【完結】猫になったら怖い上司の愛に気付きました

秘密はバレる

「サーチェ嬢が行方不明？いつからだ！実家で休暇中のはずだろう！」
ナーバン様が怒鳴っている。

ナーバン様が休みの日だったため、バール先輩はわざわざ報告しにきていた。
部下の一大事だ。
休み明けまで待てないという緊急事態として対応していた。

ナーバン様の圧にやられてバール先輩は縮こまっている。
怖すぎる。
報告だけするとそそくさと退散する。
この場では正解の対応だろう。

あぁ、バレてしまった。

今日で休みが終わるという日に私がいないと訪ねてきていた母が騒ぎ出したのだ。

実家で過ごすと1週間休みをもらっていたのに、実家に帰っていない事に皆が気付けば‥
そりゃ大騒ぎになるよね。

どうしよう。

「サーチェ嬢の足取りを追え。うちの私兵を全て出して調べろ！金ならいくら使ってもいい。足りなければ雇え。」

「はっ、承知しました。」
私兵団長が返事をして飛び出す。
っか、家に兵団があるっておかしいでしょ。

「あとは王城の兵団の方にも調査の依頼をかけて、諜報部もいれたらよいか。」
ブツブツいうナーバン様。

えぇ！何で？
平民一人いなくなっただけで国挙げて探すの？
そもそも、そんな権限あなたにあるの？

公爵様の婚約者の行方不明なら当然だと。
いやいや、いつから私はあなたの婚約者になったのですか！

ナーバン様の焦りと怒りはおさまらない。
そんなことされたら大騒ぎどころの騒ぎじゃない。
私がしている事も話さないといけなくなる。
まずいなんてものじゃない。

「ニャー！！」
やめてと叫んでも鳴き声になってしまう。

「サーチェも心配なのか？大丈夫、サーチェ嬢はちゃんと探すからな。」
私の必死な鳴き声にナーバン様が反応して頭をなでた。

違う！！
探すのはやめて！
ここにいるから。

アミルダから緊急時の指示も受けていた。
アミルダが戻さなくても自分でも元に戻れる方法は教えてくれていたのだ。

ただ‥
術をかけている者と違う者が解除すると解除が中途半端になってしまい、副作用がでるから緊急時以外はしないでねと念押しをされていた。

どうしよう。
これは私にとっての緊急時だ。

国の機関なんか使われて探されて、真実が明るみに出れば下手したら首になる。
運が良くてもどっか遠くに飛ばされるだろう。

ナーバン様も外行きの服に着替えている。
どこに何しに行くの？

やめて！

猫のままじゃ、止めれない。

アミルダに教えてもらった呪文を唱える。

猫になる時と同じ光に包まれる。

外に飛び出して行こうとしていたナーバン様が振り返る。

「サーチェ嬢？」
ナーバン様は驚いた表情でつぶやいた。

「はい‥すいません」
ナーバン様の顔を見る勇気はなくて下を向いてしまう。

「どういう事だ？」

私に質問したというより自分自身に問いかけたような小さな声だった。

なんと言って良いのかわからず、私は黙っていた。

「サーチェ嬢とサーチェは同じ？」

ナーバン様は私から聞かなくても、真実にたどり着いてしまった。

そりゃ、そうだろう。
完全に元に戻れていなくて猫耳とシッポが人間の私から生えているのだから。