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第三章 旅立ち
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毎年卒業舞踏会が行われる場所は、学園内に建てられた講堂ですの。
いつもはこの講堂は、貴族科の生徒がダンスレッスンの授業を受ける時に使用される場所なのですが、卒業舞踏会の時は、華やかな装飾が施され、楽団が入り、生演奏でのダンスが繰り広げられるのですわ。
そして、学園の卒業式は卒業する生徒しか出られないのは当たり前なのですが、舞踏会は、卒業生の家族の他、卒業生が自身のパートナーを連れて来る事が出来ますのよ。
ですので、既に卒業された方が、卒業生のパートナーとして舞踏会に参加なさる事も多々ございますの。
しかも、この学園の卒業生同士の場合ですと、例の卒業行事で交換されたお互いの学年色のリボンとネクタイをそれぞれの服の何処かに身に付け、華々しく入場するのがこの学園の習わしとなっているのですわ。ですが、エスコートをする又はされる者がいない場合は、親族をエスコートして入場致しますの。
かくいうこの私も、父にエスコートされての入場になりましたわ。
そうなりました理由は、皆様にもお分かりかと存じますわね。
そうですの
ハワード殿下は私の妹のリーナをエスコートなさって入場なさったからですわ。
その為私は、父にエスコートして頂く事に。
そのような事態になりました経緯でございますが、講堂に入ります前に一悶着がございましたの。
それは……
私達マリヴェル公爵家の者の到着を講堂前の馬車寄せの辺りで待たれていらしたハワード殿下が、馬車から降りましたリーナを見つけますと直ぐに、バタバタと駆け寄って来られましたの。そしてリーナの両手を取られながら、
「リーナ!あぁ、なんてそのドレスが
似合うんだ。まるで女神の様だよ。」
と褒めちぎられましたの。
そのままリーナの手を取られ、ご自身の腕に巻き付かせられました殿下は、チラリと私をご覧になりますと、
「ふん!地味で不細工なお前には、お似合いの地味なドレスだな。」
と鼻で笑われましたのよ。
はぁ?
何言っちゃってんの?このど阿呆王子は…
てか今着てるこのドレス…、あんたが贈ってきたヤツじゃねぇし!
あんたが寄越したのなんて、どうせ「適当に買ってくれば良い。地味女なんだから、どうせどんなドレスを着ても大して変わらないだろうからな。」
とでも侍女に伝え買いに行かせたんだろうけど、何をどう間違えたのかめちゃくちゃダサいドレスが届いたんだよね。
てか、あんなダサいの着るわけ無いだろうが!
と内心毒づきながらも、淑女の笑みを浮かべました私は、
「あら、殿下。これは、殿下から贈られたあの悪趣味なドレスではございませんわよ。」
「なっ!」
「あら?殿下が贈ってくださったドレスですのに、当のご本人がご存知ないとか…。おかしいですわね。では、どんなドレスだったのかをご存知ないのでしたらお教え致しましょうか?」
と申せば、
「え?も、持ってきているのか?」
「えぇ!そのとおりですわ殿下。珍しく察しが宜しくていらっしゃいますわね。」
と嫌味をめいっぱい込めて申しました後、
「殿下がお贈り下さいましたドレスはこちらでしてよ。」
と申し上げ、一度扇を馬車の席に置きました私は、持って参りました鞄の中から、しわっしわ状態になっておりましたドレスを引っ張り出しましたの。
あぁそうですわ
勘違いならさらないで下さいましね。
しわっしわなのは、私がそうしたわけではございませんの。
私の手元に届きました時には、何故か既にしわっしわな状態でしたの。
ですので、おかげで遠慮なく鞄に突っ込む事が出来ましたのよ。
ですが、顔には淑女の笑みを浮かべ、扇で口元を隠し乍
「どうせ地味で不細工だと思っておられます私を貶め様と、お付きの侍女に適当に買って来るようにと仰ったのでしょうけれども。しかもこのようにシワだらけの状態で。でもまぁお生憎様ですわ。こんな着丈も胸囲も胴囲も合わないドレス。私、到底着ることは出来ませんもの。なんの躊躇も無く鞄に突っ込む事が出来ましたわ。」
と申し上げ、そのしわしわドレスを我が身に当ててみせましたの。
そして、
「ご覧下さいましなハワード殿下。殿下が私に用にとお贈り下さいましたこのドレス。どこが私の身体に合っていると思われますの?」
と申せば、さすがの殿下も私の身に少しも合っていないことがお分かりになられたのか、恥ずかしそうに下唇を噛んで俯いてしまわれましたの。
だってねぇ…
いつもはこの講堂は、貴族科の生徒がダンスレッスンの授業を受ける時に使用される場所なのですが、卒業舞踏会の時は、華やかな装飾が施され、楽団が入り、生演奏でのダンスが繰り広げられるのですわ。
そして、学園の卒業式は卒業する生徒しか出られないのは当たり前なのですが、舞踏会は、卒業生の家族の他、卒業生が自身のパートナーを連れて来る事が出来ますのよ。
ですので、既に卒業された方が、卒業生のパートナーとして舞踏会に参加なさる事も多々ございますの。
しかも、この学園の卒業生同士の場合ですと、例の卒業行事で交換されたお互いの学年色のリボンとネクタイをそれぞれの服の何処かに身に付け、華々しく入場するのがこの学園の習わしとなっているのですわ。ですが、エスコートをする又はされる者がいない場合は、親族をエスコートして入場致しますの。
かくいうこの私も、父にエスコートされての入場になりましたわ。
そうなりました理由は、皆様にもお分かりかと存じますわね。
そうですの
ハワード殿下は私の妹のリーナをエスコートなさって入場なさったからですわ。
その為私は、父にエスコートして頂く事に。
そのような事態になりました経緯でございますが、講堂に入ります前に一悶着がございましたの。
それは……
私達マリヴェル公爵家の者の到着を講堂前の馬車寄せの辺りで待たれていらしたハワード殿下が、馬車から降りましたリーナを見つけますと直ぐに、バタバタと駆け寄って来られましたの。そしてリーナの両手を取られながら、
「リーナ!あぁ、なんてそのドレスが
似合うんだ。まるで女神の様だよ。」
と褒めちぎられましたの。
そのままリーナの手を取られ、ご自身の腕に巻き付かせられました殿下は、チラリと私をご覧になりますと、
「ふん!地味で不細工なお前には、お似合いの地味なドレスだな。」
と鼻で笑われましたのよ。
はぁ?
何言っちゃってんの?このど阿呆王子は…
てか今着てるこのドレス…、あんたが贈ってきたヤツじゃねぇし!
あんたが寄越したのなんて、どうせ「適当に買ってくれば良い。地味女なんだから、どうせどんなドレスを着ても大して変わらないだろうからな。」
とでも侍女に伝え買いに行かせたんだろうけど、何をどう間違えたのかめちゃくちゃダサいドレスが届いたんだよね。
てか、あんなダサいの着るわけ無いだろうが!
と内心毒づきながらも、淑女の笑みを浮かべました私は、
「あら、殿下。これは、殿下から贈られたあの悪趣味なドレスではございませんわよ。」
「なっ!」
「あら?殿下が贈ってくださったドレスですのに、当のご本人がご存知ないとか…。おかしいですわね。では、どんなドレスだったのかをご存知ないのでしたらお教え致しましょうか?」
と申せば、
「え?も、持ってきているのか?」
「えぇ!そのとおりですわ殿下。珍しく察しが宜しくていらっしゃいますわね。」
と嫌味をめいっぱい込めて申しました後、
「殿下がお贈り下さいましたドレスはこちらでしてよ。」
と申し上げ、一度扇を馬車の席に置きました私は、持って参りました鞄の中から、しわっしわ状態になっておりましたドレスを引っ張り出しましたの。
あぁそうですわ
勘違いならさらないで下さいましね。
しわっしわなのは、私がそうしたわけではございませんの。
私の手元に届きました時には、何故か既にしわっしわな状態でしたの。
ですので、おかげで遠慮なく鞄に突っ込む事が出来ましたのよ。
ですが、顔には淑女の笑みを浮かべ、扇で口元を隠し乍
「どうせ地味で不細工だと思っておられます私を貶め様と、お付きの侍女に適当に買って来るようにと仰ったのでしょうけれども。しかもこのようにシワだらけの状態で。でもまぁお生憎様ですわ。こんな着丈も胸囲も胴囲も合わないドレス。私、到底着ることは出来ませんもの。なんの躊躇も無く鞄に突っ込む事が出来ましたわ。」
と申し上げ、そのしわしわドレスを我が身に当ててみせましたの。
そして、
「ご覧下さいましなハワード殿下。殿下が私に用にとお贈り下さいましたこのドレス。どこが私の身体に合っていると思われますの?」
と申せば、さすがの殿下も私の身に少しも合っていないことがお分かりになられたのか、恥ずかしそうに下唇を噛んで俯いてしまわれましたの。
だってねぇ…
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