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第七章 ヒロインが出ていった後の王都の人々
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しおりを挟む私の名前はサンダーヒル侯爵家が嫡子ルドルフ=サンダーヒル。
本来私は、既に立太子した第一王子の側近になるべき男だった。が、王命により、ハワード様がマリヴェル公爵家に婿入りするまでの間、側近となっていた。
「どうかお気持ちをお鎮め下さい、殿下。どうぞ此方をお飲み下さい。そして家庭教師から出された課題を終わらせましょう。」
と小さな子供を諭すかのようにそう言って、ハワード様に紅茶を勧めた。
そして私自身もソファに座り紅茶を飲むと、その香りと味に酔いしれたのだ。
確かこの茶葉はマリヴェル公爵領で採れる茶葉だったな。だが、この茶葉を栽培している土地の所有者はアンジェーヌ様だった筈だ。
きっと茶葉の流れを追えばアンジェーヌ様に辿り着くのだろうけど、きっと彼女はそれを望まないだろう。だから私もこの情報を殿下や公爵家、勿論王家にも伝える事はしないでおこうと思っている。
王家にも言わないのは何故か?
その答えは至極簡単だ。
私をこの殿下付きにした王家へのちょっとした反抗心と、アンジェーヌ様をお救い出来なかった事へのお詫びの気持ちからだな。
うん。それにしても本当に美味いお茶だね。と思いながら殿下をチラリと見遣るも、彼は自分が婿入りする家の領地の産物なのに、全く気付かないようだ。
それにしても……
学園でもあんなにアンジェーヌ様の妹君に執着していたハワード様が、今更なんだってアンジェーヌ様を探すんだろうか。
あの舞踏会でのアンジェーヌ様をご覧になって、急に手放すのが惜しくなったとか?
まぁ確かにあの夜のアンジェーヌ様は本当にお美しかったからな。彼女に見とれてしまっていたら、婚約者で学園の卒業生であるナターシャに思いっきり靴を踏まれてしまったけれど……。
いつも、派手な見た目の妹リーナカレンデュナ様と比べられ、地味令嬢だと言われていたアンジェーヌ様だが、私自身は、アンジェーヌ様の事をとてもお綺麗な令嬢だと思っていたし、頭も良くおまけにお優しい方だと思っていた。
まぁそのアンジェーヌ様も、ご実家の公爵家からも離縁なさって、今頃自由を満喫していらっしゃるのだろう。
はぁ……。私も早くこの馬鹿王子のお守りから解放されたいよ。
なるべく早く公爵家に婿入りしてくれないだろうか。
婿入りといえば、アンジェーヌ様がいなくなられた事で、マリヴェル公爵家の跡取りは、あのお花畑頭のリーナカレンデュナ様になられたんだよな。
だとしたら、殿下は好いたご令嬢と晴れて婚姻出来るって事だろ?全てご自身が望んだとおりになったんだから、もっと喜ぶべきじゃないか?と思っていたら、
「アンジェーヌが見つかったという報告はまだなのか?私の従者は何をしているんだ!」
はぁ……。また喚いてるよ、この人。
この人がこの国を継ぐ順位じゃなくて本当に良かったと心底思うよな。
「こうしてはおれぬ。今直ぐ公爵家へ!「と、その前に!先ずは家庭教師からの課題を終えられて下さい、殿下。」何だと?この私に命令す…「これは王命にございます、殿下。」ぐぬぬ。父上のご命令とあれば致し方ない。早くそれを「殿下の机の上にそれはちゃんとございます。」くそ!分かってる!」
よく言うよ。本当は分かってなかったじゃないか。
課題に再び取り組み始められたハワード様を見て、私はまたお茶を一口飲み込んだ。
はぁ……。早くナターシャに会いたい。
君ならきっと疲れたこの私を癒してくれるだろう。ね?ナターシャ。
~ ハワード殿下期間限定側近 ルドルフside ~終
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