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「何をする!お前達はそこにいるルービオの仲間なのか?」
剣を抜いている衛兵がクリストファーに怒鳴る。
クリストファーに仲間の手の骨を折られ、敵として判断されたようだ。
「ルービオ?何を言っている?私が怒っているのは別だ。」
冷静だといいながら
怒っていると自分で言ってるし…
クリストファーを止めるのを早々に諦めたミルアージュは衛兵達をクリストファーに任せ、ルービオと呼ばれる少年の元に近寄った。
衛兵達の注意はクリストファーに向いており、ルービオに近づいてもミルアージュを止める者はいなかった。
ルービオと呼ばれる少年は意識を失くしているらしくミルアージュが手を触っても反応しなかった。
呼吸は浅め、脈は弱い。
顔色もおかしいし、四肢も小さく痙攣している。
口元には無理やり何かを飲ませた跡も残っていた。
何かしらの薬か毒が使用された可能性が大きい。
それが医者としてのミルアージュの診断だった。
口元に顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
少し甘酸っぱい匂いがした。
それはミルアージュもよく知っている匂いだった。
「ミア、何してる!」
クリストファーに向いていた衛兵がその言葉で一斉にミルアージュとルービオをみた。
側から見たらキスをしているように見えるなんて思いもしないミルアージュはため息をついた。
「もう、みんな気づいたじゃない。まぁ、いいわ。クリス解毒剤出して。」
「解毒剤?大丈夫なのか?」
クリストファーが怪訝そうな顔をした。
周りで私達を見ていた領民達にも動揺が走る。
「そうね、即死する毒じゃないから解毒剤ですぐに意識を取り戻すわ。」
毒殺じゃなくて動けなくさせただけ。
あくまで領民に殺させる方法を取るなんて…
悪質もいいところ。
領民達にとってこのルービオは心の拠り所なのだろうか?
皆に殺させる事で領民達の心を折ろうとしたって事よね。
心配そうに周りを囲んでいる領民達をミルアージュはチラッとみた。
ミルアージュがルービオを診ているのに気づいた衛兵達は、クリストファーから離れてミルアージュ達の方に向かってくる。
ミルアージュは先ほど拾ったナイフを向かってきた衛兵に向けて投げた。
足にそのナイフが刺さり、衛兵の1人が倒れる。
衛兵が怯んだ隙にクリストファーがミルアージュと衛兵の間に入った。
クリストファーが首にかけていたペンダントを外して後ろにいるミルアージュに投げた。
「ほら、解毒剤だ。」
クリストファーが投げたペンダントをミルアージュは受け取った。
「ちゃんと返せよ。ミアからの初めてのプレゼントなんのだから。」
クリストファーも王族であり、ミルアージュほどではないが、ある程度は毒への耐性もある。
そのクリストファーが持ち歩いている解毒剤。
主に媚薬を盛られた時に使用するのだ。
クリストファーと体の関係ができてしまえば、高位貴族は側妃に、貴族位にいる者なら妾になる。
クリストファーの意思があろうとなかろうと体の関係はその影響が大きい。
だからこそ、時々媚薬を盛られていたクリストファーは解毒剤を常に持ち歩くようになった。
ペンダントには薬を入れられる小さな空間があり、首からかけられる。
まぁ、解毒剤を持ち歩いているというよりもミルアージュからの贈り物であるペンダントを肌身離さず持っていただけ。
クリストファーの誕生日に解毒剤入りのペンダントを渡したと知った侍女たちはドン引きしていたが、当のクリストファーはとても喜んだ。
「生まれてきてよかった。」と目が潤んでいた。
いや、そこまで喜ぶなら…
皆に解毒剤入りのペンダントを自慢して回るとわかっていたなら違うものを渡したのに。
ミルアージュは皆からの冷たい視線をしばらく浴びた事を忘れてはいない。
まぁ、媚薬を盛っても無駄ということがわかり、そんな事件は無くなったので結果的にはよかったのだが。
そのペンダントが今ミルアージュの手に戻ってきた。
今、目の前のルービオという少年を救えるという喜びの反面、妃としての至らなさを思い知らされた初めてのプレゼントであるペンダントを見つめて苦笑いをした。
剣を抜いている衛兵がクリストファーに怒鳴る。
クリストファーに仲間の手の骨を折られ、敵として判断されたようだ。
「ルービオ?何を言っている?私が怒っているのは別だ。」
冷静だといいながら
怒っていると自分で言ってるし…
クリストファーを止めるのを早々に諦めたミルアージュは衛兵達をクリストファーに任せ、ルービオと呼ばれる少年の元に近寄った。
衛兵達の注意はクリストファーに向いており、ルービオに近づいてもミルアージュを止める者はいなかった。
ルービオと呼ばれる少年は意識を失くしているらしくミルアージュが手を触っても反応しなかった。
呼吸は浅め、脈は弱い。
顔色もおかしいし、四肢も小さく痙攣している。
口元には無理やり何かを飲ませた跡も残っていた。
何かしらの薬か毒が使用された可能性が大きい。
それが医者としてのミルアージュの診断だった。
口元に顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
少し甘酸っぱい匂いがした。
それはミルアージュもよく知っている匂いだった。
「ミア、何してる!」
クリストファーに向いていた衛兵がその言葉で一斉にミルアージュとルービオをみた。
側から見たらキスをしているように見えるなんて思いもしないミルアージュはため息をついた。
「もう、みんな気づいたじゃない。まぁ、いいわ。クリス解毒剤出して。」
「解毒剤?大丈夫なのか?」
クリストファーが怪訝そうな顔をした。
周りで私達を見ていた領民達にも動揺が走る。
「そうね、即死する毒じゃないから解毒剤ですぐに意識を取り戻すわ。」
毒殺じゃなくて動けなくさせただけ。
あくまで領民に殺させる方法を取るなんて…
悪質もいいところ。
領民達にとってこのルービオは心の拠り所なのだろうか?
皆に殺させる事で領民達の心を折ろうとしたって事よね。
心配そうに周りを囲んでいる領民達をミルアージュはチラッとみた。
ミルアージュがルービオを診ているのに気づいた衛兵達は、クリストファーから離れてミルアージュ達の方に向かってくる。
ミルアージュは先ほど拾ったナイフを向かってきた衛兵に向けて投げた。
足にそのナイフが刺さり、衛兵の1人が倒れる。
衛兵が怯んだ隙にクリストファーがミルアージュと衛兵の間に入った。
クリストファーが首にかけていたペンダントを外して後ろにいるミルアージュに投げた。
「ほら、解毒剤だ。」
クリストファーが投げたペンダントをミルアージュは受け取った。
「ちゃんと返せよ。ミアからの初めてのプレゼントなんのだから。」
クリストファーも王族であり、ミルアージュほどではないが、ある程度は毒への耐性もある。
そのクリストファーが持ち歩いている解毒剤。
主に媚薬を盛られた時に使用するのだ。
クリストファーと体の関係ができてしまえば、高位貴族は側妃に、貴族位にいる者なら妾になる。
クリストファーの意思があろうとなかろうと体の関係はその影響が大きい。
だからこそ、時々媚薬を盛られていたクリストファーは解毒剤を常に持ち歩くようになった。
ペンダントには薬を入れられる小さな空間があり、首からかけられる。
まぁ、解毒剤を持ち歩いているというよりもミルアージュからの贈り物であるペンダントを肌身離さず持っていただけ。
クリストファーの誕生日に解毒剤入りのペンダントを渡したと知った侍女たちはドン引きしていたが、当のクリストファーはとても喜んだ。
「生まれてきてよかった。」と目が潤んでいた。
いや、そこまで喜ぶなら…
皆に解毒剤入りのペンダントを自慢して回るとわかっていたなら違うものを渡したのに。
ミルアージュは皆からの冷たい視線をしばらく浴びた事を忘れてはいない。
まぁ、媚薬を盛っても無駄ということがわかり、そんな事件は無くなったので結果的にはよかったのだが。
そのペンダントが今ミルアージュの手に戻ってきた。
今、目の前のルービオという少年を救えるという喜びの反面、妃としての至らなさを思い知らされた初めてのプレゼントであるペンダントを見つめて苦笑いをした。
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