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第六章 本格的な始動
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前世の時刻の正午頃
孤児院でのボランティア活動を終えると、私とマーサは午後の仕事の為に帰宅。
軽く昼餉を済ませたこのタイミングで、その日の夜の夕餉用の食材と、明日の朝餉と昼餉用の食材の買い出しに出かけるの。
なんせこの世界には、まだ冷蔵庫も冷凍庫もないのよ。だからいくら氷室があると言っても、中の氷が溶けてしまえばあっという間に食材が傷んじゃうんだよね。
だから、家庭菜園で採れる野菜以外で日持ちのしない食材は、今時点では、その都度購入以外に方法はないの。
「マーサ。私は買い物に行ってまいりますわ。何か欲しい物はありまして?」
とマーサに訪ねると、
「刺繍糸の……赤 青 緑 黄のはっきりした色めのが刺繍糸が欲しいです。淡い色めの糸はまだありますので……。」
と、食べ物より仕事に必要な物を所望したの。
マーサもすっかりユーリブランドの職人になってきたわね。
「分かりましたわ。忘れず買って参りますわね。」
「はい。お願い致します、お嬢様。」
「あ……。多分大丈夫かとは思いますけども、あのお二人が来られたら、お茶とお茶菓子でおもてなししておいて頂戴な。」
「分かりました、お嬢様。お気を付けて行ってらっしゃいませ。」
本当は未婚の女性が住む家や部屋に、殿方が上がり込む事はいけないんだけど、彼等ならマーサをどうこうしようとはなさらないと思う。
一応昨晩ジェフ様が帰られる際、本日の予定をザックリ話しておいたし、この時間帯は来られないとは思うんだよね。
彼等は紳士だし
ま、だから私も安心して出かけられるんだけどね。
私はマーサに留守番を頼むと、愛馬に跨り街を目指したの。
ウィンザード領の街はとても栄えていて、欲しい物は大抵手に入るのよね。
先ず向かった店は、前世でいう所の手芸屋さん。
「いらっしゃい、アンジーちゃん。今日は何が欲しいんだい?」
と店の女主人であるナタリアさんに、本日買い求める商品を聞かれたの。
「えっと……刺繍糸の赤青黄緑各十束と、白い麻布を縦巾横巾共に二十フィート分と、若草色 浅葱色 レモンイエローのシルクをそれぞれ縦巾横巾共に十フィート分。それからレース糸を一束三十フィートのものを五束程欲しいの。」
と、欲しい物をナタリアさんに話している間に、私が欲しいものを聞いていた従業員の女性三人が手分けをし、どんどんと頼んだ商品が裁断テーブルの上に並んでいく。
うん
仕事が出来る人は好きよ
「これで全部かい?」
とナタリアさんに問われ、注文したものが全て揃っているか?糸の丈夫さや布の品質を確認。
「はい。大丈夫です。さすがナタリアさんのお店ですね。今日もとても良い物が手に入って嬉しいわ。」
と笑顔でそう言うと、
「なぁに言ってんだい。アンジーちゃんがうちの店に来てくれるようになってから、店の売り上げがとんでもない事になってんだよ。こっちとしては嬉しい悲鳴さね。だからと言っちゃなんだけど、アンジーちゃんが満足出来る様な品質の物を入れたくなるのさ。えと……なんて言うんだっけ?餅が凭れる?」
「それを言うなら、"持ちつ持たれつ”ですね。」
「あ~そうだよ。モチツモタレツだ。意味はよく分からんが、まぁ、お互い良い気持ちって事だろ?」
「はい!そんな感じです。」
と、言ってナタリアさんと従業員の皆さんと笑い合う。
「では、貰っていきますね。」
と、私はお代をお支払いし、糸は鞄に、布は店の外に繋いであるテッドの背中に括り付けたの。
「また来とくれよ。」
「はい!」
私はそう言って、再びテッドに跨ると、次の目的の店へと向かったのよ。
孤児院でのボランティア活動を終えると、私とマーサは午後の仕事の為に帰宅。
軽く昼餉を済ませたこのタイミングで、その日の夜の夕餉用の食材と、明日の朝餉と昼餉用の食材の買い出しに出かけるの。
なんせこの世界には、まだ冷蔵庫も冷凍庫もないのよ。だからいくら氷室があると言っても、中の氷が溶けてしまえばあっという間に食材が傷んじゃうんだよね。
だから、家庭菜園で採れる野菜以外で日持ちのしない食材は、今時点では、その都度購入以外に方法はないの。
「マーサ。私は買い物に行ってまいりますわ。何か欲しい物はありまして?」
とマーサに訪ねると、
「刺繍糸の……赤 青 緑 黄のはっきりした色めのが刺繍糸が欲しいです。淡い色めの糸はまだありますので……。」
と、食べ物より仕事に必要な物を所望したの。
マーサもすっかりユーリブランドの職人になってきたわね。
「分かりましたわ。忘れず買って参りますわね。」
「はい。お願い致します、お嬢様。」
「あ……。多分大丈夫かとは思いますけども、あのお二人が来られたら、お茶とお茶菓子でおもてなししておいて頂戴な。」
「分かりました、お嬢様。お気を付けて行ってらっしゃいませ。」
本当は未婚の女性が住む家や部屋に、殿方が上がり込む事はいけないんだけど、彼等ならマーサをどうこうしようとはなさらないと思う。
一応昨晩ジェフ様が帰られる際、本日の予定をザックリ話しておいたし、この時間帯は来られないとは思うんだよね。
彼等は紳士だし
ま、だから私も安心して出かけられるんだけどね。
私はマーサに留守番を頼むと、愛馬に跨り街を目指したの。
ウィンザード領の街はとても栄えていて、欲しい物は大抵手に入るのよね。
先ず向かった店は、前世でいう所の手芸屋さん。
「いらっしゃい、アンジーちゃん。今日は何が欲しいんだい?」
と店の女主人であるナタリアさんに、本日買い求める商品を聞かれたの。
「えっと……刺繍糸の赤青黄緑各十束と、白い麻布を縦巾横巾共に二十フィート分と、若草色 浅葱色 レモンイエローのシルクをそれぞれ縦巾横巾共に十フィート分。それからレース糸を一束三十フィートのものを五束程欲しいの。」
と、欲しい物をナタリアさんに話している間に、私が欲しいものを聞いていた従業員の女性三人が手分けをし、どんどんと頼んだ商品が裁断テーブルの上に並んでいく。
うん
仕事が出来る人は好きよ
「これで全部かい?」
とナタリアさんに問われ、注文したものが全て揃っているか?糸の丈夫さや布の品質を確認。
「はい。大丈夫です。さすがナタリアさんのお店ですね。今日もとても良い物が手に入って嬉しいわ。」
と笑顔でそう言うと、
「なぁに言ってんだい。アンジーちゃんがうちの店に来てくれるようになってから、店の売り上げがとんでもない事になってんだよ。こっちとしては嬉しい悲鳴さね。だからと言っちゃなんだけど、アンジーちゃんが満足出来る様な品質の物を入れたくなるのさ。えと……なんて言うんだっけ?餅が凭れる?」
「それを言うなら、"持ちつ持たれつ”ですね。」
「あ~そうだよ。モチツモタレツだ。意味はよく分からんが、まぁ、お互い良い気持ちって事だろ?」
「はい!そんな感じです。」
と、言ってナタリアさんと従業員の皆さんと笑い合う。
「では、貰っていきますね。」
と、私はお代をお支払いし、糸は鞄に、布は店の外に繋いであるテッドの背中に括り付けたの。
「また来とくれよ。」
「はい!」
私はそう言って、再びテッドに跨ると、次の目的の店へと向かったのよ。
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