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「とりあえず、その元主治医をここまで連れてきてくれ。」
クリストファーはそう指示を出す。

元主治医を呼び出せば、めんどくさい事になりそう。
クリストファーの勘はそう言っている。
こういう時の勘は外れた事がなかった。

そう思うが、領主の解毒のために避けては通れないのも間違いなく‥
仕方なく元主治医を呼び出す事にしたのだ。

ミルアージュはまだ何かを考えているようで、あごに手を添えて黙っている。
このミルアージュの癖を見てさらにクリストファーは憂鬱になった。

ミルアージュの考え込む時の癖だから。
嫌な予感がしているのはクリストファーだけではなくミルアージュもだ。

「ミア、何を考えている?」

クリストファーがミルアージュに声をかけると視線をクリストファーに向けた。

「クリス‥領主が死んで1番得をするのは領主代理よね?だけど、ピンとこないのよ。」

「ああ、それには私も同感だ。」

「ルービオを領民に殺させようとしたり、主治医を殺しもせず強制労働にするとか、やっている事は怪しさしかない行き当たりばったりの行動なのに、毒の選定とか摂取方法とか計画性もある。」

錯乱している様にみえ、証拠が残らない毒を選び、領主や執事たちの疑いをかけられないように毒を摂取させる。
それも体調が少しずつ悪くなる様に毒の量も調整しながら‥

毒の専門家であるミルアージュも毒と疑ってかからなければ、見つけられなかったかもしれないくらい時間をかけて準備された犯行だ。

同一人物が考えた筋書きとは思えないくらいの計画性の良さとずさんさがある。

領主代理も思い出しながらクリストファーも頷く。

「黒幕がいるとして領主代理の愚かさも計画に入れていたのだろうか?私ならあの者が勝手に動けないようにする所まで計画に入れるが‥」

「そうなのよ。それほど用意周到に準備できる者が領主代理の行動が読めないわけがない。なのにどうして放置したのかしら?」

「放置したのではなくて、あの領主代理の行動すら計画だとしたらどうだ?」

「そう考えるのが妥協だけど、その理由がわからないのよ。」

領主代理が自滅してくれる事を願った?
領主が亡くなり、領主代理の事件が公に出れば確実に死刑が言い渡される。
それが狙いだったのか?

領主、ルービオ、領主代理が皆亡くなればこの家門は断絶し、新たな領主がこの地を治める。

家門を恨む者の復讐?
それとも断絶に伴い、利を得る者の犯行?

ハァとクリストファーがため息をつく。
この事件でミルアージュとの新婚旅行の日程が潰れてしまう事が確実的になってきた。

「主治医から新たな情報を得られればいいがな‥」

「そうね‥」

新たな真相に辿り着くのにどのくらいかかるのか。

主治医が真実を知っていてすぐに告白してくれる。
クリストファーは甘すぎる期待に苦笑いした。

王太子が難しい顔をした後に笑う。

元々恐れられていたクリストファーだっただけに、クリストファーの苦笑いはその場にいた者たちを凍りつかせた。


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