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第11章 ブス姉が幸せになる為に(辺境伯vs公爵)
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私達の可愛い娘 アンジェーヌを取り戻す
そして今度こそ家族四人 手と手を取り合って仲良く暮らすのだ。
私はそれを叶える為に、遥々王都からここ ウィンザード伯爵領にやってきた。
途中、リーナが酷い我儘を言い出したが、私が激しく叱責したおかげで、それ以後何も言わなくなった。とはいえ、その後もずっと仏頂面であったから、きっとまた私達を困らせる言動を起こす可能性がある事を念頭に置いておくべきだろう。
リーナは誰に似たのか?とても浅慮なところがある。だからこそ、姉の婚約者であるハワード殿下と恋仲になったのであろうし、手配書なる物を出し実の姉を見つけさせ、有力な情報をもたらした者には賞金を出す等という、ともすれば我がマリヴェル家の評判を落としかねない愚かな行為に……いや違うな。アレをそんな事をする人間にさせてしまったのは元をたどれば、私達夫婦がリーナの教育を間違えたのが原因であろう。
そのくせ長女のアンジェーヌには厳しくあたっていたし、婚約者であるハワード殿下がリーナに懸想をし、あからさまにアンジェーヌを蔑ろにする等の愚行をお止めしなかったアンジェーヌに叱責するだけで、私自身は殿下の行動に見ぬふりをしていた。
だからこそアンジェーヌはあの日
あの学園の卒業式の場で婚約を破棄されただけでなく、王族しか持てない側室(殿下は我が家に降家する為王族では無くなる)として娶る等と呆れた事を告げられたにも拘わらず、そんな辱めを受けた彼女を庇う事もせずにいた私達夫婦だったからこそ、アンジェーヌは何の未練もなくマリヴェル公爵家から離れていったのだろう。
真の愚か者はハワード殿下でも娘のリーナでもなく、私達…いや、当主である私なのかもしれぬな。
その様な事を考えていたら、ウィンザード伯爵領の中心地に到着した事を、馭者の一人が馬車の小窓をコンコンと叩きそう告げてきた。
私はその馭者に今夜の宿の名前を告げると馭者は
「畏まりましてございます、旦那様。近くの者に宿屋の場所を聞いてまいります。今暫くお待ち下さい。」
と言ってもう一人の馭者に馬車を任せると、馭者台から降り、小走りで往来にいた者に声をかけに行く姿が馬車の窓から見えた。
「ふぅん。割と賑やかなのね。」
と、じっとウィンザード伯爵領の中心地の様子を見ていたリーナが、ボソリとそう呟いた。が、それきり何も言わなかった。リーナのその一言が気にはなったが、リーナの呟きより私は、伯爵領まで無理をおして長旅をしてきた妻のリンディを少しでも早く休ませてやる事が先決だと思い、馭者が馬車に戻るのを待っていた。
無事宿に到着した私達は、早速用意されていた部屋へと入った。
部屋に入った途端、おそらくホッとしたのであろう、私の目の前にいたリンディが、ふらりと倒れそうになる己の身体を支える様に、傍にあったテーブルに両手を着いたのだ。が、支えきれなかったのか、そのままソファに倒れ込んでしまった。
「リンディ!大丈夫か?」
慌ててリンディに駆け寄ると、私は直ぐさま私付きの侍従とリンディ付きの侍女を部屋に呼びつけ、リンディを寝台へと運んだ。
「申し訳ありませんわ、あなた」
と青白い顔でそう謝罪の言葉を言うリンディに、
「旅の疲れが出たんだろう。今はゆっくり休んむんだ。」
と布団をかけてそう言ってやると、
「そうですわね、あなた。明日にはアンジェーヌに会うのですもの。その時には笑顔を見せてやらなくては。」
「そうだぞ、リンディ。さぁ薬湯を飲んで少し寝なさい。夕餉の支度が出来たら起こしてあげよう。」
そう言ってリンディが王都の邸でずっと飲んでいた薬湯を渡してやると、リンディはそれを飲みほし目をつぶった。
そんなリンディだったが、やはりその日から体調を崩し、宿で寝込んでしまったのだ。寝台から起き上がる体力さえも無くしていた彼女は、とても申し訳なさそうにしていた。
「申し訳ありませんわ、あなた。早くアンジェーヌに会いたいのでしょうに、わたくしのせいで……」
と毎日そう言って瞳を揺らすリンディの頭を撫でてやりながら、
「そんな事は気にしなくてもいいんだよリンディ。今は元気になる事だけを考えるんだ。なぁにアンジェーヌは優しい娘だ。王都から会いに来た私達の事をちゃんと待っていてくれるさ。それにだ。元気な姿で会ってやらないと、かえってアンジェーヌが悲しむだろう?」
と言うと
「そうですわね。早く元気な姿を見せられるよう致しますわ。」
と言って涙ぐむ。
そんな私達の傍ですることも無く、ただソファに座りぼんやりとしているリーナに一抹の不安を感じつつも、私はリンディの世話を続けていた。
リンディがやっと寝台から起き上がれる様になったのは、私達が伯爵領に到着してから五日後の事だった。
そして今度こそ家族四人 手と手を取り合って仲良く暮らすのだ。
私はそれを叶える為に、遥々王都からここ ウィンザード伯爵領にやってきた。
途中、リーナが酷い我儘を言い出したが、私が激しく叱責したおかげで、それ以後何も言わなくなった。とはいえ、その後もずっと仏頂面であったから、きっとまた私達を困らせる言動を起こす可能性がある事を念頭に置いておくべきだろう。
リーナは誰に似たのか?とても浅慮なところがある。だからこそ、姉の婚約者であるハワード殿下と恋仲になったのであろうし、手配書なる物を出し実の姉を見つけさせ、有力な情報をもたらした者には賞金を出す等という、ともすれば我がマリヴェル家の評判を落としかねない愚かな行為に……いや違うな。アレをそんな事をする人間にさせてしまったのは元をたどれば、私達夫婦がリーナの教育を間違えたのが原因であろう。
そのくせ長女のアンジェーヌには厳しくあたっていたし、婚約者であるハワード殿下がリーナに懸想をし、あからさまにアンジェーヌを蔑ろにする等の愚行をお止めしなかったアンジェーヌに叱責するだけで、私自身は殿下の行動に見ぬふりをしていた。
だからこそアンジェーヌはあの日
あの学園の卒業式の場で婚約を破棄されただけでなく、王族しか持てない側室(殿下は我が家に降家する為王族では無くなる)として娶る等と呆れた事を告げられたにも拘わらず、そんな辱めを受けた彼女を庇う事もせずにいた私達夫婦だったからこそ、アンジェーヌは何の未練もなくマリヴェル公爵家から離れていったのだろう。
真の愚か者はハワード殿下でも娘のリーナでもなく、私達…いや、当主である私なのかもしれぬな。
その様な事を考えていたら、ウィンザード伯爵領の中心地に到着した事を、馭者の一人が馬車の小窓をコンコンと叩きそう告げてきた。
私はその馭者に今夜の宿の名前を告げると馭者は
「畏まりましてございます、旦那様。近くの者に宿屋の場所を聞いてまいります。今暫くお待ち下さい。」
と言ってもう一人の馭者に馬車を任せると、馭者台から降り、小走りで往来にいた者に声をかけに行く姿が馬車の窓から見えた。
「ふぅん。割と賑やかなのね。」
と、じっとウィンザード伯爵領の中心地の様子を見ていたリーナが、ボソリとそう呟いた。が、それきり何も言わなかった。リーナのその一言が気にはなったが、リーナの呟きより私は、伯爵領まで無理をおして長旅をしてきた妻のリンディを少しでも早く休ませてやる事が先決だと思い、馭者が馬車に戻るのを待っていた。
無事宿に到着した私達は、早速用意されていた部屋へと入った。
部屋に入った途端、おそらくホッとしたのであろう、私の目の前にいたリンディが、ふらりと倒れそうになる己の身体を支える様に、傍にあったテーブルに両手を着いたのだ。が、支えきれなかったのか、そのままソファに倒れ込んでしまった。
「リンディ!大丈夫か?」
慌ててリンディに駆け寄ると、私は直ぐさま私付きの侍従とリンディ付きの侍女を部屋に呼びつけ、リンディを寝台へと運んだ。
「申し訳ありませんわ、あなた」
と青白い顔でそう謝罪の言葉を言うリンディに、
「旅の疲れが出たんだろう。今はゆっくり休んむんだ。」
と布団をかけてそう言ってやると、
「そうですわね、あなた。明日にはアンジェーヌに会うのですもの。その時には笑顔を見せてやらなくては。」
「そうだぞ、リンディ。さぁ薬湯を飲んで少し寝なさい。夕餉の支度が出来たら起こしてあげよう。」
そう言ってリンディが王都の邸でずっと飲んでいた薬湯を渡してやると、リンディはそれを飲みほし目をつぶった。
そんなリンディだったが、やはりその日から体調を崩し、宿で寝込んでしまったのだ。寝台から起き上がる体力さえも無くしていた彼女は、とても申し訳なさそうにしていた。
「申し訳ありませんわ、あなた。早くアンジェーヌに会いたいのでしょうに、わたくしのせいで……」
と毎日そう言って瞳を揺らすリンディの頭を撫でてやりながら、
「そんな事は気にしなくてもいいんだよリンディ。今は元気になる事だけを考えるんだ。なぁにアンジェーヌは優しい娘だ。王都から会いに来た私達の事をちゃんと待っていてくれるさ。それにだ。元気な姿で会ってやらないと、かえってアンジェーヌが悲しむだろう?」
と言うと
「そうですわね。早く元気な姿を見せられるよう致しますわ。」
と言って涙ぐむ。
そんな私達の傍ですることも無く、ただソファに座りぼんやりとしているリーナに一抹の不安を感じつつも、私はリンディの世話を続けていた。
リンディがやっと寝台から起き上がれる様になったのは、私達が伯爵領に到着してから五日後の事だった。
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