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冒険者編

再会

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 ザンとイア、ゴピにクダミさんを玉座の間に転移させるために転移魔法を使った。
 全員を青い光が包み、周りが一瞬で地下から城内に変わる。

「またこれかぁ……ってマールボロ城!? 懐かしいな、それにしても君は何者なんだい?」
「ザンとかほかの人に聞いてください」

 さっさと転移したいが、転移と転移のあいだは5秒空けなくてはならない。
 というかもう転移できるのだが、エルフの村に戻るのを若干ためらっている。

 仕方ない、軽く説明だけして転移しよう。

「ユウトくん!? と、なんかいっぱいいる……ってクダミィ!?」
「久しぶり、なんか連れ戻されたよ」

 王様とクダミさんが感動の再会を果たした。
 そういえば王様の名前はローアルだったな、今度からローアルさんって呼ぼうかな。

「ここがマールボロ城か! 人間の国に来るのは久しぶりだぞ!」
「ユウトくん、この子豚は?」
「南魔大陸の魔法使いっす、イアの師匠っすね」

 改めて見るととても小さい、子豚にも程があるだろう。これはもう貯金箱って言われた方が納得できる。
 てかこんな貯金箱あるよな、金色の豚の貯金箱、中学校にあったぞ。

「お前がマールボロの王か、私はゴピだ。よろしくな」
「よ、よろしくね。なんだかよく分からないけど。ユウトくん、ムーンはどうしたんだい?」
「今から連れてきますよ、安心してくださいローアルさん」
「名前教えたっけ!?」

 娘優先、王様なれども父親か。
 そういや王女様とかいないのか? 見たことないぞ。

「それじゃ、残りの人連れてくるのでだべっててください」
「あー、今回のことについて話し合うんだね、わかったよ」
「そういうことです、では」

 後に飛びながら転移魔法を使う、青い線がシュシュシュンと体の周りを走っているのだろう。俺からは見えないが。
 光で視界が塞がれた瞬間、場所が変わるのを感じた。エルフの村に到着だ。

 外は魔物出現で大騒ぎだというのに、この森は暖かい木漏れ日で包まれている。
 マイナスイオンをビンビンに感じる。癒されるわ、でも花粉だけは許さねぇから。
 この世界に来てから花粉症は治ったけど辛かった記憶は消えてないから。

「あ、帰ってきた」
「ただいまミント、何かあったか?」
「ううん、なんにも。それで……何があったの?」

 ソウルやアイアス、ムーンたちが俺が転移してきたことに気づいて駆け寄ってくる。
 その中に、師匠もいた。

「外に魔物が現れた。封印が破られたか、新しい魔法を貼られたかだな。多分後者だ」
「魔物が!?」
「エルフの森は世界樹の洞窟にしか魔物が出ないから安心しろ」

 世界樹の洞窟、世界樹の下にある洞窟だ。
 あそこの最深部で世界樹の樹液が取れるんだよな。世界樹の樹液は薬になったりポーションの材料にされたり様々な使い方がある。
 一番下の根っこから垂れ流しになってるから容器を持っていけば簡単に持ち帰れる。
 奥まで行ければの、話だが。

「やらなきゃいけない事が増えたわけかぁ、仕事が増えるのはやだなぁ」
「そのうち他の奴らも召喚するから大丈夫だろ」
「そんなもんかなぁ」

 アイアスが頭を掻きながら唸っている。俺もめんどくさいことは嫌いだから困ってるよ。
 こうなると自由も効かなくなるだろうし。

 そんな中、剣杖を持った師匠が前に出てくる。

「ユウトさん……」
「師匠、エルフだったんですね」
「ごめんなさい、隠してて」

 この声、この顔、間違いなく師匠だ。
 エルフだったことには驚きだが、そのおかげで850年たった今でも生きている。
 エルフだったことはむしろ嬉しい。

「気にしてませんよ、また会えて嬉しいです」
「私もです、まさか英雄扱いされるようになったユウトさんにまた会えるなんて」

 バイオレットのお下げ髪を弄りながら笑顔で話す師匠、歳上とは思えない見た目だ。
 というか本当に見た目変わってないな、耳は尖っているが。
 あれは魔法かなにかで隠していたのだろう。

「でも髪短くなりましたね、前はお下げが腰くらいまであったのに」
「ユウトさんだって、雰囲気変わりましたよ。それに、初めてあった時と歳が変わらないみたい」
「色々ありましてねぇ」

 師匠のお下げ髪はちょうど鎖骨のあたりになっている。昔は腰まであって動く度に大きく揺れていたものだ。

「感動の再会のところ悪いけどさ、ザンとイアはどうしたんだ?」
「ああ、あいつらはマールボロ城に転移させた。俺たちもこれからマールボロ城に転移する」
「帰るの?」
「ムーンのお父さんが心配してたからな、早く帰るぞ」

 早く会議がしたい、魔大陸を調査するのはまだ先になりそうだ。
 多分だが、各国の、それぞれの大陸の魔物に対する体制が整ったあとになるだろう。
 そうしたら、魔大陸に移動し、魔王に会いに行くのだ。北大陸はその後だな。よっぽどの事がない限りあそこには行かないだろう。良くない噂だらけだ。

「これからマールボロ城に転移するんですけど、師匠も一緒に来ますか?」
「まあ、懐かしいですね! でもなんで私なんですか?」
「僕の師にあたる人ですからね、話し合いに参加してほしいなと思いまして」

 あとはエルフだからという理由もある。
 族長でもいいのだが、どうせなので師匠を連れていきたい。

「なるほど、これでもエルフ一の魔法剣士です。足りるかわからないですけど、力になります!」

 やはり師匠が族長の言っていた魔法剣士だったか。
 その族長だが、村人達を集めるのに必死なようだ、頑張ってください。

「ありがとうございます! それじゃ転移するのであんまり動かないでくださいね」

 ソウルやムーンにもっと近づけと目で指示する。
 なんとなく察した二人が近寄り、小さくまとまることができた。
 転移先が部屋なので広がってると危ないのだ。

 俺は再び力を入れ、本日七回目の転移魔法を使用したのだった。
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