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所信表明
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決まった。
これ以上無いくらい簡潔でまとまった自己紹介。
冷やかしじゃなくて、しっかり上を目指しているというのもアピールできたと思うんだけど……。
自己紹介を聞いた周りにいる女子達から小さくないざわめきが広がる。
やはり俺のことは選手ではなくマネージャー希望だと思っていたようだ。
うわぁ。
やっぱりそういう反応だよなぁ。
そりゃ俺だって「前の世界」でいきなり女の子がエースになります宣言したら、最初に来るのは困惑だと思うだろうし。
でもだからといって、野球の事で嘘を付く選択は俺には考えられないからこれでいい。
やるなら本気だ。おれはそうやってプロになったんだ。
何かがおかしい世界というのはわかっている。
どうせ考えてもわからないのであれば折角の機会だ。
もう一度高校野球を楽しんでしまおう。
~~~
「では入部式はこれで終わりだ。一年生は明日から正式に練習に参加してもらうことになる。各自準備しておくように。それでは解散だ」
木原監督がそう部員に告げる。
部員たちがベンチ前からぞろぞろと離れていくと、案の定俺は監督に呼び止められた。
「神山だったか? ちょっといいか?」
どちらにしろ監督と話をしておかないと困るのは俺も同じだったので丁度良かった。
むしろ呼ばれなかったら自分から行くつもりだった。
「はい。大丈夫です」
「そうか。じゃあちょっと付き合ってくれ」
そう言うと監督は三塁ベンチの方に歩き出した。
どうやらここで話すと他の部員に話を聞かれてしまうのを配慮してくれたらしい。
俺は監督についていく。
すぐに三塁ベンチに着くと、監督は俺に座るように促した。
「さて神山。いくつか聞きたいことがある。答えてくれ」
「はい」
「まず親御さんはお前が野球部に入る事は知っているのか?」
「はい。もう許可はもらっています」
まあ監督としては確認とっておかないとまずいよな。
いろいろうるさいことも多いから、男を入部させるなら保護者の同意は必要だろう。
「そうか。先程も言ったがウチの高校は甲子園を目指している。男子生徒にとっては非常にキツい練習になるだろう。部活が終わる時間も遅くなることが多い。もちろん女子しかいないとわかっていて入部しようとしてることから考えても、お前が本気なのかわかっているつもりだ。だが野球をやりたいと言うなら男子ソフト部と言う選択肢もあるはずだ。なぜ野球部なんだ?」
監督が俺のことを気遣ってくれているのがわかる。
だが俺はただ野球がやりたいだけではないんだ。
「野球部に入らなければ甲子園にも出れないし、プロにもなれないからです」
監督は一瞬呆けたようになると、一度深く息をした後に居住まいを正した。
「そうか。よくわかった。男子だからといって特別扱いはすることはないからな。明日からがんばってくれ」
「はい。わかりました。よろしくお願いします」
どうやら話は終わったらしい。
もっと突っ込んで聞かれるかと思ったけど拍子抜けだな。
もちろんなんと言われても引く気はなかったが。
「お前からも何かあるか? 特に無いようなら終わりにするが」
「ありがとうございます。今は特にありません。なにか問題があればその時に相談させていただきます」
監督はその言葉を聞いて頷くと、立ち上がり歩き出した。
よし! 明日から練習だ。
目標は甲子園。
そして目指せプロ野球選手だ!
これ以上無いくらい簡潔でまとまった自己紹介。
冷やかしじゃなくて、しっかり上を目指しているというのもアピールできたと思うんだけど……。
自己紹介を聞いた周りにいる女子達から小さくないざわめきが広がる。
やはり俺のことは選手ではなくマネージャー希望だと思っていたようだ。
うわぁ。
やっぱりそういう反応だよなぁ。
そりゃ俺だって「前の世界」でいきなり女の子がエースになります宣言したら、最初に来るのは困惑だと思うだろうし。
でもだからといって、野球の事で嘘を付く選択は俺には考えられないからこれでいい。
やるなら本気だ。おれはそうやってプロになったんだ。
何かがおかしい世界というのはわかっている。
どうせ考えてもわからないのであれば折角の機会だ。
もう一度高校野球を楽しんでしまおう。
~~~
「では入部式はこれで終わりだ。一年生は明日から正式に練習に参加してもらうことになる。各自準備しておくように。それでは解散だ」
木原監督がそう部員に告げる。
部員たちがベンチ前からぞろぞろと離れていくと、案の定俺は監督に呼び止められた。
「神山だったか? ちょっといいか?」
どちらにしろ監督と話をしておかないと困るのは俺も同じだったので丁度良かった。
むしろ呼ばれなかったら自分から行くつもりだった。
「はい。大丈夫です」
「そうか。じゃあちょっと付き合ってくれ」
そう言うと監督は三塁ベンチの方に歩き出した。
どうやらここで話すと他の部員に話を聞かれてしまうのを配慮してくれたらしい。
俺は監督についていく。
すぐに三塁ベンチに着くと、監督は俺に座るように促した。
「さて神山。いくつか聞きたいことがある。答えてくれ」
「はい」
「まず親御さんはお前が野球部に入る事は知っているのか?」
「はい。もう許可はもらっています」
まあ監督としては確認とっておかないとまずいよな。
いろいろうるさいことも多いから、男を入部させるなら保護者の同意は必要だろう。
「そうか。先程も言ったがウチの高校は甲子園を目指している。男子生徒にとっては非常にキツい練習になるだろう。部活が終わる時間も遅くなることが多い。もちろん女子しかいないとわかっていて入部しようとしてることから考えても、お前が本気なのかわかっているつもりだ。だが野球をやりたいと言うなら男子ソフト部と言う選択肢もあるはずだ。なぜ野球部なんだ?」
監督が俺のことを気遣ってくれているのがわかる。
だが俺はただ野球がやりたいだけではないんだ。
「野球部に入らなければ甲子園にも出れないし、プロにもなれないからです」
監督は一瞬呆けたようになると、一度深く息をした後に居住まいを正した。
「そうか。よくわかった。男子だからといって特別扱いはすることはないからな。明日からがんばってくれ」
「はい。わかりました。よろしくお願いします」
どうやら話は終わったらしい。
もっと突っ込んで聞かれるかと思ったけど拍子抜けだな。
もちろんなんと言われても引く気はなかったが。
「お前からも何かあるか? 特に無いようなら終わりにするが」
「ありがとうございます。今は特にありません。なにか問題があればその時に相談させていただきます」
監督はその言葉を聞いて頷くと、立ち上がり歩き出した。
よし! 明日から練習だ。
目標は甲子園。
そして目指せプロ野球選手だ!
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