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ルーマン国王からの書状を見た瞬間にクリストファーは上機嫌になった。
それがミルアージュにも書状を届けた使者にもすぐにわかった。
「どうしたの、何かいい事でも書いてあった?」
ミルアージュがクリストファーの後ろから書状を覗き込んだ。
「父上にしてはいい事をする。なんか裏がありそうだが、こんな機会は滅多にない。ありがたく受け取るとしよう。」
クリストファーはミルアージュにルーマン国王からの書状を渡した。
「えっ、戻らなくてもいい?おかしいでしょう。国への報告が優先でしょう?」
ミルアージュはクリストファーならともかく常識人であるルーマン国王がこのまま新婚旅行へ行くようにいうのに違和感があった。
「クリス、あなたルーマン国王を脅した?」
ミルアージュはジトッとクリストファーを睨んだ。
「父上を脅して新婚旅行に行くなんてミアに怒られそうな事する訳ないだろう!」
失敬なと言わんばかりにクリストファーは抗議した。
確かに…
こんなすぐに疑われる裏工作をクリストファーがするとは思えない。
それなら本当にルーマン国王の言葉なの?
まだ半信半疑のミルアージュはクリストファーから視線を動かさない。
「私が疑われてるのに何を見ている?どうせ、父上からミアへの書状も預かっているのだろう?さっさと出せ。」
クリストファーはミルアージュに疑われている今の現状が受け入れ難く、しびれを切らして使者に言う。
ルーマン国王とクリストファーは親子だ。
性格は似ていないように見えるが、考え方は似ている。
ミアがそのままルーマン国王の言葉として受け取る訳がない。
それがわからない父上じゃない。
それならば、ミアを納得させるものを持たせているはずだ。
「それは…」
使者はクリストファーの命令に従う様子がない。
「国王からどんな命令を受けている?」
クリストファーは聞いた。
王太子の命に従わないのならルーマン国王の命令に従っているとみて間違いない。
「王太子のいないところでミルアージュ様に渡すようにと。」
クリストファーはチッと舌打ちをした。
私に見られたら困る事が書いてあるのだ。
私に言わないところをみるとミアへの実害がある内容が書かれているのだろう。
また、貴族たちがミアに攻撃を仕掛けようとしているとか?
クリストファーは使者に殺気を纏った冷たい視線を向けた。
使者は一気に青ざめ手はプルプルと震えている。
「クリス、使者を脅すのはやめて。敵じゃないのよ。」
ミルアージュは呆れ返った。
「ルーマン国王の命令を私やあなたが無視する訳にはいかないわ。はい、クリスはこの部屋から出て。」
ミルアージュはクリストファーの背中を押して部屋から追い出した。
「はい、もう邪魔者はいないからルーマン国王からの書状を出して。」
「はい。」
使者はまだ青ざめ震えながら、ミルアージュに書状を差し出した。
いくら国王の命令といえど、クリストファー様は次期国王だ。
そんな方の命令に反いてよかったのか。
あれほどの殺気を向けるくらい怒らせたのだ、ただではすまないかもしれない…
そんな事を考え震えている使者をミルアージュはチラッと見た。
「気にしないでいいわよ、クリスはあんな事で罰を与えたりしないから。」
書状をみながら使者に話しかけた。
クリストファーがキレるのはミルアージュにとって見慣れた光景でいちいち気にするものではない。
アビーナルも同じように見流すだろう。
だが、ミルアージュが絡んでいない時のクリストファーは感情をむき出しにして誰かに殺気を向けたり、攻撃はしない。
いや、興味がないというのが正しいかもしれない。
クリストファーにとってミルアージュ以外の事はどうでもいいのだから。
だから、こうやってクリストファーがキレれば、必要以上にみんな怯えるのだ。
「はい。お気遣いありがとうございます。」
使者はミルアージュに頭を下げた。
そう、国王からの書状にも書かれていた。
『次期国王であるクリストファーの本性を皆に晒し、王城で大量虐殺を引き起こす訳にはいかない』
ミルアージュは小さくため息をつく。
そんな大量虐殺する恐れのある者が次期国王で良いのでしょうか?
その問いにはきっと誰も答えられないだろう。
それがミルアージュにも書状を届けた使者にもすぐにわかった。
「どうしたの、何かいい事でも書いてあった?」
ミルアージュがクリストファーの後ろから書状を覗き込んだ。
「父上にしてはいい事をする。なんか裏がありそうだが、こんな機会は滅多にない。ありがたく受け取るとしよう。」
クリストファーはミルアージュにルーマン国王からの書状を渡した。
「えっ、戻らなくてもいい?おかしいでしょう。国への報告が優先でしょう?」
ミルアージュはクリストファーならともかく常識人であるルーマン国王がこのまま新婚旅行へ行くようにいうのに違和感があった。
「クリス、あなたルーマン国王を脅した?」
ミルアージュはジトッとクリストファーを睨んだ。
「父上を脅して新婚旅行に行くなんてミアに怒られそうな事する訳ないだろう!」
失敬なと言わんばかりにクリストファーは抗議した。
確かに…
こんなすぐに疑われる裏工作をクリストファーがするとは思えない。
それなら本当にルーマン国王の言葉なの?
まだ半信半疑のミルアージュはクリストファーから視線を動かさない。
「私が疑われてるのに何を見ている?どうせ、父上からミアへの書状も預かっているのだろう?さっさと出せ。」
クリストファーはミルアージュに疑われている今の現状が受け入れ難く、しびれを切らして使者に言う。
ルーマン国王とクリストファーは親子だ。
性格は似ていないように見えるが、考え方は似ている。
ミアがそのままルーマン国王の言葉として受け取る訳がない。
それがわからない父上じゃない。
それならば、ミアを納得させるものを持たせているはずだ。
「それは…」
使者はクリストファーの命令に従う様子がない。
「国王からどんな命令を受けている?」
クリストファーは聞いた。
王太子の命に従わないのならルーマン国王の命令に従っているとみて間違いない。
「王太子のいないところでミルアージュ様に渡すようにと。」
クリストファーはチッと舌打ちをした。
私に見られたら困る事が書いてあるのだ。
私に言わないところをみるとミアへの実害がある内容が書かれているのだろう。
また、貴族たちがミアに攻撃を仕掛けようとしているとか?
クリストファーは使者に殺気を纏った冷たい視線を向けた。
使者は一気に青ざめ手はプルプルと震えている。
「クリス、使者を脅すのはやめて。敵じゃないのよ。」
ミルアージュは呆れ返った。
「ルーマン国王の命令を私やあなたが無視する訳にはいかないわ。はい、クリスはこの部屋から出て。」
ミルアージュはクリストファーの背中を押して部屋から追い出した。
「はい、もう邪魔者はいないからルーマン国王からの書状を出して。」
「はい。」
使者はまだ青ざめ震えながら、ミルアージュに書状を差し出した。
いくら国王の命令といえど、クリストファー様は次期国王だ。
そんな方の命令に反いてよかったのか。
あれほどの殺気を向けるくらい怒らせたのだ、ただではすまないかもしれない…
そんな事を考え震えている使者をミルアージュはチラッと見た。
「気にしないでいいわよ、クリスはあんな事で罰を与えたりしないから。」
書状をみながら使者に話しかけた。
クリストファーがキレるのはミルアージュにとって見慣れた光景でいちいち気にするものではない。
アビーナルも同じように見流すだろう。
だが、ミルアージュが絡んでいない時のクリストファーは感情をむき出しにして誰かに殺気を向けたり、攻撃はしない。
いや、興味がないというのが正しいかもしれない。
クリストファーにとってミルアージュ以外の事はどうでもいいのだから。
だから、こうやってクリストファーがキレれば、必要以上にみんな怯えるのだ。
「はい。お気遣いありがとうございます。」
使者はミルアージュに頭を下げた。
そう、国王からの書状にも書かれていた。
『次期国王であるクリストファーの本性を皆に晒し、王城で大量虐殺を引き起こす訳にはいかない』
ミルアージュは小さくため息をつく。
そんな大量虐殺する恐れのある者が次期国王で良いのでしょうか?
その問いにはきっと誰も答えられないだろう。
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