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第1話 第1位と第2位
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筋骨隆々の男女が、汗を流しハードなトレーニングに勤しんでいる。
ここは、国内最大級の機材を誇るトレーニングジム『ヘルキャット』。このジムでは、様々な一流アスリート、ボディービルダーを排出してきた。
日夜、筋肉の猛者達が己を鍛え上げ、時には談笑しながらプロテインを飲み、そしてまた、筋肉を限界まで鍛え上げていた。
そんなヘルキャットに1人の男が入ってくる。これでもかというほど膨れ上がった筋肉は、彼がきている黒のタンクトップを今にも破ろうとしている。
彼の名は、城之内 力(じょうのうち りき)筋肉以外に興味はなく、ひたすらストイックに筋肉を磨いてきた男だ。
彼は受付を済ませ、今月号のパンパン倶楽部を手に取る。パンパン倶楽部とは、ヘルキャットが毎月発行している情報誌だ。今話題の筋肉情報がこれでもかと盛り込まれている。
彼は、サングラスを外し、パンパン倶楽部に目を通す。1枚1枚ページをめくっていくが、どのページにも同じ人間が載っている。
今や時の人であり、筋肉の業界でもはや知らぬ者はいない、飛ぶ鳥を落とす勢いのこの男。パンパン倶楽部でも、ずっと取り上げられているこの男の名は、細貝 粗田(ほそがい あらた)。
彼の筋肉は、通称『神の筋肉』と呼ばれている。その人間離れした芸術的な美しさの筋肉で、ボディービルの大会では、常に1位を取っている。
力は、細貝ばかりが載っているパンパン倶楽部をペラペラとめくり、最後に自分が載っているページを発見した。
そのページには、おまけの筋肉占いがあり、そのおまけのおまけに館長の写真コーナーがある。その写真コーナーに、力が筋トレをしている写真が載っていた。
しかし、その写真のサイズは、筋肉占いに出てくるマスコットのミニキンよりも小さい。
「シッット!!!!!」
彼は、そう叫ぶと持っていたパンパン倶楽部をクシャクシャに潰した。クシャクシャになったそれをリュックに押し込み、ロッカールームに移動する力。
ロッカールームでは、数人が談笑していた。その内の1人が力に気がつく。
「力さん!おはようございます!」
力の宿敵、細貝であった。彼は力の心情など知らずに話しかけてくる。誰にでも物腰柔らかで愛される好青年だった。当然のようにシカトし、トレーニングウェアに着替える力。
「悪りぃな、細貝。あいつは根はいいやつなんだけど、筋肉の事となると熱くなっちまうタイプでな。」
細貝と談笑していたベテランのボディービルダーは言う。そんなぁ...。と悲しそうな顔をする細貝。
「あ!力さん!僕、新しいプロテイン発見したんですよ!」
めげずに話しかける細貝に目をくれることもなく、力はロッカールームを後にした。
「お前もお前で、どうして力をそんなに好きなんだ細貝。」
ベテランのボディービルダーはやれやれといった様子で細貝を見る。
「だって、力さんは僕の憧れの人ですから!力さんを見て、僕はこの世界に入ったんですよ!あのストイックな姿勢がかっこいいんですよ!!」
目を輝かせる細貝に、わかったわかったと苦笑いを浮かべるベテランのボディービルダー。
「僕が大会で力さんに負けたら、力さん機嫌直してくれるのかなぁ。」
細貝の一言に、ベテランビルダーは、少しだけ笑う。
「筋肉が関わる勝負事で、そんな八百長したら今度こそお前は力に殺されるぞ。ほら、そんな事よりトレーニングルーム行くぞ。」
ベテランビルダーは、細貝の尻を叩いた。
ここは、国内最大級の機材を誇るトレーニングジム『ヘルキャット』。このジムでは、様々な一流アスリート、ボディービルダーを排出してきた。
日夜、筋肉の猛者達が己を鍛え上げ、時には談笑しながらプロテインを飲み、そしてまた、筋肉を限界まで鍛え上げていた。
そんなヘルキャットに1人の男が入ってくる。これでもかというほど膨れ上がった筋肉は、彼がきている黒のタンクトップを今にも破ろうとしている。
彼の名は、城之内 力(じょうのうち りき)筋肉以外に興味はなく、ひたすらストイックに筋肉を磨いてきた男だ。
彼は受付を済ませ、今月号のパンパン倶楽部を手に取る。パンパン倶楽部とは、ヘルキャットが毎月発行している情報誌だ。今話題の筋肉情報がこれでもかと盛り込まれている。
彼は、サングラスを外し、パンパン倶楽部に目を通す。1枚1枚ページをめくっていくが、どのページにも同じ人間が載っている。
今や時の人であり、筋肉の業界でもはや知らぬ者はいない、飛ぶ鳥を落とす勢いのこの男。パンパン倶楽部でも、ずっと取り上げられているこの男の名は、細貝 粗田(ほそがい あらた)。
彼の筋肉は、通称『神の筋肉』と呼ばれている。その人間離れした芸術的な美しさの筋肉で、ボディービルの大会では、常に1位を取っている。
力は、細貝ばかりが載っているパンパン倶楽部をペラペラとめくり、最後に自分が載っているページを発見した。
そのページには、おまけの筋肉占いがあり、そのおまけのおまけに館長の写真コーナーがある。その写真コーナーに、力が筋トレをしている写真が載っていた。
しかし、その写真のサイズは、筋肉占いに出てくるマスコットのミニキンよりも小さい。
「シッット!!!!!」
彼は、そう叫ぶと持っていたパンパン倶楽部をクシャクシャに潰した。クシャクシャになったそれをリュックに押し込み、ロッカールームに移動する力。
ロッカールームでは、数人が談笑していた。その内の1人が力に気がつく。
「力さん!おはようございます!」
力の宿敵、細貝であった。彼は力の心情など知らずに話しかけてくる。誰にでも物腰柔らかで愛される好青年だった。当然のようにシカトし、トレーニングウェアに着替える力。
「悪りぃな、細貝。あいつは根はいいやつなんだけど、筋肉の事となると熱くなっちまうタイプでな。」
細貝と談笑していたベテランのボディービルダーは言う。そんなぁ...。と悲しそうな顔をする細貝。
「あ!力さん!僕、新しいプロテイン発見したんですよ!」
めげずに話しかける細貝に目をくれることもなく、力はロッカールームを後にした。
「お前もお前で、どうして力をそんなに好きなんだ細貝。」
ベテランのボディービルダーはやれやれといった様子で細貝を見る。
「だって、力さんは僕の憧れの人ですから!力さんを見て、僕はこの世界に入ったんですよ!あのストイックな姿勢がかっこいいんですよ!!」
目を輝かせる細貝に、わかったわかったと苦笑いを浮かべるベテランのボディービルダー。
「僕が大会で力さんに負けたら、力さん機嫌直してくれるのかなぁ。」
細貝の一言に、ベテランビルダーは、少しだけ笑う。
「筋肉が関わる勝負事で、そんな八百長したら今度こそお前は力に殺されるぞ。ほら、そんな事よりトレーニングルーム行くぞ。」
ベテランビルダーは、細貝の尻を叩いた。
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