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44話  蓮が先に告白を……??

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『んん……ん……』
『……莉愛、眠たければ寝てもいいからね?』
『やだ。あなたが運転してくれているのに、寝るわけにはいかないじゃない……頑張ってくれてるんだし』
『へぇ~~やっぱ俺の奥さん最高!』
『ふふっ、でしょでしょ~?もっと褒め称えて~!』


……ああ、そっか。

また、夢か。最近だと見て嬉しくなっちゃう夢の風景を前にして、莉愛は見つめる。

車の後ろ席には、二人の娘たちが肩を寄せ合いながら仲良く眠っていて……助手席には未来の自分と、運転席に未来の蓮が座っていた。

そっか、車に乗ってるんだ……ぼんやりとそのことを思いついた時、未来の自分が言う。


『ふぁあ……でも、さすがに遠いね。お母さんたちの家』
『まあ、仕方ないんじゃない?仕事も早めに引退して、後は別荘でゆっくり過ごしたいと言ってたし』
『だよね~~あはっ。私、また昔のこと思いついた』
『うん?昔?』
『ほら、高校一年の時からずっと一緒に住んでたじゃない。あなたと私で』
『ああ、だね。おかげでめっちゃ喧嘩したよね~~』
『なに~?なんですか、蓮さん?私と一緒にいたのに不満でもあったんですか~?』


うわっ、未来の私ってあんな顔するんだ。純粋に怖い……。


『……ははっ、そ、そんなことあるはずないじゃないですか~!やだな~莉愛さんも』
『ぶぅ……とにかく、あなたと住み始めて1ヵ月……?2ヶ月くらい経ってた時かな?その時に急に、ご両親たちが一気に押しかけてきたことあったじゃない?』


思い当たりがあったのか、未来の蓮は頷きながら相槌を打つ。


『ああ、そうだったね。確かテスト間近だった気がするけど』
『そう。で、その時にお母ちゃんになにを言われたのか、結局聞けなかったなって』
『うん?どういうこと?』
『……蓮、ママと二人きりで色々と話してたでしょ?』


未来の私は若干頬を膨らませて、尋問するように蓮に言っている。

そして、未来の蓮はぷふっと噴き出してから、急に笑い声をあげた。


『あはっ、あははっ!!そうだったね~~確かに、茜さんには色々と言われてたかも~』
『何を言われたの?あれから蓮の態度が一気に変わってたじゃない。告白もそっちが先にしてくるし』
『うん?普通に内緒』
『えぇ!?なんで内緒!?』
『教えたらつまらないだろ~~?あっ、しーっ!!子供たち寝てるから!』
『ぐぬぬ……!!ぐぬぬぬぬぬぬ……!』


悔しがるような私の声を最後に。

私の意識はプツンと、そこで途絶えてしまった。






「…………………………え?」


そして、目が覚めた私は夢の内容を思い返しながら、ぽかんと口を開ける。

サラッと流されたけど、とんでもない言葉を聞いたような……そうだ、告白だ。


「……蓮が、私に先に告白を……?」


……………………………………………………本当に?

れ、蓮が……!?あの蓮が!?いや、なんで!?おかしいでしょ!?

どちらかというと、一方的にしがみついているのは私の方なのに……!それに、私が蓮に先に告白してたのに!?

なのに、先に告白ってどういうこと?まさか、よりを戻すための……!?


「あ、ぁ………っ~~~~~~!?!?!?!?」


蓮が、告白をしてくれる。

昔のようにまっすぐな目で私を捉えて、恋人になってくださいと言ってくれる。

それをほんの少し想像しただけでも、莉愛の心臓は爆破しそうになる。

足をバタバタさせて何度声なき悲鳴を上げても、いっぱいになった気持ちが縮ってはくれない。


「いや、でも……ああ、もう分からない。夢の内容、今まで全部当たってたし……!」


かろうじて理性を働かせ、冷静になろうとしても無駄だった。

だって、今まで夢で言及された事実が全部、当たっていたから。いつしか、莉愛も夢の内容を疑う気持ちが薄まってきたのだ。

そんなはずがないと思いつつも、これが本当に自分の未来だったら。

どれだけ幸せなことだろうと、莉愛は思う。素敵すぎる。

蓮と一緒に結婚して、子供も二人産んで、一生蓮と添い遂げて……少し思うだけでも、息が詰まるくらいに幸せになる。


「完全に変な女じゃん……ふふっ。ああ……でも」


……うん。夢に溺れすぎるのはよくないよね。

でも、あの夢をちゃんと現実にできるように頑張らないと。蓮を振り向かせて、私も一生懸命成長しないと。

莉愛は両手で頬を軽く叩いてから、ベッドから立ち上がった。

午前の7時。今日は週末だから、今の時間だと蓮はまだ起きていないはず。

手洗いと洗面だけして、莉愛は素早くキッチンに向かった。


「私も、頑張らないと」


いつも蓮にご飯を作らせるわけにはいかない。蓮のお嫁さんになるためにも……料理はちゃんと、上達しなきゃ。

そう思って、莉愛が冷蔵庫を開けた時―――


「莉愛?」
「あっ」


思っていたよりずっと早く起きていた蓮が、後ろ髪を掻きながら莉愛を見つめていた。

少し無防備な蓮の姿を捉えて、莉愛の顔がほころぶ。


「……おはよう、蓮」
「……いや、なんでエプロン?」
「朝ごはん作るために決まってるじゃない。ほら、早く顔洗ってきて。私が朝ごはん作ってあげるから」
「い、いやいや。君、料理できないだろ?俺が作った方が―――」
「好きだから」
「…………………うん?」
「す、好きだから………………好き、だから………やだ。譲りたく、ない………」


時が止まったかのようなショックを受けた蓮は、そのまま呆けてしまう。

一方、咄嗟に好きって言葉が出てきた莉愛は身をよじりながら恥ずかしがっていた。

もちろん、その言葉に嘘はなかった。好きだから。

好きな人に、美味しいものを食べさせてあげたいから。だからこそ莉愛も、昨日の夜遅くまでに料理動画を見ていたのだ。


「………っ」
「ふふっ、顔真っ赤」
「う、うるさいな!!はあ……もういい!分かった。顔洗ってくる……朝っぱらからなんなんだ、一体……」


赤く染まった顔をそっぽ向けながら、蓮は洗面所へと向かう。

早く顔を洗って、気持ちを少しでも紛らせないと―――そう思っていた瞬間。

急にかちゃっ、と鍵を開ける音が鳴り響き、二人の目が同時に丸くなった。

そして、当たり前のようにドアが開かれ―――


「あっ、蓮~~!久しぶりぃ~~!」
「えっ、茜さん!?!?」


莉愛の実の母親、七瀬茜が姿を現わした。
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