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サーチェ嬢にベタ惚れ
しおりを挟むなぜ、私が「お猫様」扱いを受けるのかもすぐにわかった。
うん、あんまりわかりたくはなかったかも‥
ナーバン様は「サーチェ嬢」にベタ惚れだったのだ。
だからこそ、サーチェ嬢の化身である猫の私も大切にしているそうだ。
そもそも化身ではありませんよ。
当事者の私が他人事のように話しているが‥
これにも理由がある。
ナーバン様のお屋敷に来てから毎晩「サーチェ嬢」がどれだけ素晴らしい女性なのかを熱く語られた。
これはなんの罰ゲームですかというくらい恥ずかしい。
私のコンプレックスですら褒めちぎられて倒れそうになった。
耳を塞ぎたいけど、猫では無理だった。
恥ずかしい。
痛すぎる。
それは誰の事言ってるのかと聞き返したい。
もう他人事レベルの話で全く現実味がないのも仕方ないだろう。
こんな風に人から好かれた事があっただろうか。
まっすぐ見つめられる事があっただろうか。
ナーバン様はいつか私と結ばれたいと夢見ていたそうだ。
そんなベタ惚れの「サーチェ嬢」から異動の希望があると知り、ナーバン様はショックを受けた事を何度も話す。
本当にショックだったのだろう‥
泣きそうな顔をしている。
ナーバン様は異動の拒否をしてから、気をつけて私の様子を見ると自分は怯えられている事に気付いた。
それまでは気づかなかったのかと思ったが、私と一緒なのが嬉しくて舞い上がっていたらしい。
あの怖さはニヤけている顔を私に見せたくなくて、しかめ面を作っていたと告白された。
めちゃくちゃ逆効果ですよ。
少なくとも私はメチャクチャ怖くて避けまくってましたから。
ナーバン様がこんなに表情が豊かな人だと初めて知った。
怖がりすぎて全く相手を知ろうとしていなかった。
「サーチェ嬢と仲良く話すにはどうしたら良いだろうか?」
真剣に猫に相談している。
相談相手は人間にするべきだと思いますよ。
「ニャー」
睨まなければ大丈夫。
一応猫語で返答。
最初は嬉し恥ずかし、びっくりな思いで聞いていたが、繰り返されすぎてもう返答も適当になるのも許してほしい。
毎晩ナーバン様のベットの中で、熱い想いを語られ、どうしたら良いのかを聞かれる。
そう、ベッドの中で語られるのだ。
ここに来てから毎晩、一緒に寝ている。
猫の私と一線を越える‥訳もなく、ただ寝ているだけだ。
最初の日、一緒に寝るのは断固として反対していた。
引っ掻かないよう気をつけながら暴れた。
しばらく粘ったが、ナーバン様のあまりの寂しそうな顔を見て押し切られた。
ナーバン様の憂いの顔に弱い。
そこで初めて「サーチェ嬢」ベタ惚れの語らいを聞く事になる。
それにしても‥
ナーバン様は公爵だ。
それにも関わらず、身分の差など全く気にしていない。
綺麗な貴族の女の人だって選び放題のはずなのに、なんで私なんですかと聞きたい。
私が聞いたわけでもないのにナーバン様はその答えを返してくれる。
「サーチェ嬢は飾らない所がいいんだ。」
地味で目立たない私を好きだと言ってくれるようで嬉しかった。
王城の試験に採用される事ばかり考えてきた私はおしゃれを楽しんだり、遊んだりした事がなかったガリ勉だ。
そのおかげで今があるから後悔はしていないが、周りのキラキラしている女の人達を見ると、少し悲しくなる。
結婚ももう無理かもと諦めていた。
そんな私を女として見てくれる人がいたのは正直嬉しい。
たとえ、猫にもウットリするおかしな人でもだ。
今日もナーバン様の隣で話を聞いている。
同じベットではあるが、ナーバン様と抱き合って寝ているわけではない。
ナーバン様の横で丸まって寝ているだけだが、側にいる安らぎが日に日に大きくなっていく。
チュッチュッと全身に落とされるキスもだんだん気にならなくなっていた。
でも、もう明日で休みは終わりだ。
人間に戻らないと‥
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