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73話 決心がついた蓮
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責任取らないといけないね。
自分も気づかないうちにそう零してしまった蓮は、あれから三日間頭を抱えながら悶えていた。
週末、自分の部屋に閉じこもっている今もベッドのマットレスを拳で打ち付けながら、恥ずかしがっているのである。
「ああ、くそぉ……!!本音だったけど、確かに本音だったけど!!」
でも、あの場面であんな恥ずかしいこと言うなんて……!これじゃ莉愛を一生責任取らないといけなくなるじゃないか!!いや、もちろん取るつもりだけど!!
しかし、あんなにサラッと言葉が出てくるなんて……蓮はふうとため息をつきながら、ベッドで仰向けになる。
「ヤバいな……これ、もう告白しなきゃいけないだろ。あんなこと言ったから……」
一生を共にする覚悟ができたら、ちゃんと告白する。これこそが前に、自分が莉愛に伝えた言葉だった。
しかし、三日前の自分はサラッとそれと同じようなことを言ってしまった。あの後に恥ずかしくて即逃げちゃったけど、一度吐いた言葉は飲み込めない。
……それに、蓮自身も気づいていた。自分はもう、莉愛に溺れていると。
莉愛との未来しか想像できなくなっていると、自分も知っているのだ。
「これが、一生を共にする覚悟かどうかは、分からないけど……」
幸せにしたい。
ずっと、笑顔でいさせたい。できるだけ尽くしたいし、甘えさせたいし、受け入れたいし、幸せにしてあげたい。
そんな思いだけが蓮の中で駆け巡っていて、いつの間にか蓮は中学時代の痛みを忘れそうになっていた。
あの頃も、今と想いの大きさはそこまで大差なかった。だからこそ、蓮はずっと悩んできたのだ。
「でも、もう……大丈夫なんじゃないか?何故別れたのか、理由はちゃんと知ってるし」
自分の愛情表現も足りなかったし、莉愛と腹を割った会話もそこまでしてなかった。
だからこそ、別れに至ったのだと蓮は思っていた。でも、それはあくまで中学の時の自分。今の自分は―――変わった。
もう逃げるつもりもないし、莉愛との会話を避けるつもりもない。
全身全霊を尽くして、自分なりに精一杯悩んで、大好きな女の子を幸せにしたいと蓮は願っている。
これが一生を共にする覚悟なのかどうかは分からないけど、決心はついた。
「……ふぅ、よし」
胸が高鳴って、頬が徐々に熱くなる。変な浮遊感みたいなのが襲ってきて、いてもたってもいられなくなる。
だけど、それで当たり前だ。受け入れよう。この感情も、莉愛の我儘も受け入れて、前をちゃんと向こう。そう、莉愛と共にする前を―――
そこまで考えた時、ふと電話が鳴り出す。
「っ……タイミングわるっ。なんだよ……って、お母さん?」
アメリカにいる母親からの電話を無視するわけにもいかなくて、蓮はさっそく電話に出る。
「もしもし、お母さん?」
『あ、蓮~~元気してる?』
「うん。お母さんは?アメリカは大丈夫?」
『こっちはいつも通りよ。そうだ、蓮。一つお知らせがあるんだけどさ』
「うん、なに?」
その後、藍子から出てきた話に、蓮は目を丸くするしかなかった。
『私たち、ここでもう一年働くことになりそうだけど、大丈夫かな?』
「………えっ、それって」
『そうそう、再来年まではアメリカにいるってこと。すなわち、あなたと莉愛ちゃんが再来年まで一緒にいることになるんだけど……ふふふっ、どう?』
……なんで最後に笑ったんだよ!?とツッコミをしたかったけど。
蓮は片手で頭を抱えたまま、考え始めた。もちろん、蓮にとって莉愛と二人きりになる時間が増えるのは、とてつもなく嬉しいことだった。
―――だけど、それはあくまでも自分の観点。
莉愛は寂しがり屋で、基本的に家族が大好きな子だ。
茜さんたちがどうなるかは分からないけど、俺一人で足りないなら………お母さんたちが来た方がいいんじゃないかと、蓮は思う。
あくまで莉愛のことしか考えなかったことに全く気付かずに、蓮は口を開く。
「そうだね……まあ、俺は大丈夫だけどさ。もし、莉愛が寂しいって言ったら……うん、帰ってきて欲しいかな」
『……ふふふふっ』
「ちょっ、なんで今笑ったんだよ!」
『ううん~~?別にぃ~~?好きな女の子のことしか考えてない息子がいじらしいからじゃないよ~?本当だよ~?』
「す、好きって……!へ、変なこと言わないでよ、母さん!!ああ、もう……とにかく、俺は別にどっちでもOKだ!!どうせ、茜さんたちと一緒に行動するんだろ!?」
『そうね、茜と私は同じ部署だから―――あ、そう?そっか~~ふふふっ』
急に隣から話かけられたらしく、藍子の声が若干遠くから聞こえる感じがした。
蓮が首を傾げていると、間もなくして藍子が弾んだ声色で話始める。
『よかったね、蓮。ふふふっ』
「……な、なにが?」
『よかったね~~あ、蓮!避妊は忘れないようにね!?それ、女の子にとって一番大事なんだから!!』
「ひ、ひ………!?!?なんてこと言うんだよ、本当に!!」
『あはははっ!!じゃ切るね~~日本は今夜かしら?おやすみ!!』
「ちょっ、お母さん!?!?」
急な展開に全くついて行けず、蓮は呆然とするしかなかった。
耳元からスマホを離した後、蓮は眉根をひそめながら藍子の言葉をジッと考える。
よかったね……??それってどういうことだ?いや、なにを言われたらそうなる?全く見当がつかないんだけど――
そんな風に頭を抱えていた、その瞬間。
「……入るね」
「えっ」
急に、顔を真っ赤にした莉愛が部屋の中に入ってきて。
蓮は思わず、目を見開きながら変な声を上げてしまった。
自分も気づかないうちにそう零してしまった蓮は、あれから三日間頭を抱えながら悶えていた。
週末、自分の部屋に閉じこもっている今もベッドのマットレスを拳で打ち付けながら、恥ずかしがっているのである。
「ああ、くそぉ……!!本音だったけど、確かに本音だったけど!!」
でも、あの場面であんな恥ずかしいこと言うなんて……!これじゃ莉愛を一生責任取らないといけなくなるじゃないか!!いや、もちろん取るつもりだけど!!
しかし、あんなにサラッと言葉が出てくるなんて……蓮はふうとため息をつきながら、ベッドで仰向けになる。
「ヤバいな……これ、もう告白しなきゃいけないだろ。あんなこと言ったから……」
一生を共にする覚悟ができたら、ちゃんと告白する。これこそが前に、自分が莉愛に伝えた言葉だった。
しかし、三日前の自分はサラッとそれと同じようなことを言ってしまった。あの後に恥ずかしくて即逃げちゃったけど、一度吐いた言葉は飲み込めない。
……それに、蓮自身も気づいていた。自分はもう、莉愛に溺れていると。
莉愛との未来しか想像できなくなっていると、自分も知っているのだ。
「これが、一生を共にする覚悟かどうかは、分からないけど……」
幸せにしたい。
ずっと、笑顔でいさせたい。できるだけ尽くしたいし、甘えさせたいし、受け入れたいし、幸せにしてあげたい。
そんな思いだけが蓮の中で駆け巡っていて、いつの間にか蓮は中学時代の痛みを忘れそうになっていた。
あの頃も、今と想いの大きさはそこまで大差なかった。だからこそ、蓮はずっと悩んできたのだ。
「でも、もう……大丈夫なんじゃないか?何故別れたのか、理由はちゃんと知ってるし」
自分の愛情表現も足りなかったし、莉愛と腹を割った会話もそこまでしてなかった。
だからこそ、別れに至ったのだと蓮は思っていた。でも、それはあくまで中学の時の自分。今の自分は―――変わった。
もう逃げるつもりもないし、莉愛との会話を避けるつもりもない。
全身全霊を尽くして、自分なりに精一杯悩んで、大好きな女の子を幸せにしたいと蓮は願っている。
これが一生を共にする覚悟なのかどうかは分からないけど、決心はついた。
「……ふぅ、よし」
胸が高鳴って、頬が徐々に熱くなる。変な浮遊感みたいなのが襲ってきて、いてもたってもいられなくなる。
だけど、それで当たり前だ。受け入れよう。この感情も、莉愛の我儘も受け入れて、前をちゃんと向こう。そう、莉愛と共にする前を―――
そこまで考えた時、ふと電話が鳴り出す。
「っ……タイミングわるっ。なんだよ……って、お母さん?」
アメリカにいる母親からの電話を無視するわけにもいかなくて、蓮はさっそく電話に出る。
「もしもし、お母さん?」
『あ、蓮~~元気してる?』
「うん。お母さんは?アメリカは大丈夫?」
『こっちはいつも通りよ。そうだ、蓮。一つお知らせがあるんだけどさ』
「うん、なに?」
その後、藍子から出てきた話に、蓮は目を丸くするしかなかった。
『私たち、ここでもう一年働くことになりそうだけど、大丈夫かな?』
「………えっ、それって」
『そうそう、再来年まではアメリカにいるってこと。すなわち、あなたと莉愛ちゃんが再来年まで一緒にいることになるんだけど……ふふふっ、どう?』
……なんで最後に笑ったんだよ!?とツッコミをしたかったけど。
蓮は片手で頭を抱えたまま、考え始めた。もちろん、蓮にとって莉愛と二人きりになる時間が増えるのは、とてつもなく嬉しいことだった。
―――だけど、それはあくまでも自分の観点。
莉愛は寂しがり屋で、基本的に家族が大好きな子だ。
茜さんたちがどうなるかは分からないけど、俺一人で足りないなら………お母さんたちが来た方がいいんじゃないかと、蓮は思う。
あくまで莉愛のことしか考えなかったことに全く気付かずに、蓮は口を開く。
「そうだね……まあ、俺は大丈夫だけどさ。もし、莉愛が寂しいって言ったら……うん、帰ってきて欲しいかな」
『……ふふふふっ』
「ちょっ、なんで今笑ったんだよ!」
『ううん~~?別にぃ~~?好きな女の子のことしか考えてない息子がいじらしいからじゃないよ~?本当だよ~?』
「す、好きって……!へ、変なこと言わないでよ、母さん!!ああ、もう……とにかく、俺は別にどっちでもOKだ!!どうせ、茜さんたちと一緒に行動するんだろ!?」
『そうね、茜と私は同じ部署だから―――あ、そう?そっか~~ふふふっ』
急に隣から話かけられたらしく、藍子の声が若干遠くから聞こえる感じがした。
蓮が首を傾げていると、間もなくして藍子が弾んだ声色で話始める。
『よかったね、蓮。ふふふっ』
「……な、なにが?」
『よかったね~~あ、蓮!避妊は忘れないようにね!?それ、女の子にとって一番大事なんだから!!』
「ひ、ひ………!?!?なんてこと言うんだよ、本当に!!」
『あはははっ!!じゃ切るね~~日本は今夜かしら?おやすみ!!』
「ちょっ、お母さん!?!?」
急な展開に全くついて行けず、蓮は呆然とするしかなかった。
耳元からスマホを離した後、蓮は眉根をひそめながら藍子の言葉をジッと考える。
よかったね……??それってどういうことだ?いや、なにを言われたらそうなる?全く見当がつかないんだけど――
そんな風に頭を抱えていた、その瞬間。
「……入るね」
「えっ」
急に、顔を真っ赤にした莉愛が部屋の中に入ってきて。
蓮は思わず、目を見開きながら変な声を上げてしまった。
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