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結局ミルアージュはマカラックと城内を見て回っても領主を見つけられなかった。

「城主はこの城にはいないのか?」
マカラックは険しい顔でミルアージュに聞く。

「‥‥」
ミルアージュは無言で考え込んでいた。

この城に領主がいない?
そんなバカな‥
もう手遅れだった?
いや、死んでたら王城に真っ先に報告が入るはず。

「まさか‥」
ミルアージュの顔はみるみる険しくなった。

「マカラック様、最後に地下を見ても良いでしょうか?」
ミルアージュの顔の険しさから事態を悟ったマカラックはすぐに「わかった」と返事をした。

ルービオの時はあからさまに毒物を使った。
領主の息子が亡くなっても届出は必要ないし、調べられる危険性は少ない。

だが、領主の死は別だ。
亡くなればその日中に王城への届出が必要となる。
怪しい点があれば往生からいきなり調査が入り、領側はそれを拒否する事もできない。

それを恐れてあからさまな毒は使わず、病死を狙っていたはずだ。

そもそも部屋で死を待っているという前提が間違っているとしたら‥
亡くなる日を誤魔化すのはできなくても、どこで亡くなるのかはいくらでも偽装ができる‥

マカラックの力を利用し、兵に見つからずに地下室に入ったミルアージュ達はカビ臭い地下牢に人が数人入れられているのを見た。

「見つからないはずだ。まさか地下牢に入れられてるなんて思わないな。」

床に倒れている男性の服装は明らかにこの部屋にそぐわない立派なものだった。
その横で執事とメイドと思われる人物が涙を流していて、メイドは倒れている男性の手を握って声をかけている。

「旦那様、しっかりしてください。ここで死んではアドルフ様の思うがままになってしまいます。ずっとそれだけは避けたいと言っていたではありませんか。」

倒れている男性からの返事はない。
ずっと声をかけていたのだろう。
メイドと思われる彼女の声は掠れている。

「マカラック様、あの中に私を入れてしばらく兵から見えなくできませんか?」

「できなくはないが、5分が限界だな。」

「十分です。お願いします。」

マカラックはミルアージュの手を握り、そのまま地下牢の中に瞬間移動した。

「誰だ!」

急に人が2人地下牢内に現れ、執事とメイドは目を大きく見開いた後、主人の前に出た守ろうとした。

敵かどうかもわからない中、武器も何もなくただ身体を張った2人を見てミルアージュは熱いものが込み上げてきた。

「私はあなた方の敵ではありません。ルービオと協力関係にある者です。」

ミルアージュはスカートを持ち、正式に挨拶をした。
こんな地下牢にはそぐわない優雅なミルアージュの動きに執事とメイドは目を奪われた。

「ルービオ様の?」
知った名前が出て来て少し警戒を解いたように見えたのをミルアージュは見逃さなかった。

「そうです。そして私は医者です。ご領主様の状態をみさせてもらえませんか?」

ミルアージュの言葉にメイドと執事はお互いを見た。

執事は言う。
「アドルフ様側の人には見えない。」

「ですが、領様に何かあれば‥!」

「もうアドルフ様の計画は最終段階まで進んでいるはずだ。今更、我々を騙して何になる?」

執事のその言葉でメイドは頷き領主から身を引いた。

「ありがとう。」
ミルアージュはそんな2人にお礼を言った後、領主に近づいた。

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