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第二巻・ワテがギアでんがな

 下宿代は720メガジュール

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 それでは話を戻そう──。

 NAOMIさんは、ビーグル犬特有の大きな耳をはためかせてテーブルに前足を掛けると、ぐいっと立ち上がり、犬面(いぬづら)を小一の幼女に向けた。
「キヨ子さんはそんなところを卒業する必要ないわ。あなたならそこの大学教授よりも頭が切れるわよ。あ、そうだ。今度、源ちゃんの講演会にあなた出てみない? マサチューセッツ工科大学の教授たちがたくさん来るのよ」

「マービン博士は来られます?」
「誰でんねん。マービンはんて?」

「あら? 関西電力生命体ならご存知かと思ってましたわ。あなた以前アメリカに下宿していたと言ってませんでした? マービン・リー・ミルスキー博士ですよ?」

「知りまへんなー」

 今度はスマホに小首を傾けるキヨ子どの。
「おやま。東京電力生命体も知りませんか?」

「マサチューセッツ工科大学は知っておるが……それより我々にはギアとゴアという名があるのだ。電力会社の名称みたいに呼ばないでほしい」
 我輩はゴアである。未知なる宇宙の電磁生命体なのだ。電力会社とは何ら関係が無い。

「で。あなたにも下宿代を払ってもらいます。一ヶ月、200キロワットアワーでいかがです?」
 我輩の話など聞いていないのであるな……あんた。

「あの、その……よく解からない単位でして……」
「あら、ごまかす気ですか? ならジュールで言ってさしあげましょう。1キロワットアワーが3コンマ6メガジュールですから720メガジュールです。四の五の言わずに払うのです。いやなら、月、2万円です。現金にしますか?」

「ひーぃ。貨幣は持っていないので、720メガジュールでお支払いします」
 アキラ。お前の将来は安泰なのだ。

 その時、扉がバンと勢いよく開(あ)いて、
「ゴア。月に2万円なら安いほうだぞ!」
 人並み外れた美女が顔を出した。

「ちょっとぉ。ノックぐらいしなさいよ」
 犬型ロボットはけっして「ワンワン」と言わないのである。

「お、そうか。なかなか地球の習慣が身につかなくてな。すまん、すまん。ワタシは今月の家賃を持って来たんだ」
 と言いつつ、腰まで伸ばしたサラサラの金髪を風に泳がせて登場したのは、妖艶な香り満載のクララだ。
 この人が元暗黒軍団キャザーンの女王様。クララ・グランバードである。

 よいか、地球人。我輩から一つ忠告しといてやろう。詐欺集団だと言っても、度胸と武器の扱いは本物だぞ。幸いにも宇宙船と共に武器類はほとんど破壊されたが、小型のフェイズキャノンぐらいなら隠し持っておるかもしれん。しかもそれだけではない。こいつらは肉体その物が武器なのだ。一度目に触れたが最後、そこから離れなくなる豊満なムチムチボディである。地球人をその美貌で翻弄させて乗っ取る気でいるかもしれぬから油断するなよ。

「おいおいゴアよ。そんな物騒なことは考えておらぬぞ。純真にこの地球が、いや日本が好きになっただけだ。今は宇宙船再建を目標に頑張っておる。だからキャザーンはもう捨てたんだ。今はKTNプロダクションの総合マネージャーのクララ・グランバードだ」

 ほれ、と我輩の定宿、アキラが所持するスマホのカメラレンズに差し出した名刺。
 続いて、ポケット型のラジオになぜか取りつけられたイメージデバイスの前にも差し出した。

 我々は電磁生命体である。電気なのだ。スマホやラジオに暮らしておっても何の問題も無かろう。問題があるとすれば、そんな謎の生命体や海賊まがいの宇宙人を相手に、平気で部屋を賃貸して家賃収入を得ようとする北野家の体質のほうが問題ありではなかろうか。

 ギアは我輩の心配をよそに、平然とクララに問い掛ける。
「ほぉ。盛大やってまんねんなぁ。さすが元キャザーンのクイーンや。もう地球の侵略を始めたんや。手始めに芸能界からでっか?」

「するか。宇宙船再建のためにやっておると言ったろうが」

「ほーでっかぁ」
 ギアはモーター音も高々にレンズを動かして名刺を注視する。

「KTN24やのうて、48に増えとるやんか」

「カミタニさんがな、24ではボリュームが足りないと言うのでな、倍にした。あの人にはほんとに世話になっておる。足を向けて寝られないな」

 カミタニさんと呼ばれる人物は、キャザーンの娘子軍(じょうしぐん)をいち早くテレビ電波に乗せた敏腕プロデューサである。あの人がいなければキャザーンは秋葉原の街に散って行ったはずなのだ。それがどうだ。今では全員を大阪に移住させたのである。

「そないに儲けてまんのにメンバー全員安アパート暮らし、クイーンのおまはんも二万円の下宿生活や」
「何度も言うが、宇宙船再建のためにやっておることだ。人のことは放っておけ。ここは居心地がいいのだ。それよりお前もカメラ付きのラジオっておかしいぞ。ふつうその二つは別物であろう?」

「あんな。こういうのをハイブリッドっちゅうや。世の中にはいろいろ吃驚(びっくり)するような組み合わせがあるもんやデ」

「あの、乳(ちち)デカ乳(ちち)子も呆れた女です。無駄なことをして」
「ちょっとぉー。ちゃんと藤本恭子ちゃんって名前があるんだからさぁ。それで呼んであげてよ」

「乳デカを乳デカと呼んでいったい何がおかしいのです。いちど戸籍を調べてみなさい。『藤本 乳デカ』と記載されています」
 そんな珍しい名前は無いと思うのだが。

「そんなー」
 顔をしかめるアキラへ、
「あんな。このラジオはあの子の受験勉強のお供やったヤツや。恭子ちゃんの香りがまだ残ってんのやデ」

「えー。ウソ。ほんとぉ?」
「あーこら。アキラ鼻を近づけるな。ゲン悪いがな。香りが薄れる。あっち行けアキラ、ベベンジョカンジョや、カギ切るで、ほんま」

「また意味の解からない地球語を話す……それはどういう意味だ、ギア?」
 クララは流麗な眉毛を持ち上げてラジオに顔を近づけ、キヨ子どのは吊り上った切れ長の目を輝かせた。

「ゲンが悪いのゲンとは縁起『エン・ギ』の倒語『ギ・エン』をゲンと縮めたモノ。つまり良くないことが起きそうだという意味です。そしてベベンジョカンジョカギを切るとは、汚いものを指して使う、子どもの囃子ことばです」

「子どもって……お前は本当に6才児なのか?」
 クララは得々と語ったキヨ子どのをジト目で見つめ、ガラケー崇拝者が初めてスマホを握った時みたいに口を三角形にした。

「しかし、あのキャザーンが名刺を持って頭を下げるとはなぁ。そやけど宇宙人ちゅうてバレへんのでっか? あんたの部下ちゅうたら、あの娘子軍でっせ。オナゴの戦士や。大丈夫なんか?」

「ああ。まったく問題ない。一度テレビ局へ来てみろ。あそこは宇宙人だらけだぞ。本物がかすんで見えるワ」
 クララは思い出したように言葉を綴る。
「そう言えば、このあいだコリン星から来たと言う女性と会ったぞ。本人はコリン星なんてありませんよーとか言っておったが、あれはウソだな。ワタシはゑ(エ)プシロン星系のコリン星としばらく連絡を取り合っていたのだ。コリン星はちゃんとあるぞ。ワタシが言うのだから間違い無い。緑の美しい農業の盛んな星だ。近いうちに里帰りさせてやろうと思っておる」

 迷惑がると思うのだが……。

「ねぇ。クララさーん。今度さー。恭子ちゃんとテレビ局の見学に行ってもいい?」
「バカの巣窟など! 行かなくてもよろしっ!」
 ミーハーの極致であるアキラの言葉に、幼女が高圧的な態度で息巻いた。

「なんでよー。野々木坂に会えるかもしれないじゃない」
「あなたには妻がいるのです。必要ありません!」
 アキラは派手に肩を落として、
「ちょっとマイボ。インターフェース切ってよ」
「はいはい」苦笑いと共に尻尾をフリフリ。
 犬が苦笑いと言うのも、なんだかなぁ。

 続いてキヨ子どのの表情が一変する。頭の天辺からつま先へと緊張感がそぎ落とされていくと、椅子に座るアキラの膝に楽しげに飛び込んだ。
「ねぇ。おにいちゃん。メルルちゃんにもあえる? キヨコ、まいしゅうメルルちゃんみてんのよ」

 何がなんだか解らず、キョトンとした人にお伝えしよう。これが緑川キヨ子の実の姿なのである。

 緑川キヨ子。6才、小学校一年生。隣の緑川家の長女。北野家とはタダのお隣さんだ。つまり曲者なのはNAOMIさんの尻尾である。
 それがスピリチュアルインターフェースと呼ばれる、世界中のスーパーコンピューターとBCI(Brain computer Interface)接続するデバイスであり、ポストヒューマンと呼ばれるゆえんでもある。だいたいは諸悪の根元となっておるがな。

 よいか。ここを強調するぞ。キヨ子どのと、キヨコはまったくの別人だと思っていただこう。キヨ子どのに変身中は口の利き方に注意しないといけないのである。

「そうだね。メルルちゃん可愛いね。僕も知ってるよ」
 高校二年生にもなって……我輩は情けないぞ。
「でもね。あれはアニメだからね。アキバか日本橋(にっぽんばし・大阪)へ行かないと会えないよ」

「アニメやのに……会えまんの?」とギア。
「サイン会とか、子供向けのイベントショーでよく見るよ」
「あぁー、あの着グルミのヤツでっか。妙に頭がでっかいやつな。中に人が入るから、アニメの可愛さが消えてしもて、ただただでっかくて、舞台の上で動き回る圧迫感で、反対に恐怖を感じるヤツな」

 えらい詳しいが、お前も見に行ってるのか?
「へ? へぇ。照明のバイトでな」

「ギアは下宿代2万円をちゃんとを払ってるわよ」とNAOMIさん。
「ふんっ。ストリップの照明係が今やアニヲタの相手をしているのか。落ちぶれたもんだな」
 こっちは嘲笑めいた言葉のクララ。
「いや、キャザーンもギアも、どっちもどっちだと我輩は思うが……」

「まあどうでもいい。ワタシも下宿代を払いに来た。リリーたち3人分と合わせて8万円だ。受け取るがよかろう」

「そやけど、ようその上から目線でテレビ局相手に仕事ができまんな」
「ふんっ。それはワタシが地球に馴染むために最初に学んだコト。ここでは二面性が必要だと悟ったのだ。この家を一歩出るとワタシは百八十度変わるぞ」

「お姉さまぁ?」
 一際(ひときわ)可愛い子がドアから顔を覗かせた。部屋の中がぱあっと明るくなったほどである。

「ん? なんだキャロ?」
「あーー。キャロラインちゃん。今日仕事お休み?」
 アキラが飛びついた先、少し開けた扉から覗く青い髪のツインテの少女。吸い込まれそうなマリンブルーの瞳をした整った顔立ちは北欧系の美少女……そのもの。誰も、ターミニオン星系の宇宙人だとは思うまい。

「あ、アキラくん。本日は午後3時から『角九(かどきゅう)』でサイン会なの。それまでオフもらっちゃった」

 うーむ。キャザーンの兵士がこうも変わるとは……。
 キャザーンの女兵士、娘子軍は総勢160名。全員がスタイル抜群の美少女ぞろい。

 乗っていた宇宙船が自爆して、命からがら逃げ込んだ場所が地球の秋葉原。人類は誰も気づかなかった。そらそうである。秋葉原と言えば、星間航路の連絡ゲートにあるロビーよりも意味不明な物体が闊歩しておる。あれはもう物体と言ってもよかろう。

 リンゴの絵が描かれたスマホを買おうと、人類が無駄な大行列を作っておる間に、女王、クララは持ち前の美貌と息を飲む色気でアパートの大家を丸め込み、格安で契約。全員を寮生活させると共にカミタニさんの助けを経てKTNを立ち上げ、選抜する24人からスタート。安定してきたところで、全員を大阪に引き取り、リーダー格のトップ三名は北野家に転がり込んだのだ。

 カミタニさん曰く。大阪を制した者に怖いものは無し、だそうだ。ギアを見ているとそんな気がしてしまうから恐ろしいのである。


 我輩もここに住んで長期になるが、いろいろと見たり聞いたりしておる。

 たとえばよく聞く話だが、旦那の仕事の関係で関西へ引っ越すことになった若奥さんが、関西人に恐怖を感じて憂鬱になるそうだ。だが安心召されよ。2年も立てば、いっぱしの大阪のオバちゃんに変貌するのである。

 ちなみに、大阪周辺のオバちゃんは誰かれ構わず話しかけてくると言う噂話。あれは本当である。スーパーなどで平気で人の買った物にまで口出ししてくるぞ。どこに陳列してあったのか、とか、それどうやって調理したらいいのか、とか。あんたの知り合いではない。と言いたげになるのだ。

 あ。すまぬ。話が飛んだのである。元に戻すぞ。

「お姉さま、伝え忘れていました。カミタニさんから、ヒトサンマルマルに打ち合わせ決行との連絡が入電しています」
「ヒトサンマルマルって。兵士の癖が消えまへんのやな」
「致し方なかろう。キャロは通信士だったのだ。それとメールが入るのを入電と言うな。ワタシも昔のクセが出そうになる」

「はぁーい。それじゃ、お部屋にて待機しています」
「よし。お前らの出動はヒトサンサンマルだ。遅れるな。それまで第二種戦闘配置だ。いいな」

「おまはんも抜け切れてないがな……」

 キャロラインはパシッと踵(かかと)をそろえ挙手をして部屋を出ようとし、
「キャロちゃーん。あそんでぇぇ」
 後を追いかけるキヨ子、6才。
「ごめんねキヨコちゃん。これからみんなでダンスの練習するのよ」
 足を止めて振り返る青い眼のキャロライン。

 一見普通の光景だが、片や宇宙人。こちら世界中の科学者と対等に会話ができる超天才幼児が、ふつーの幼児に戻った姿。誰が想像できようか。

「アホ。大げさやねん。ワテには全部日常や。何もおかしいことあるかいな。地球人も宇宙に出れば宇宙人や。キャロラインも普通の女の子や」
 二の句がつげなかった。宇宙とはそんなモノなのだ。忘れておった。

 普通の6才児は普通の少女に飛びつき、
「キヨコもれんしゅうするー」
「いいわよ。おいで。新しいKTNの振り付け教えてあげる」
 おおぉ。本物に教えてもらえるとは、ある意味キヨコは幸せ者であるな。

 キャザーンの幹部をこの家に下宿させると宣言したNAOMIさんの提案は少なくともキヨコにはいいことであるが、連中は全然、暗黒軍団キャザーンから抜け切れていない。あれで世間を騒がせるKTN48なんだから、信じらない。

「では、確かに下宿代を払ったからな。アキラ」
「はいはい。後で受け取りにハンコ捺して持って行くよ」
「うむ。家賃制度とはなかなかいいものだな……。あ、さて私も打ち合わせに出かけるので、そろそろ着替えるとしよう」

 金色の髪を掻きあげて頭を振るクララ。艶やかな仕草に大人の色気たっぷりのボディ。
 呼吸器も無い我輩なのに、大いに息を飲んだ。これなら連邦軍が翻弄されても致し方ないな。

「……ん?」
 クララはきらりと光る切れ長の視線でアキラを貫き、
「何をソワソワしておる? まさか、お前のジイさんみたいに覗きの癖は無いだろうな」
「ないない」
 即行で石化させられるアキラ。これからはメドゥーサ・クララと改名すべきかも。

「おまはん。ほんまに覗きに行って無いんか? もし行くときはラジオも持参してや」
「ラジオ持参で覗きに行くのはおかしからろう。スマホなら一般的だ。な?」
「な? じゃないよ。僕は行ってないって。でもジイちゃんはやばいよ。研究そっちのけで、用も無いのにクララたちの部屋を順番に尋ねて、チャンスがあれば覗いてんだ」

「それでいいのよ。娘子軍は覗かれたって平気よ。そう言う世界で生きて来たんだから。だから芸能界だってすんなり馴染んだのよ」
 てなことをNAOMIさんが言うもんだから、アキラははしゃいでしまって。
「えー、じゃあ。僕も時々遊びに行こうかな」
「あ、あ、あ、アキラ、頼むから、ら、ら、ら、ラジオを持ってってくれ」

 そんなに慌てて言うほどのモノか、ギア?
「アキラさん。行ってもいいけど、その時はキヨ子さんを放すからね」
 まるで軍用犬である。
「ドーベルマン・キヨ子か……」
 ふむ。こちらも改名したほうがよさそうだ。

「それだけはやめてよ……」
 あきらめの悪い青年はいつまでもブチブチと。
「でもジイちゃんだけイイなぁぁ」

「それもあたしの作戦の一環よ。源ちゃんに代って、キヨ子さんに研究を進めてもらいたいからよ。おかげではかどっちゃって。感謝してるわ」
「それはそれで問題おまへんか。6才児が量子デバイスの研究開発をしてるのがバレたら、世界中がひっくり返りまっせ」
「その時はその時よ。何か考えるわよ」
「北野博士の存在はどうなりまんねん。要らん存在でっか?」
「何言ってるの。量子コンピュータの分野は今や源ちゃん以外に誰もいないわ。世界中から引く手あまたよ。キャザーンの覗きぐらい何よ。世界の北野博士に覗かれたのよ。それだけで価値が上がるわ」

「ほほぉ。NAOMIはんは寛大でんなー」
「そ。オンナは受け入れてナンボ。受け身の動物なのよ」
 あんたは女でもないし、動物でもない。犬型ロボットなのだ。

「あぁぁ。あたしをギュッと抱きしめてくれる男はいないかしら?」
 声だけ聴いておると男気をそそられるのだ。で、男気ってなんだ?

「せやけど……最近はそんな男はおりまへんで」
「草食系であるな」
「ほんまや。どない思いまっか?」
「いいじゃない。あたしはガツガツした男は嫌い。草食系も可愛いくていいわよ」
 くどいけど、あんたはロボットなのです。

「あのさぁ……」
 さっきからアキラが急激に消沈しておるが、どうしたのであろうか?

「なんでっか?」
「草食でも肉食でもいいけどさー。スマホとポケラジ、それからロボット犬の相手をする僕の身になってよ。今この部屋、僕以外人間が居ないんだよね」
「なんでやねん。おらんでええがな。ラジオなんて独りで聞くもんや。それとも大阪弁のラジオがおかしんいか? ここらへんやったらどこの家でもそんなもんやろ?」

「そりゃあ。大阪の放送局だから大阪弁で喋って当たり前だけど……」
「ほやろ。なんもおかしないで。ようみんな一人でラジオ聞いて突っ込んでまんがな」
「でもこのラジオは、逆に突っ込み返して来るじゃないか。そんなのっておかしいよ」
「ええがな。退屈せえへんやろ? こういうのは会話のキャッチボールちゅうねん」
「だからそんなラジオって無いよ」

「ふむ。そういう意味ならスマホは普通だな。みんなスマホ相手に会話をするではないか」
「相手が人間で、スマホは単なる仲立ちをする機械じゃないか。スマホとラジオだけが友達みたいで、僕って悲しい子じゃないよ」
「そういう問題ではなく、ラジオやスマホの中に宇宙からやって来た電磁生命体が入っているほうが問題ではないのか? そう思わぬかアキラ?」

「まぁ、そんな話はどうでもいいじゃない」
 SETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトが血眼になって探しているのに、北野家の愛犬(ロボット)はその大問題を受け流し、
「それよりアキラさん。夏休みの宿題終わったの? 今年はちゃんとやらなきゃ。また去年みたいにキヨ子さんに叱られながらやるのはいやでしょ」
 なんと。世界規模の大プロジェクトを夏休みの宿題にすり替えたたのである。ある意味これはすごいな。我輩、怖くなってきたのである。

「当たり前だよ。小一に宿題見てもらってる高校生って僕ぐらいだよ」
「なかなか貴重な存在であるな」
「何てこと言うのさ。ゴアのばかー」
 我輩はバカではない。
「我輩はゴアである」
「ほんで、ワテがギアでおま」

 オチが付いたところで、今回はこれにて終了である。

 ──続くぞ~。
  
  
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