妹よりブスな姉の幸せ

Saeko

文字の大きさ
上 下
14 / 179
第二章 夢と現実

11

しおりを挟む
妖精達の事を思い出し、また彼等に私の計画を打ち明けましたあの日から、私は週末になります度に、『将来の為』と称し、市井の視察や自領の視察、それから色んな領地の視察に出向く事を始めたんですの。

実は、私が転居を希望している辺境のウィンザード伯爵領は、王都から馬車で4日もかかる地に有るんですの。
とてもではございませんが、往復で1週間以上かかるのでは時間が勿体無い!ですわよね。

そこで先ず私が考えました事は、『飛行馬車』での移動でしたの。
前世の飛行機の様に、空飛ぶ馬車なんて物があったとしたらとても素敵でございましょう?
でも、飛行馬車は条件的に色々無理がございましたので、最終的には『特急馬車』での移動というものに落ち着きましたの。

特急馬車の仕組みは至って簡単ですわ。
ウィンディの仲間の風の妖精達にお願いして、彼等の風の力で高速移動を可能にして貰うというだけですもの。

勿論!
この特急馬車の事は、両親やリーナ、殿下にだって内緒の話ですわよ。
だって想像して下さいませ。
そんな事が出来ると彼等に分かってしまった時は、直ぐに周りの貴族の方々に平気で吹聴してしまいそうでございましょう?
特にリーナや殿下においては、それこそ自分が考案したかのように吹聴なさるでしょうしね。
そうなりましたら、それを聞きつけた貴族達が、「やれ仕掛けはどうだ?」「何処で作って貰えるのか?」「価格は?」等と聞かれ、面倒この上なくなるのは火を見るより明らかですわよね。

ですので、遠い領地に行く時以外は、絶対に妖精達の力は借りない事にしていますし、風の妖精の力を借りる時は、人目に付きにくい所まで来てから力を借りる様にしておりましたの。

最も殿下は、私が公爵家に居なくとも、実家にお越しになってはリーナといちゃこら(あら。はしたなくてごめんあそばせ)なさっていられたら宜しい様なご様子でしたので、私はせっせとウィンザード領に足を運び、物件探しが出来ましたのよ。
ある意味有難かったとも言えますわよね。


さて、足繁く伯爵領へ通いましたおかげで、ようやくめぼしい家が決まりましたので、今度は資金集めに入りましたの。
購入予定の家の持ち主の方はとてもお優しい方で、私が購入資金を貯めるまで売却しないとお約束をして下さいましたの。

ですが……
前世とは違い、この国の貴族令嬢は、何か仕事をしているわけではございませんし、いくら私が公爵家の令嬢とはいえど、両親から頂けるお小遣いだけでは、家なんて高価な物は買えるわけではございませんの。

そこで私、考えましたのよ。

この国の貴族令嬢の嗜みの中に、レース編みと刺繍というのがございますの。
私はそのレース編みのレース糸を、花の精のリリアンの力を借りて綺麗な色に染めあげ、それを使用して編んだレースを、仕立て屋に売り込み(持ち込みとも申しますわね)をして、買っていただくんですの。

この国のレースといえば白色が殆どなのですが、色とりどりの糸で編まれたレースはあまりお見かけする事がございませんので、きっと人気が出ると思いましたの。

初めのうちは、私一人でコツコツちまちまとレース編みをしておりましたのですけれども、それを毎日傍で見ていたリリアン・ウィンディ・トゥーリスのガールズ妖精達が、
『アンジーの手伝いがしたい。』
と言ってくれましたの。

私は喜んで彼女達に甘える事に致しましたわ。
そして私の指導の元、楽しそうにレース編みをしてくれる彼女達を見ていたボーイズ妖精のグランツ・ファイヤード・ウォルターまで手伝いを申し出てくれた時は、嬉し過ぎて泣いてしまいましたの。

『泣かないで、アンジー。』
『そうだよ。僕等が手伝いをするのは当たり前なんだから。』
『アンジーと一緒に暮らすお家を買う為なんだもん、私達も一緒に頑張っちゃう。』
『『『そうそう!』』』
と、皆がそう言ってくれ、それはそれは楽しそうにレース編みをしてくれましたの。
本当に嬉しかったですわ。

そして、妖精達と一緒に作りましたレースの髪留めやリボンを市井の雑貨屋にお試しで置いて貰いましたところ、即日完売になったばかりではなく、お客様より「次の入荷はいつか?」「取り置きをして欲しい。」等のお話が殺到したそうで、お店側から直ぐの納品を依頼されてしまいましたの。
まさに嬉しい悲鳴でしたわ。

あぁそうですわ
お店の方には、私が公爵家の者であるのは内緒ですのよ。
その為私は、自身の身分を偽り、いつも平民の服装でもって商品を持って行く様にしておりましたの。

その後はとても忙しい毎日となりましたわ。
昼間は学園へ
邸へ帰ると公爵家の嫡子としてお父様のお仕事のお手伝い。
夕餉と湯浴みを済ませますと、人払いを致しまして、自室で学園の課題を片付け、毎晩毎晩せっせとかぎ針を動かしレースを編む毎日でしたわ。

流石に疲れてしまう事もございましたが、
ここで挫けてしまっては、折角の計画が頓挫してしまいますものね。
ですので妖精達と一緒に頑張りましたのよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

今度生まれ変わることがあれば・・・全て忘れて幸せになりたい。・・・なんて思うか!!

れもんぴーる
ファンタジー
冤罪をかけられ、家族にも婚約者にも裏切られたリュカ。 父に送り込まれた刺客に殺されてしまうが、なんと自分を陥れた兄と裏切った婚約者の一人息子として生まれ変わってしまう。5歳になり、前世の記憶を取り戻し自暴自棄になるノエルだったが、一人一人に復讐していくことを決めた。 メイドしてはまだまだなメイドちゃんがそんな悲しみを背負ったノエルの心を支えてくれます。 復讐物を書きたかったのですが、生ぬるかったかもしれません。色々突っ込みどころはありますが、おおらかな気持ちで読んでくださると嬉しいです(*´▽`*) *なろうにも投稿しています

私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ
ファンタジー
 シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。  あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。  テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...