伯爵、御歳四十三歳だ。
伯爵は学園の教授職に就いていながら、今回は私の家庭教師となったのだ。
学園を卒業したばかりの私が、何故また改めて家庭教師からの教えを乞うことになったのか。
その理由は、先日行われた学園の卒業舞踏会での俺…違った、私のマリヴェル元公爵令嬢への(父上…いや陛下の仰るところの)愚行のせいだ。
卒業舞踏会という公の場で、王命であったマリヴェル公爵令嬢アンジェーヌ嬢との婚約を、一方的に破棄したばかりでなく、公爵家では領地経営の教育を受けると言いながら、アンジェーヌ嬢の妹 リーナカレンデュナ嬢との話に夢中でいた事、また学園でも婚約者のアンジェーヌ嬢を差し置いてリーナとの交流を最優先していたから。他にもアンジェーヌ嬢に対して行ってきた内容 ┄ 申し訳程度のドレスの贈り物(従者に頼んで適当に選ばせたものだったのが事実だが)に手紙(これも俺が書いたものでは無い)を添えて送っていた事 ┄ が暴露されてしまったからだ。
それだけでなく、リーナ(カレンデュナ嬢)を本妻にし、リーナが公爵領の業務を覚える迄、アンジェーヌ嬢を愛妾として娶るという名案を、アンジェーヌから即時却下されたばかりでなく、婚約破棄を苦にしたアンジェーヌは『傷物になった令嬢は修道院に行く』と言い残し、光の玉となって夜空へ飛び立ってしまったのだ。
そんな醜聞を犯した私に、陛下より要再教育の命が下ってしまったのだ。
私にとって、再教育など甚だ不本意だったが、王命だと言われてしまえば、例え私が王子という身分であっても従わざるを得ない。
しかし…しかしだ!
私のあの夜の行動の、何処が愚行だというのだろう。
確かに元マリヴェル公爵令嬢との婚約は王命だった(全然身に覚えがないが、母上…あ~、王妃殿下がそう仰るのだからそうなんだろう。)が、可愛いリーナを正妻にし、地味で不細工(ではなかったが…)なアンジェーヌを側室という名の愛妾にしてやれば、王家とマリヴェル公爵家との関係はより一層強固なものになるといっても過言ではないはず。いや、正に名案中の名案としか言えない!
とは言っても、愛妾にするは後付けの理由だ。本当の理由は、あのアンジェーヌの素晴らしい身体つきを見たからなのだ。
彼女があの様に豊満な身体つきであった事は、あの時まで全くもって知らなかった。最も関心が無さすぎて、あれの事など少しも見てはいなかったわけだがな…。
それでもだ!両陛下ならあれが名案であると分かってくださると思ってたのに……。
等と考えていたら、
「殿下?課題を!!」
と、伯爵が持っていた狩猟時に馬に打つ鞭で机をビシッと打ったのだ。
その音にハッとした私は、おずおずと伯爵の前に課題を差し出したのだった。
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