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24話 格好いい姿を見せたいから
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「おお~~だいぶ上手くなってんじゃねーか。すごいな」
「そう?よかった」
文化祭まであと2週間を切っていた頃。
蓮はライブをやろうとした他の3人と、放課後に1時間ずつ練習することにしていた。
互いの音を合わせてみて、フィードバックをし合って。
そして、藤宮の片思いを成就させるという目標があるからか、今のところ4人の調子はかなり順調だった。
「日比谷、めっちゃ練習してるよな。指に絆創膏まで巻いてさ……」
「あはっ、そりゃ久々に弾いてタコも消えたんだし。仕方ないわ」
蓮は毎晩、莉愛が見ている前でギターの練習を重ねていた。
昔のように、蓮がギターを弾きながら演奏をすれば、莉愛が落ち着いた顔で聞いた後に感想を口にする形だった。
もちろん、莉愛は楽器が弾けるとか、音楽を勉強しているわけではない。
だから、専門家のようなアドバイスはできないけれど―――
『……い、いいんじゃない?』
『なんで顔真っ赤にしてるんだよ』
『き、気のせい!!気のせいだから!』
歌を聞き終えた後の莉愛の反応が面白くて。
莉愛がちゃんと、自分の演奏を聞いたってことが伝わってきて。
だから、いつの間にか莉愛の前で練習をするのが当たり前になったのだ。昔のように。
「ちょっと休憩入るか~~俺へとへとだわ」
あれからもう一度曲を合わせてみた後、先に大久保が話を切り出す。
蓮を含めた残りの3人も特に異論はなく、彼らは音楽準備室の椅子に座って休憩を取り始めた。
蓮は持ってきた鞄からエナドリを取り出して、缶のキャップを開く。
その時ちょうど、大久保からの質問が飛んできた。
「そういえばさ、日比谷」
「うん?なんだ?」
「お前、七瀬に告白する気はないよな?」
「ぷふっ!!!」
ちょうど飲もうとした瞬間にその質問をされて、蓮はむせてしまう。
その後にケホッケホッと何度も咳をした後に、蓮は大久保を睨みつけた。
「けほっ、けほっ……!なんでそこであいつが出てくるんだよ!」
「いやいや、もうもっぱらの噂だろ?俺たちのクラスにまで噂広まってるくらいだぞ?」
「そうだね。もう全部広まってるんじゃない?日比谷と七瀬さんがそういう雰囲気だって」
「いや、そんなわけないだろ!」
横でドラム担当の森沢が言いつつも、蓮は顔をしかめる。
おかしい。なんで!?学校でまともに話したことだってほとんどないのに!?
「素直に言えよ~~お前、歌う時だってめっちゃ気合入ってたじゃねーか。やっぱ七瀬に聞かせたいんだろ~~?」
「そんなわけないだろ!?そもそも、俺とあいつは別にそういうんじゃないから」
「じゃ、どんな関係なんだよ。幼馴染だろ?」
「まあ、幼馴染ではあるけど……」
元カノでもあるんだよ、あいつ。
それをみんなの前で口に出すわけにはいかなくて、蓮は言葉に詰まってしまう。
そもそも、歌う時に気合が入っていたって……?自分じゃ気づけなかった。
「なら、質問を変えようか。日比谷は七瀬さんのこと、どう思ってる?」
「はあ!?いや、それは……」
悩んでいたところで、急に藤宮―――ライブで告白しようとしている子―――が話しかけてきて、蓮はさらに混乱してしまう。
どう思っている、か。そりゃ、真っ先に浮かぶのは別れたという事実だった。
どうしても元恋人だったことを思い出してしまう。最近は軽々しく冗談も交わしたりする関係になったけど、やっぱり気になるのだ。
好きだったから。
心臓が弾けちゃうくらいに、大好きだったから。
莉愛と別れたその夜、蓮は一晩中部屋に閉じこもってずっと泣いていたのだ。
「……まあ、なんでもないって。あいつとは」
「えええ~~そんなわけないだろ!」
「しつこいな~~そういうお前こそどうなんだよ、大久保!」
「俺か?俺はライブ成功させて彼女付き合うに決まってるだろ!」
「相変わらず呑気なヤツだな~~」
みんなそれなりの理由がある。大久保は彼女目当て、藤宮は告白。ドラム担当の森沢は、元々バンドに興味があるから。
でも、自分は?何のためにライブをやろうとしたんだろう。
面白そうだからだ。そう、面白そうだから。でも………
『……………………っ!』
どうしても、莉愛の顔がよみがえって、どうにかなってしまいそうになる。
昔の莉愛がギターを弾いて喜んでくれた姿。
感想を口にしながらも体をすり寄せて、いつの間にかそういう雰囲気になって……。
その一連の流れがあまりにも生々しく、蓮の頭の中に広がって。
『……俺、本当救いようがないな』
ギターを久々に弾きたいからというのも、一つの理由かもしれない。
でも、一番の理由はやっぱり、莉愛なのかもしれないと蓮は思った。
結局、蓮は莉愛の前で格好いい姿を見せたいのだ。
「そう?よかった」
文化祭まであと2週間を切っていた頃。
蓮はライブをやろうとした他の3人と、放課後に1時間ずつ練習することにしていた。
互いの音を合わせてみて、フィードバックをし合って。
そして、藤宮の片思いを成就させるという目標があるからか、今のところ4人の調子はかなり順調だった。
「日比谷、めっちゃ練習してるよな。指に絆創膏まで巻いてさ……」
「あはっ、そりゃ久々に弾いてタコも消えたんだし。仕方ないわ」
蓮は毎晩、莉愛が見ている前でギターの練習を重ねていた。
昔のように、蓮がギターを弾きながら演奏をすれば、莉愛が落ち着いた顔で聞いた後に感想を口にする形だった。
もちろん、莉愛は楽器が弾けるとか、音楽を勉強しているわけではない。
だから、専門家のようなアドバイスはできないけれど―――
『……い、いいんじゃない?』
『なんで顔真っ赤にしてるんだよ』
『き、気のせい!!気のせいだから!』
歌を聞き終えた後の莉愛の反応が面白くて。
莉愛がちゃんと、自分の演奏を聞いたってことが伝わってきて。
だから、いつの間にか莉愛の前で練習をするのが当たり前になったのだ。昔のように。
「ちょっと休憩入るか~~俺へとへとだわ」
あれからもう一度曲を合わせてみた後、先に大久保が話を切り出す。
蓮を含めた残りの3人も特に異論はなく、彼らは音楽準備室の椅子に座って休憩を取り始めた。
蓮は持ってきた鞄からエナドリを取り出して、缶のキャップを開く。
その時ちょうど、大久保からの質問が飛んできた。
「そういえばさ、日比谷」
「うん?なんだ?」
「お前、七瀬に告白する気はないよな?」
「ぷふっ!!!」
ちょうど飲もうとした瞬間にその質問をされて、蓮はむせてしまう。
その後にケホッケホッと何度も咳をした後に、蓮は大久保を睨みつけた。
「けほっ、けほっ……!なんでそこであいつが出てくるんだよ!」
「いやいや、もうもっぱらの噂だろ?俺たちのクラスにまで噂広まってるくらいだぞ?」
「そうだね。もう全部広まってるんじゃない?日比谷と七瀬さんがそういう雰囲気だって」
「いや、そんなわけないだろ!」
横でドラム担当の森沢が言いつつも、蓮は顔をしかめる。
おかしい。なんで!?学校でまともに話したことだってほとんどないのに!?
「素直に言えよ~~お前、歌う時だってめっちゃ気合入ってたじゃねーか。やっぱ七瀬に聞かせたいんだろ~~?」
「そんなわけないだろ!?そもそも、俺とあいつは別にそういうんじゃないから」
「じゃ、どんな関係なんだよ。幼馴染だろ?」
「まあ、幼馴染ではあるけど……」
元カノでもあるんだよ、あいつ。
それをみんなの前で口に出すわけにはいかなくて、蓮は言葉に詰まってしまう。
そもそも、歌う時に気合が入っていたって……?自分じゃ気づけなかった。
「なら、質問を変えようか。日比谷は七瀬さんのこと、どう思ってる?」
「はあ!?いや、それは……」
悩んでいたところで、急に藤宮―――ライブで告白しようとしている子―――が話しかけてきて、蓮はさらに混乱してしまう。
どう思っている、か。そりゃ、真っ先に浮かぶのは別れたという事実だった。
どうしても元恋人だったことを思い出してしまう。最近は軽々しく冗談も交わしたりする関係になったけど、やっぱり気になるのだ。
好きだったから。
心臓が弾けちゃうくらいに、大好きだったから。
莉愛と別れたその夜、蓮は一晩中部屋に閉じこもってずっと泣いていたのだ。
「……まあ、なんでもないって。あいつとは」
「えええ~~そんなわけないだろ!」
「しつこいな~~そういうお前こそどうなんだよ、大久保!」
「俺か?俺はライブ成功させて彼女付き合うに決まってるだろ!」
「相変わらず呑気なヤツだな~~」
みんなそれなりの理由がある。大久保は彼女目当て、藤宮は告白。ドラム担当の森沢は、元々バンドに興味があるから。
でも、自分は?何のためにライブをやろうとしたんだろう。
面白そうだからだ。そう、面白そうだから。でも………
『……………………っ!』
どうしても、莉愛の顔がよみがえって、どうにかなってしまいそうになる。
昔の莉愛がギターを弾いて喜んでくれた姿。
感想を口にしながらも体をすり寄せて、いつの間にかそういう雰囲気になって……。
その一連の流れがあまりにも生々しく、蓮の頭の中に広がって。
『……俺、本当救いようがないな』
ギターを久々に弾きたいからというのも、一つの理由かもしれない。
でも、一番の理由はやっぱり、莉愛なのかもしれないと蓮は思った。
結局、蓮は莉愛の前で格好いい姿を見せたいのだ。
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