妹よりブスな姉の幸せ

Saeko

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第二章 夢と現実

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随分と懐かしい夢を見たわね。
きっと昨日の夜、あんな事があったからだわ。

今私は、王都にあるタウンハウスの自室でも、我が─いや実家の公爵領の屋敷の自室でもない、王都の一角にございます、狭いアパルトマンの部屋の寝台で目を覚ましましたの。

そしてあんな事・・・・と申しますと……。
婚約者であるハワード第二王子に婚約破棄を言い渡された事ですわ。


昨日の晩
私達が通っておりました学園で卒業式がございました。
そして私は、その後に行われました卒業舞踏会で、ハワード殿下より婚約破棄を言い渡されたんですの。

当日の殿下は、学園の同級生で卒業生でもある婚約者の私では無く、私の実妹のリーナカレンデュナ(愛称はリーナ)をエスコートして舞踏会に登場なさったんですの。

昨晩のリーナの装いは、お母様譲りのフワフワの金髪とお父様譲りのペリドット色をしたぱっちりした瞳によく似合うピンクゴールドのドレスを着ており、それにはハワード殿下の瞳の色である、深く青い瞳と同色のリボンがあしらわれておりましたの。
また、リーナの髪飾りにも同色の宝石がふんだんに使われておりましたのよ。
それはまるで、ハワード殿下に愛されているのは"リーナカレンデュナである”と、誰が見ても一目で分かる装いでしたの。


一方、私はと申しますと、お父様譲りの平凡な明るい茶色のストレートヘアにお母様譲りの灰色かかった薄い青色で、意志の強そうな切れ長の瞳をしておりますの。
そして着ておりましたドレスも、殿下から送られた物では無く、市販のドレスを購入し、自らリメイクを施した着回しのきくアイボリーのドレスを着ておりましたわ。
アクセサリー装飾品も勿論自前のものでしたわね。
まぁ、夜会のドレスコードに反する事はないのですから、別にどうも思ってはいなかったのですけれども。

殿下はリーナをエスコートしてのご登場でしたので、当然私は父にエスコートされての入場でしたの。
ですが、第二王子殿下の婚約者が家の者にエスコートされての登場となれば、貴族達の晒し者、恰好の噂のネタになるのは当たり前でしたわね。
父にエスコートされておりました私をチラリチラリと見ては、コソコソと話をする声が聞こえて参りましたもの。

大方、リーナカレンデュラ様はお可愛らしいのに、姉君のアンジェーヌ様は……
だから殿下も妹君をお選びに……
とでも仰っておられたのでしょう。


あ~、思い出したらめちゃめちゃ腹立ってきたわ。ったく、大きなお世話だっちゅーの!!

あら、いけませんわ。口調が荒くなってしまいましたわね。
淑女たるもの"何時いかなる時も笑顔を忘れず冷静に”でなくてはね。と申しましても、もう淑女ではなくなりましたけれども。

え?何故?でございますか?

答えは単純明快

貴族令嬢であった私は昨日の舞踏会で婚約破棄をされてしまった事により、傷物令嬢になってしまったんですもの。

この世界今世に於いて、貴族令嬢にとって、婚約を破棄されてしまう事は非常に不名誉な事なんですの。
拠って、婚約破棄された貴族令嬢は、家名・・に泥を塗ったと烙印を押され、殆どの令嬢は家を追い出され平民になるか、修道院等に入れられるか。
はたまた、一旦は実家に戻りは致しますが、お年を召した殿方の後妻になるか、婚期適齢期ではありますのに色々と問題がある殿方に嫁がされるか。
その何れかになるのが常なんですのよ。

そして、婚約破棄された私はどうしたかと申しますと……。
ハワード殿下から婚約破棄を告げられた際、自ら公爵令嬢という身分を捨て、修道院(本当は違う、のではございますが、元実家の者に、私の移住先が分かってしまう事を防ぐ為についたですの。)に入る旨を、舞踏会に参加しておられた国王陛下と王妃殿下、そして(元)両親に向かって宣言し舞踏会 会場その場をあとに致しましたの。

そもそも私は、ハワード殿下が私との婚約を破棄し、妹のリーナと結婚したいと思っておられます事を存じておりましたし、その為に、誰にも内緒で色々と準備を進めておりましたの。


【平民になって悠々自適の生活をする】

この言葉をスローガンにし、平民になる為の準備を怠らなかったのですわ。


まぁ、こんな風に行動出来ましたのも、一重に前世の記憶が蘇ったからにほかなりませんわね。

てかさぁ……
前世も今世も、何で私の男運てこんなに悪いわけ?
今のルックスだって、前世の悠里梨の時より数段良いんだよ?
まぁ、貴族令嬢にしては地味なのかもだけどさぁ……。

よく言う『所変われば品変わる』的な?
ちょっと違うか……。

まぁ……、美人の規定は時代背景で変わるっていうから。
前世よりイケてるって自分じゃ思ってても、周りの評価はそうじゃないって事よねぇ。

ま、今更悩んだって仕方ないか。
もう動きだしてんだしさ。

掲げたスローガンに向かって全速前進よ!

と、私は退去を数時間後に控えたアパルトマンの寝台で寝転び乍そう思い、握り拳を作りまして静かに闘志を燃やしておりましたの。
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