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第三章 旅立ち
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「私が何も言わずにおりましたせいでしょうか。殿下はリーナへと益々傾倒され、私の事が疎ましくなられたのでございましょう。殿下が贈って下さった本日の為のドレスは、私には全く似合わないデザインだったばかりではなく、着丈も何もかも私の身体に合って無いものでしたわ。」
ここで私は、公爵家を出た際纏っておりましたケープでは無く、お父様のエスコートにより会場入りする前に肩に掛けておりました自信作のストールをサッと外しますと、抜群のプロポーションを誇示するかの様に背筋を伸ばしましたの。
すると、私のドレスをご覧になった方々からの評価の声が聞こえて参りましたわ。
「あら?地味なお色目だと思っておりましたのに、なんですの?あのデザインは。どうして胸から上の生地が無いんですの?」
「本当ですわ!あのデザインですと、お身体に自信が無いと着られませんわね。」
「まぁ!よくご覧になって?あの刺繍、あのレース。あれは正に『ユーリブランド』ではございませんこと?」
「本当ですわ。『ユーリブランド』ですわね。」
「まぁ!なんて美しい刺繍なんでしょう。見とれてしまいますわね。」
「ドレスの色味やデザインに合っていらっしゃいますわよね。」
「えぇ、本当に。確かにアンジェーヌ様は妹君の様な派手さはございませんが、凛とした美しさがございましたものね。」
「そうですわ。ハワード殿下は妹君にうつつを抜かされ、学園でも妹君との仲を見せつける様に過ごしておられましたわ。ですが、アンジェーヌ様は何も仰らず、ただじっと耐えていらしたものね。」
「そうでしたわ。そのお姿はまるで厳しい寒さに耐えるスノードロップの様ですわ。」
「アンジェーヌ様の真っ白い、まるで白磁器の様な肌にアイボリーのドレスのお色目が本当に合っていらっしゃいますわね。」
「それにしても本当に美しいドレスですわね。」
「それにご覧になって?あの肩に掛けられていた物も素敵でしてよ。」
「『ストール』というのですって。この前、『ユーリブランド』を扱っている店の店主に聞いたんですの。とても綺麗でしたので、一枚買い求めてみたのですが、使い方が分からなかったんですの。ですが、アンジェーヌ様の様に使えば宜しいのですわね。」
「あら、もうお買い求めに?羨ましいですわ。私も明日、必ずお店に行ってまいりませんと。」
「そうですわよね。きっと明日は皆様がお店に行かれるかもしれませんもの。そう致しましたら、ストールが売り切れになってしまいますわよね。」
うんうん
ドレスもストールに対しても、ご令嬢や貴婦人の方々がお話されていらっしゃる様ですわね。概ね高評価のようで良かったですわ。
これでウィンザードの新居でも、ガツガツ作品を作れそうですわね。
早くあちらへ参りましたら、販売ルートを確保致しませんと。
と、貴婦人達からは高評価を頂いたドレスでしたが、殿下からの評価はどうやら違う様ですわね。
え?どうしてか?でございますか?
それは…
先程より殿下は、ご自分の隣にくっ付いているリーナの胸と私の胸を視線をキョロキョロとさせながら見比べ、最終的に鼻の下をデレッと伸ばしたまま私の胸にロックオンされましたの。
これは早いとこお話を進めませんと、私にとって不都合な事態になりかねませんわよね。
さっさと決着つけちゃいましょうか。
と思いました私は、そんな殿下の視線を無視した状態で、
「致し方なく、私は自身でドレスを購入致しましたの。それをリメイクしてこの舞踏会に着て参ったのですわ。殿下はリーナをご自分のお色のドレスで着飾らせる程愛されていらっしゃるのでございましょう。陛下。私アンジェーヌは、これ以上こんな辱めを受けながら公爵家に留まる事、ましてや殿下の愛妾になり殿下とリーナの愛を妨げる身になる等到底出来かねます。どうか陛下。私を哀れとお思いでしたら、公爵家からの離縁をお認め下さり、修道院へ入らせて下さいませ。」
と、私は王族に向けてする最上級の礼をしたのですわ。
ここで私は、公爵家を出た際纏っておりましたケープでは無く、お父様のエスコートにより会場入りする前に肩に掛けておりました自信作のストールをサッと外しますと、抜群のプロポーションを誇示するかの様に背筋を伸ばしましたの。
すると、私のドレスをご覧になった方々からの評価の声が聞こえて参りましたわ。
「あら?地味なお色目だと思っておりましたのに、なんですの?あのデザインは。どうして胸から上の生地が無いんですの?」
「本当ですわ!あのデザインですと、お身体に自信が無いと着られませんわね。」
「まぁ!よくご覧になって?あの刺繍、あのレース。あれは正に『ユーリブランド』ではございませんこと?」
「本当ですわ。『ユーリブランド』ですわね。」
「まぁ!なんて美しい刺繍なんでしょう。見とれてしまいますわね。」
「ドレスの色味やデザインに合っていらっしゃいますわよね。」
「えぇ、本当に。確かにアンジェーヌ様は妹君の様な派手さはございませんが、凛とした美しさがございましたものね。」
「そうですわ。ハワード殿下は妹君にうつつを抜かされ、学園でも妹君との仲を見せつける様に過ごしておられましたわ。ですが、アンジェーヌ様は何も仰らず、ただじっと耐えていらしたものね。」
「そうでしたわ。そのお姿はまるで厳しい寒さに耐えるスノードロップの様ですわ。」
「アンジェーヌ様の真っ白い、まるで白磁器の様な肌にアイボリーのドレスのお色目が本当に合っていらっしゃいますわね。」
「それにしても本当に美しいドレスですわね。」
「それにご覧になって?あの肩に掛けられていた物も素敵でしてよ。」
「『ストール』というのですって。この前、『ユーリブランド』を扱っている店の店主に聞いたんですの。とても綺麗でしたので、一枚買い求めてみたのですが、使い方が分からなかったんですの。ですが、アンジェーヌ様の様に使えば宜しいのですわね。」
「あら、もうお買い求めに?羨ましいですわ。私も明日、必ずお店に行ってまいりませんと。」
「そうですわよね。きっと明日は皆様がお店に行かれるかもしれませんもの。そう致しましたら、ストールが売り切れになってしまいますわよね。」
うんうん
ドレスもストールに対しても、ご令嬢や貴婦人の方々がお話されていらっしゃる様ですわね。概ね高評価のようで良かったですわ。
これでウィンザードの新居でも、ガツガツ作品を作れそうですわね。
早くあちらへ参りましたら、販売ルートを確保致しませんと。
と、貴婦人達からは高評価を頂いたドレスでしたが、殿下からの評価はどうやら違う様ですわね。
え?どうしてか?でございますか?
それは…
先程より殿下は、ご自分の隣にくっ付いているリーナの胸と私の胸を視線をキョロキョロとさせながら見比べ、最終的に鼻の下をデレッと伸ばしたまま私の胸にロックオンされましたの。
これは早いとこお話を進めませんと、私にとって不都合な事態になりかねませんわよね。
さっさと決着つけちゃいましょうか。
と思いました私は、そんな殿下の視線を無視した状態で、
「致し方なく、私は自身でドレスを購入致しましたの。それをリメイクしてこの舞踏会に着て参ったのですわ。殿下はリーナをご自分のお色のドレスで着飾らせる程愛されていらっしゃるのでございましょう。陛下。私アンジェーヌは、これ以上こんな辱めを受けながら公爵家に留まる事、ましてや殿下の愛妾になり殿下とリーナの愛を妨げる身になる等到底出来かねます。どうか陛下。私を哀れとお思いでしたら、公爵家からの離縁をお認め下さり、修道院へ入らせて下さいませ。」
と、私は王族に向けてする最上級の礼をしたのですわ。
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