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第10章 ブス姉が幸せになる為に(準備編)
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翌朝
マリヴェル公爵家の紋章を付けた二頭立て馬車が二台、公爵家の敷地内に用意された。
その二台内の一台は、荷物を乗せた荷台付き馬車だ。それにはリンディとリーナの侍女、そして私の従者の合計三名が乗り込む。
そしてもう一台には、私と妻のリンディ、そして娘のリーナカレンデュナが乗り込む事になっている。
勿論。道中危険な目に合った時の為に、私兵六名も馬に乗り同行。
それから馭者も各馬車に二名ずつ。
総勢十六名の大所帯になったが、これも国内有数の高位貴族である我がマリヴェル公爵家が動くのだから致し方ないだろう。
「では行ってくる。留守を頼むぞ。」
と家令のマイクに申せば、
「畏まりました。お気を付けて行ってらして下さいませ。」
と恭しく頭を垂れる家令。
その姿にうむと頷いた私は、妻と娘が乗っている馬車に乗り込み馬車の内鍵を掛けた。
そして、
「出立!」
と、馬車の小窓を開けて馭者にそう告げると、それを受けた馭者は、ビシッと一つ手綱を鳴らしたのだ。
すると馬車は静かに動き始めた。
ウィンザード領までは、馬車で片道四日の行程だ。何事も無く順調に進めば四日後の昼餉にはウィンザード領に到着するだろう。
軽快に走る馬車の窓を見やると、景色が飛ぶように後方へ移る。
そんな景色をみながら、私は目的地にいるアンジェーヌとの再会に心を弾ませた。
だが順調な行程を阻む人物がいた。
リーナだ
リーナは、初日こそリンディと話したり、持ち込んだ本を読んだりと、なんとか堪えていたようだったが、二日目以降の言動は、我儘を通り越し言いたい放題やりたい放題になった。
その内容と云えば……
やれもうこれ以上馬車の座席に座りたくない(臀部が痛くなる)だの、リンディと同じ様に横になりたいだの。宿屋で作らせた昼餉が不味いだの、お茶(馬の水飲み休憩)の時間をもっと長くして欲しいだの、茶菓子が貧相だの、宿泊した宿屋の寝台が固いだのといったものだ。
それ等は、私には対処のしようが無いものばかりだった。
そんな文句ばかりのリーナのせいで、宿屋に着くのが毎日遅くなり、宿屋の主人に様々な迷惑をかけてしまっている。
私達が泊まった宿屋の主人達は皆平民だった。だからと言って相手に横暴な態度を取るわけにはいかないのだ。
にも拘わらず、リーナは些末な事にも文句をつけ、挙句「私は公爵令嬢なんですのよ?あなた達平民は、貴族であるわたくしの言う事を素直に叶えれば宜しいのだわ。」
とのたもうしまつ。
流石の私も、三日目に宿泊したウィンザード領地内の外れにある宿屋での、夕餉にリーナの言った発言には堪忍袋の緒が切れてしまい、宿屋の食堂にも拘わらずリーナを怒鳴り飛ばしたのだ。
リーナが発した言葉。それは……
「今夜もこんな田舎に泊まるんですの?しかもなぁ~んにも無い所だなんて、リーナつまんないですわ、お父様。この町には、宝石店も小間物屋も劇場も無いんですのよ。リーナはもう、こぉ~んな辺鄙な所に半刻もいたくありませんわ。ねぇお父様。もうお姉様の事は忘れてお屋敷に帰りませんこと?リーナの様な高位貴族の令嬢は、王都の方が相応しいと思いますの。王都は華やかな場所なんですもの。リーナの様に華やかな令嬢には、華やかな場所が相応しいのですわ。それに比べ、こういった地味な場所は、やはりお姉様に相応しいと思いますの。全く……地味令嬢は住んでる場所も地味な所なんですわね。本当、お姉様ったら、王都を飛び出してこんな辺鄙な場所に住まれるだなんて……。リーナやお父様達に迷惑ばっかりかけるだなんて、本当に困ったお姉様ですこと。そうは思いませんこと?ね?お母様?」
「…………。」
「どうなさいましたの?お母様。あ!分かりましたわ!お母様もリーナと同じお気持ちなのでしょう?違いまして?お母様。」
リーナの言葉に対して何も話さず、私の横の席で肩を震わせ俯くリンディ。
「リンディ?どうしたのだ?」
「…………。」
「リンディ……え!?リ、リンディ!」
公爵家では、ずっと寝込んでいたリンディ。
もしや、長旅のせいで、身体の具合が悪くなったのか?
私はそう思い俯くリンディの顔を覗き込んで驚愕した。
リンディは顔を真っ赤にして、泣きながら怒っていたのだ。
マリヴェル公爵家の紋章を付けた二頭立て馬車が二台、公爵家の敷地内に用意された。
その二台内の一台は、荷物を乗せた荷台付き馬車だ。それにはリンディとリーナの侍女、そして私の従者の合計三名が乗り込む。
そしてもう一台には、私と妻のリンディ、そして娘のリーナカレンデュナが乗り込む事になっている。
勿論。道中危険な目に合った時の為に、私兵六名も馬に乗り同行。
それから馭者も各馬車に二名ずつ。
総勢十六名の大所帯になったが、これも国内有数の高位貴族である我がマリヴェル公爵家が動くのだから致し方ないだろう。
「では行ってくる。留守を頼むぞ。」
と家令のマイクに申せば、
「畏まりました。お気を付けて行ってらして下さいませ。」
と恭しく頭を垂れる家令。
その姿にうむと頷いた私は、妻と娘が乗っている馬車に乗り込み馬車の内鍵を掛けた。
そして、
「出立!」
と、馬車の小窓を開けて馭者にそう告げると、それを受けた馭者は、ビシッと一つ手綱を鳴らしたのだ。
すると馬車は静かに動き始めた。
ウィンザード領までは、馬車で片道四日の行程だ。何事も無く順調に進めば四日後の昼餉にはウィンザード領に到着するだろう。
軽快に走る馬車の窓を見やると、景色が飛ぶように後方へ移る。
そんな景色をみながら、私は目的地にいるアンジェーヌとの再会に心を弾ませた。
だが順調な行程を阻む人物がいた。
リーナだ
リーナは、初日こそリンディと話したり、持ち込んだ本を読んだりと、なんとか堪えていたようだったが、二日目以降の言動は、我儘を通り越し言いたい放題やりたい放題になった。
その内容と云えば……
やれもうこれ以上馬車の座席に座りたくない(臀部が痛くなる)だの、リンディと同じ様に横になりたいだの。宿屋で作らせた昼餉が不味いだの、お茶(馬の水飲み休憩)の時間をもっと長くして欲しいだの、茶菓子が貧相だの、宿泊した宿屋の寝台が固いだのといったものだ。
それ等は、私には対処のしようが無いものばかりだった。
そんな文句ばかりのリーナのせいで、宿屋に着くのが毎日遅くなり、宿屋の主人に様々な迷惑をかけてしまっている。
私達が泊まった宿屋の主人達は皆平民だった。だからと言って相手に横暴な態度を取るわけにはいかないのだ。
にも拘わらず、リーナは些末な事にも文句をつけ、挙句「私は公爵令嬢なんですのよ?あなた達平民は、貴族であるわたくしの言う事を素直に叶えれば宜しいのだわ。」
とのたもうしまつ。
流石の私も、三日目に宿泊したウィンザード領地内の外れにある宿屋での、夕餉にリーナの言った発言には堪忍袋の緒が切れてしまい、宿屋の食堂にも拘わらずリーナを怒鳴り飛ばしたのだ。
リーナが発した言葉。それは……
「今夜もこんな田舎に泊まるんですの?しかもなぁ~んにも無い所だなんて、リーナつまんないですわ、お父様。この町には、宝石店も小間物屋も劇場も無いんですのよ。リーナはもう、こぉ~んな辺鄙な所に半刻もいたくありませんわ。ねぇお父様。もうお姉様の事は忘れてお屋敷に帰りませんこと?リーナの様な高位貴族の令嬢は、王都の方が相応しいと思いますの。王都は華やかな場所なんですもの。リーナの様に華やかな令嬢には、華やかな場所が相応しいのですわ。それに比べ、こういった地味な場所は、やはりお姉様に相応しいと思いますの。全く……地味令嬢は住んでる場所も地味な所なんですわね。本当、お姉様ったら、王都を飛び出してこんな辺鄙な場所に住まれるだなんて……。リーナやお父様達に迷惑ばっかりかけるだなんて、本当に困ったお姉様ですこと。そうは思いませんこと?ね?お母様?」
「…………。」
「どうなさいましたの?お母様。あ!分かりましたわ!お母様もリーナと同じお気持ちなのでしょう?違いまして?お母様。」
リーナの言葉に対して何も話さず、私の横の席で肩を震わせ俯くリンディ。
「リンディ?どうしたのだ?」
「…………。」
「リンディ……え!?リ、リンディ!」
公爵家では、ずっと寝込んでいたリンディ。
もしや、長旅のせいで、身体の具合が悪くなったのか?
私はそう思い俯くリンディの顔を覗き込んで驚愕した。
リンディは顔を真っ赤にして、泣きながら怒っていたのだ。
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