妹よりブスな姉の幸せ

Saeko

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第三章 旅立ち

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「まぁまぁ!なんて素敵な寝具でございましょう!掛け布団と敷布団がいっぺんに身体に纏えるなんて。こんな商品が市井有りましたら、旅人からとても重宝がられますね、お嬢様。」

え?寝袋が旅人に重宝される?
売れる!
儲かる!!

前世の漫画の登場人物ではございませんが、きっと私の目には日本円を表す¥マークが写っている事ございましょう。
私は寝袋から飛び出ますと、マーサの片手を両手で握りながら、
「素敵な提案をありがとう、マーサ。旅人の為に、もっと軽くて持ち運びが簡単な寝袋を開発致しましょう!」
と興奮して申しましたの。
マーサは"寝袋”という初めて聞く言葉にきょとんとしながら、
「寝袋……でございますか?」
「そう!寝袋ですわ。ほらご覧なさい、マーサ。袋状になっているでしょう?寝る為の袋。だから寝袋なのですわ。」
「寝る為の袋……。確かにそうですね。ですがとりあえず、寝心地を確かめてみませんと……。」
と私の真似をしてゴソゴソと簡易寝袋に入りましたマーサでしたが、
「お嬢様……。残念ながら、これでは作ったと致しましても売れないかもしれません。」
と顔だけ出した状態で眉尻を落としてしまいましたの。

「それは何故ですの?」
「お嬢様……大変申し上げ難いのですが……その…寝心地があまり…………。」
あ~それね。それはそうよ。だって…
「大丈夫よ、マーサ。これは簡易的に布を詰めましたけれども、本当に商品化する寝袋は、布ではなく綿を入れますの。それなら寝心地も良くなるはずですわ。」

私のその言葉に安心したのか?マーサは
「そうですか。それなら宜しいですね。ささ、お嬢様。早く寝台にお乗り下さいませ。私はこの寝袋で寝かせて頂きます。」
と言って、マーサは寝袋の中で目を閉じましたの。

私はといえば、流石に板張りだけの寝台で寝るのはいささかどうかと思いましたもので、舞踏会で着ていたドレスのスカート部分だけの糸を解き、布団がわりに致しましたわ。
そして掛け布団代わりに大判の布を引っ張り出しますと、寒い冬でも暖かいファイヤードに私の隣で寝てもらいましたの。
勿論、他の妖精達も枕元で一緒にですわ。

私は、舞踏会に入場する前に羽織っておりましたケープを置いてきてしまった事を少しだけ後悔しながら、
「おやすみ、マーサ。ついてきてくれると言ってくれてありがとう。ゆっくりおやすみなさい。」
とそっと呟いて、私は目を閉じたんですの。


同時刻
ハワード殿下・マリヴェル公爵家・ウィンザード伯爵家。その三家が、それぞれの思惑の中で動いておられる事等、全く気付く事はございませんでしたけどもね。
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