精霊の加護の科学都市

白石華

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後日談、サイドストーリー、幕間の話など

後日談、リリーシャの生い立ち

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 ――それは、事件が解決したばかりの頃――

「こんにちはー! 来たわよ!」
「ああ、いらっしゃい。君がマチルダちゃんか。」
「いらっしゃい、マチルダ。」

 身に着けている制服から、パパと同じ部隊の人と思わしき人の護衛に連れられて、マチルダが私の家にやってきた。

「これから、あとどのくらいになるか分かりませんが、よろしくお願いしまーす!」

 マチルダはピシッと気を付けの姿勢になると、軽く頭を下げる。

「ああ。ウチの家は見ての通り、護衛も付いている軍人の家だが。
 礼儀作法までうるさく言うつもりはないから気にしなくていいよ。」
「いえ。これは一応、一族の作法で。」
「ふむ。そっちの家のしきたりにまで、どうこう言うつもりもないよ。
 とりあえずだ。ウチの娘と、お世話になるから、これからもよろしくね。」
「はーい。」

 という訳で。マチルダが私の家に護衛付きで住むことになったのだった。

 ・・・・・・。

「ねえねえ、リリーシャ、リリーシャのパパって、本当に紳士でモフモフなのね!」

 マチルダの部屋は空き部屋に入って貰ったが。さっそく私の部屋にやってきたマチルダはパパについて意気込んで話していた。

「だから言ったでしょ。紳士でモフモフのパパだって。」
「うん。しかも軍人だから体も大きいのね~。いいな~。大きいクマさんみたい。」
「まあ、パパを見てそう思うのは自由よ。私のパパだけどね。」

 マチルダまでパパを褒めているのを聞いて悪い気がしない私。

「そういえば、リリーシャっていつごろからパパと暮らしているの?」
「いつ頃って……ちょっと覚えてないわね。気づいたらパパと暮らしていたわ。」
「へー。それじゃあ、随分小さい頃から、もう親子だったんだ。」
「うん。その頃からパパのモフモフが気に入っていたみたいで。
 抱っこしたら喜んで寝ちゃうから。常に抱っこしてないと泣き出すから大変だったって。」
「パパって軍人よね。育児休暇ってあったの?」
「そこまでは知らないわよ。」
「ふーん。」

 今日はそれだけ、マチルダと話したら、マチルダは興味が変わったのか別の話をしてきたのだった。

 ・・・・・・。

「リリーシャのなだめ方について知りたい?」
「あ、はい。今度からリリーシャと住むことになったじゃないですか。
 だから何か、リリーシャと喧嘩することになっても。
 長引かないコツとか教えて貰えないかなって。」

 その晩、リリーシャが風呂に入っている間、マチルダとリリーシャのパパ……アルコット・アルバーンが二人きりでコーヒーを飲みながら会話をしていた。

「コツか、コツ……ううん。リリーシャは子供の頃から私の毛並みを気に入っていて。
 それで抱っこすると機嫌よくなるぐらいしか身に覚えがなくて。」
「そこまでモフモフなんですか。」
「ふふ。抱っこされてみるかい?」
「うーん、リリーシャにヤキモチ焼かれないかしら。」
「はは。バレないように二人だけの秘密にしようか。」
「はいっ。それなら喜んで。……うわ。」

 アルコットにハグという形で抱っこされたマチルダだが、そのつやつやした、太い毛並みもだが、厚みのある体でも柔らかい筋肉で、とっても抱き……正確には抱かれ心地が良かった。

「あ、すごい……このまま寝られそう。」
「まあ、それは止めておこうかな。リリーシャが許してくれなさそうだ。」
「そうですね。知らなかった……こんなにモフモフなんですね。」
「ふふふ、最初に気付いたのはリリーシャなんだよ。
 それっきり、毛並みの手入れは欠かさずしてくれてね。
 私も気づいたらスタイルに気を回すようにまでなっていた。」
「へー。リリーシャなんですね。」
「ああ。あれは私の任務時の事でね。リリーシャを貰うと決めた時の事だ。」
「そんなに遡るんですか。」
「ああ。その頃の私はもっと野性的で、気が荒くて、まあ、軍人だったからそうだったんだろうな。
 今より比べ物にならない程、突っ張っていた時の事だ。」
「へー。ワイルドでいいですね!」
「ははは。ありがとう。それで任務を済ませたとき。そこに子供がいたんだ。」
「あ……リリーシャの事ですか?」
「そう。まずは身寄りを探すためにだろう。
 『お嬢ちゃん、付いてこられるかい?』と私が聞いたんだ。そうしたらね。
 『抱っこしてくれなきゃ歩けない!』ってぐずり始めてね。」
「うわー。かわいいなー、リリーシャ。」

 リリーシャの前では話せないようなことを二人は話していた。

「それで。初めてだったよ。人間の女の子を抱っこして。いきなり泣き出したと思ったら。
 急に電池が切れたように寝始めて。私の毛並みにスリスリし始めたんだ。」
「へー。懐いちゃったんですね。」
「そう。それでかな。私でも、人間の女の子を泣き止ませられたんだと思ったのは。
 それまで別人種で、しかも女子供に好かれる自分なんてイメージも出来なかった。」
「あら。パパの心の氷を子供のリリーシャが溶かしたんですね。」
「それでかな。この子に身寄りがないと知って、私が育てようと思ったのは。
 休暇を取って、育てるのは大変だったが……。精霊装置のお陰で命拾いした印象だ。」
「パパも命の危険を感じるほど、子育てって大変なんですね。」
「あれは大変というか、子供の死を意識すると自分まで死んだような気持ちになる事の年単位での連続だな。
 正直に言っていいなら今もあるから親というのは子に対しては、一生、そう思うのかもしれない。」
「うへえー。あ、そうだ。」
「どうしたんだい?」
「私も実家のパパに、久しぶりに連絡入れてみます。多分……出るのはママだと思いますが。」
「ああ。行っておいで。」

 マチルダは小型の通信用タブレットを持って、部屋の外に出て行った。
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