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1章-1
ビビオは調査国の文化と物語を下調べする
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1階の広大なフロアは全て国ごとの歴史と文化が配置されている。大国になるとスペースも広大だが、リブスタレオスはさほど大きな国ではないため端の方の書架にこじんまりと収まっている。
歴史、文化、物語や昔話といくつかあるが、リブスタレオスが連合国となったのはここ100年の話で、それ以前は小国や都市国家などが個々に独立していた。したがって地域によって歴史や文化が大きく異なるところがあった。それらの書籍は全てリブスタレオス連合国のスペースに配置されていた。
「向かう先はリブスタレオスの首都デュオレから北、旧マイデン王国の一部ハイネか。ここには何かあるのかな」
旧マイデン王国についての歴史について書かれた書籍をぺらぺらとめくっていくと、旧マイデン王国については特筆すべきところのない小国だが、ハイネについてのページでビビオの手が止まった。
「もとは先住民族がいた?」
この書籍には旧マイデン王国全体について書かれたものであるため、ハイネについて書かれていることは非常に少なく変わった儀式をしていたという情報しかなかった。しかしビビオはその儀式が引っ掛かった。新種族はどのようにして誕生するかわかっていないが、古く続く儀式は人の魔力と情が絡みついて土地や空間に染みついていることがあり、そういったところは不思議な現象が起きやすい。
この少数民族を司書が調べているかもしれない。ビビオはさらに、リブスタレオスの書籍の中で先住民族について書かれた資料をあさりはじめた。すると、数百年前に存在した先住民族を調査した報告書を発見した。
「部族内での近親婚を繰り返したために子供ができにくくなったため、子供が生まれた場合はとくに慎重に扱い、死亡した場合には復活の儀式を行っていた。実際に妖精のような状態で戻ってくる子供がおり、数分程度無念の言葉を発して消えてしまった、か」
事前に聞いた話では細い少女に細い老婆、キメラが騒いでいて住民が迷惑をしているということだった。かかわりがあるかわからないが、ないとも言い切れない。ビビオは購入した記録キューブに早速この情報を登録した。
他には聞いた話とほぼ同じことが書かれていてめぼしい情報もないようなので、ビビオはせっかくだからとリブスタレオスの昔話を読むことにした。
『死者の声』
内容:死んだ人の声がどこからともなく聞こえてくる
『猫の王子の冒険』
内容:すばやい動きとユーモアのある猫の王子が大冒険するおはなし
『花の妖精の贈り物』
内容:毎日花を窓辺に置く女の子にお礼として花の妖精が霊薬を渡し、女の子はお母さんの病気を治した
『岩ゴーレムは恥ずかしい』
内容:恥ずかしがりやの岩ゴーレムは、岩のふりをしながら人々の生活をながめている
ビビオは特に気に入ったリブスタレオスの物語を読み込むと、全て記録キューブに登録をした。
「うーん、可愛い物語が多い。いいねいいね」
うんうんと頷きお気に入りのキューブができて満足する。そしてそんなビビオの様子をずっとうかがっている人物がいたが、ビビオは気付かないフリをした。
―――――――――――
図書館の地下には記録キューブに登録された世界中の資料が保管されている。この地下には特別に許可された司書しか入ることができず、許可されている司書が誰なのかも公開はされていない。
どこまで続くかわからない地下室は薄暗く、小さなキューブがいくつも棚に並べられている。そんな部屋で、キューブを探している人物がいた。
「ビビオ・カレシュの固有能力に関する情報がない、か」
固有能力は後世のために情報が残されているものだが調べた形跡は全くなかった。
「故意に残していない?情報収集が国の根幹であるシュバニアルでねぇ」
舌打ちとともに面白い、とつぶやいてその人物は地下室をあとにした。
歴史、文化、物語や昔話といくつかあるが、リブスタレオスが連合国となったのはここ100年の話で、それ以前は小国や都市国家などが個々に独立していた。したがって地域によって歴史や文化が大きく異なるところがあった。それらの書籍は全てリブスタレオス連合国のスペースに配置されていた。
「向かう先はリブスタレオスの首都デュオレから北、旧マイデン王国の一部ハイネか。ここには何かあるのかな」
旧マイデン王国についての歴史について書かれた書籍をぺらぺらとめくっていくと、旧マイデン王国については特筆すべきところのない小国だが、ハイネについてのページでビビオの手が止まった。
「もとは先住民族がいた?」
この書籍には旧マイデン王国全体について書かれたものであるため、ハイネについて書かれていることは非常に少なく変わった儀式をしていたという情報しかなかった。しかしビビオはその儀式が引っ掛かった。新種族はどのようにして誕生するかわかっていないが、古く続く儀式は人の魔力と情が絡みついて土地や空間に染みついていることがあり、そういったところは不思議な現象が起きやすい。
この少数民族を司書が調べているかもしれない。ビビオはさらに、リブスタレオスの書籍の中で先住民族について書かれた資料をあさりはじめた。すると、数百年前に存在した先住民族を調査した報告書を発見した。
「部族内での近親婚を繰り返したために子供ができにくくなったため、子供が生まれた場合はとくに慎重に扱い、死亡した場合には復活の儀式を行っていた。実際に妖精のような状態で戻ってくる子供がおり、数分程度無念の言葉を発して消えてしまった、か」
事前に聞いた話では細い少女に細い老婆、キメラが騒いでいて住民が迷惑をしているということだった。かかわりがあるかわからないが、ないとも言い切れない。ビビオは購入した記録キューブに早速この情報を登録した。
他には聞いた話とほぼ同じことが書かれていてめぼしい情報もないようなので、ビビオはせっかくだからとリブスタレオスの昔話を読むことにした。
『死者の声』
内容:死んだ人の声がどこからともなく聞こえてくる
『猫の王子の冒険』
内容:すばやい動きとユーモアのある猫の王子が大冒険するおはなし
『花の妖精の贈り物』
内容:毎日花を窓辺に置く女の子にお礼として花の妖精が霊薬を渡し、女の子はお母さんの病気を治した
『岩ゴーレムは恥ずかしい』
内容:恥ずかしがりやの岩ゴーレムは、岩のふりをしながら人々の生活をながめている
ビビオは特に気に入ったリブスタレオスの物語を読み込むと、全て記録キューブに登録をした。
「うーん、可愛い物語が多い。いいねいいね」
うんうんと頷きお気に入りのキューブができて満足する。そしてそんなビビオの様子をずっとうかがっている人物がいたが、ビビオは気付かないフリをした。
―――――――――――
図書館の地下には記録キューブに登録された世界中の資料が保管されている。この地下には特別に許可された司書しか入ることができず、許可されている司書が誰なのかも公開はされていない。
どこまで続くかわからない地下室は薄暗く、小さなキューブがいくつも棚に並べられている。そんな部屋で、キューブを探している人物がいた。
「ビビオ・カレシュの固有能力に関する情報がない、か」
固有能力は後世のために情報が残されているものだが調べた形跡は全くなかった。
「故意に残していない?情報収集が国の根幹であるシュバニアルでねぇ」
舌打ちとともに面白い、とつぶやいてその人物は地下室をあとにした。
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