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第10章 ブス姉が幸せになる為に(準備編)
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妖精達にお願いする組み紐の作り方をレクチャーすると、彼等は直ぐに覚えてしまい楽しそうに作り始めていたわ。
そんな彼等を見つつ、私は臙脂色の布を横35cm縦45cm(上下左右それぞれ縫い代を取っておかないとた)で切り出したものを三つ作り、それ等を横が15cmになる様に中表で袋とじにすると、布の端を高速で本返し縫いで綴じ始めたの。
何せ2時間で…いえ一刻半で三つの巾着袋を仕上げなくてはならないのだから、それはもう超絶急がないと間に合わないからね。
二方の本返し縫いが終わった布の袋に手を入れて表側にひっくり返すと、残り一箇所の口になっている布の端を綺麗に中に折り込み、そこに手早く渡しまつり縫いをしたの。
そして一旦縦の長い方で半分に折って袋の下方になる場所に印を付けると、ランドルフ公爵家の男性陣のお名前のイニシャルの刺繍をそれぞれに施してから、袋の両端と底をブランケットステッチをして袋状にする。それの上部に、妖精達が編んでいる組紐を通す為の部分を作れば準備OK。
そうこうしていると妖精達から『出来たよ~』と声がかかったので、私はそれにお礼を言って三本の組紐を受け取ると、一本ずつ袋に通して端を結ぶ。で、紐をキュッと引っ張って袋の締まり具合を確認。
「よし!上出来ね」
と呟いてから、紐の先に同じ色の刺繍糸で房を作れば完成。
それから数分後
「出来たー!」
と、私の淑女らしからぬ喜びの声が部屋に響き渡ったわ。勿論、私は、両の手を上に高々と上げてたけど。
淑女は絶対にしないその言動に、ちょっとだけ恥ずかしさを感じたけれど……、でもまぁ、もう平民なんだものそれくらい喜びを体現してもいいわよね~なぁんて思った次の瞬間
あ!そう言えば私、もう平民じゃなくなるんだった、て事に気づいたのよ。
平民じゃなくなるイコールあの堅苦しい貴族の振る舞いを再びしないといけなくなってしまうわけよね。
折角マリヴェル公爵家とハワード殿下から解放されて、平民になって、やっと自由になったのに、また貴族に逆戻りかぁ…
う~ん……複雑な心境だわね
でもこう考えましょ
ランドルフ公爵のお義父様の養女にして戴く事で、ザック様の婚約者として相応しい身分になれるのだし、マリヴェル公爵家の方々や殿下が今後私に、何を言ってきても何をしてきたとしても、公爵令嬢に(しかも隣国のね)なった私に対して、何ら文句も言えなくなるし強引な事も出来なくなるんだわ。
よってあの人達と完全に離れられる
だからこれは最高な事なんだ
そう!これぞポジティブ・シンキング
ポジティブ大事よね?
そんな事を頭の中で考えながら無意識の内に表情や仕草をころころ変えていた私の事を、妖精達は楽しそうに嬉しそうに見ていてくれたわ。(後日その時の様子を聞いたら、相当面白い顔だったらしいの。まったく!失礼しちゃうわね)
ポジティブ・シンキングに頭を切り替えられた私は、出来上がった巾着袋をユーリブランドのもうひとつの特徴である総レースで作った大きめの水色の手巾(スカーフくらいの大きさね)で包んでから、
「皆、本当にありがとう。皆のおかげでとても素敵なものが出来たわ。」
と妖精達にそう言うと、
『私達も楽しかったわ。ね?皆?』
と言ったトゥーリスのその言葉に、他の妖精達は皆、うんうんと首を縦に振ってくれたの。
私は再度妖精達にお礼をした後、暫く家に帰ってこられない旨を話したわ。
そこで、彼等にテッドや庭の植物、それから鶏達のお世話をお願いしてから階下に降りて、マーサの様子を見に行ったの。
するとマーサは既に作業を終えていた様で、家の戸締りを確認していたのよ。
「あらマーサ。早いのね。」
とサロン兼アトリエのテーブルの上に置かれていた手巾の出来をさり気なくチェックすると、それはそれは完璧な仕上がりの花の刺繍が刺されていたわ。
「まぁ!素敵に刺繍されてるわね。腕を上げたんじゃなくて?」
とマーサの刺繍の腕前を褒めると、彼女はテーブルの傍にいる私の所へバタバタと走って、
「ありがとう存じます、お嬢様」
と、はにかみながら、でもとても嬉しそうに笑ってそう言ったわ。
さぁ!
もう少しでウィンザード伯爵家の馬車が迎えに来る刻限だわ。
「戸締まりと火の元の確認を終えたら、当面の荷物を纏めましょマーサ。」
「はい、お嬢様。」
私達はそれぞれの部屋へと入り、当面入り用な物を大きな鞄に詰め始めたの。
荷造りをしながら、きっと叶うであろう『ブス姉の幸せな人生』を思い描きながらね。
そんな彼等を見つつ、私は臙脂色の布を横35cm縦45cm(上下左右それぞれ縫い代を取っておかないとた)で切り出したものを三つ作り、それ等を横が15cmになる様に中表で袋とじにすると、布の端を高速で本返し縫いで綴じ始めたの。
何せ2時間で…いえ一刻半で三つの巾着袋を仕上げなくてはならないのだから、それはもう超絶急がないと間に合わないからね。
二方の本返し縫いが終わった布の袋に手を入れて表側にひっくり返すと、残り一箇所の口になっている布の端を綺麗に中に折り込み、そこに手早く渡しまつり縫いをしたの。
そして一旦縦の長い方で半分に折って袋の下方になる場所に印を付けると、ランドルフ公爵家の男性陣のお名前のイニシャルの刺繍をそれぞれに施してから、袋の両端と底をブランケットステッチをして袋状にする。それの上部に、妖精達が編んでいる組紐を通す為の部分を作れば準備OK。
そうこうしていると妖精達から『出来たよ~』と声がかかったので、私はそれにお礼を言って三本の組紐を受け取ると、一本ずつ袋に通して端を結ぶ。で、紐をキュッと引っ張って袋の締まり具合を確認。
「よし!上出来ね」
と呟いてから、紐の先に同じ色の刺繍糸で房を作れば完成。
それから数分後
「出来たー!」
と、私の淑女らしからぬ喜びの声が部屋に響き渡ったわ。勿論、私は、両の手を上に高々と上げてたけど。
淑女は絶対にしないその言動に、ちょっとだけ恥ずかしさを感じたけれど……、でもまぁ、もう平民なんだものそれくらい喜びを体現してもいいわよね~なぁんて思った次の瞬間
あ!そう言えば私、もう平民じゃなくなるんだった、て事に気づいたのよ。
平民じゃなくなるイコールあの堅苦しい貴族の振る舞いを再びしないといけなくなってしまうわけよね。
折角マリヴェル公爵家とハワード殿下から解放されて、平民になって、やっと自由になったのに、また貴族に逆戻りかぁ…
う~ん……複雑な心境だわね
でもこう考えましょ
ランドルフ公爵のお義父様の養女にして戴く事で、ザック様の婚約者として相応しい身分になれるのだし、マリヴェル公爵家の方々や殿下が今後私に、何を言ってきても何をしてきたとしても、公爵令嬢に(しかも隣国のね)なった私に対して、何ら文句も言えなくなるし強引な事も出来なくなるんだわ。
よってあの人達と完全に離れられる
だからこれは最高な事なんだ
そう!これぞポジティブ・シンキング
ポジティブ大事よね?
そんな事を頭の中で考えながら無意識の内に表情や仕草をころころ変えていた私の事を、妖精達は楽しそうに嬉しそうに見ていてくれたわ。(後日その時の様子を聞いたら、相当面白い顔だったらしいの。まったく!失礼しちゃうわね)
ポジティブ・シンキングに頭を切り替えられた私は、出来上がった巾着袋をユーリブランドのもうひとつの特徴である総レースで作った大きめの水色の手巾(スカーフくらいの大きさね)で包んでから、
「皆、本当にありがとう。皆のおかげでとても素敵なものが出来たわ。」
と妖精達にそう言うと、
『私達も楽しかったわ。ね?皆?』
と言ったトゥーリスのその言葉に、他の妖精達は皆、うんうんと首を縦に振ってくれたの。
私は再度妖精達にお礼をした後、暫く家に帰ってこられない旨を話したわ。
そこで、彼等にテッドや庭の植物、それから鶏達のお世話をお願いしてから階下に降りて、マーサの様子を見に行ったの。
するとマーサは既に作業を終えていた様で、家の戸締りを確認していたのよ。
「あらマーサ。早いのね。」
とサロン兼アトリエのテーブルの上に置かれていた手巾の出来をさり気なくチェックすると、それはそれは完璧な仕上がりの花の刺繍が刺されていたわ。
「まぁ!素敵に刺繍されてるわね。腕を上げたんじゃなくて?」
とマーサの刺繍の腕前を褒めると、彼女はテーブルの傍にいる私の所へバタバタと走って、
「ありがとう存じます、お嬢様」
と、はにかみながら、でもとても嬉しそうに笑ってそう言ったわ。
さぁ!
もう少しでウィンザード伯爵家の馬車が迎えに来る刻限だわ。
「戸締まりと火の元の確認を終えたら、当面の荷物を纏めましょマーサ。」
「はい、お嬢様。」
私達はそれぞれの部屋へと入り、当面入り用な物を大きな鞄に詰め始めたの。
荷造りをしながら、きっと叶うであろう『ブス姉の幸せな人生』を思い描きながらね。
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