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「クリス、空気読んで…」
ミルアージュは断罪の場であるにも関わらず、クリストファーが機嫌良くニコニコ笑う表情に若干ひいていた。

「いや、もう私の目的は達成された訳だし、満足だ。レンドランド王は名君だ。」

さっきまで甘たれ坊主って言っていたのに…ミルアージュは呆れていた。
レンドランドを赤ちゃんの頃から知っているクリストファーだからこそ、言える言葉だろう。

クリストファーはミルアージュの名誉さえ挽回できればそれで良かった。
アンロックはもちろん、ルーマンの国益など二の次なのだ。

「もう帰ってもいいんじゃないか?」
クリストファーはソワソワとミルアージュに話しかけた。
やっと二人きりになるチャンスなのだ。
この機会を逃すわけにはいかないとクリストファーは思っていた。

「クリス、少し黙って!向こうの話が聞こえないわ。」
クリストファーが口を開いた瞬間にミルアージュは手で静止した。



「レンドランド王、どうして私を疑うのですか?」
外務大臣の大きな声が聞こえてきた。

「ではなぜレーグルトとの同盟を押したのか説明してもらおうか。」
レンドランドは外務大臣に聞き返した。

「それはルーマンの弱体化はアンロックにリスクがあります。それならば、力があるレーグルトと同盟を結ぶのは当たり前ではないですか!」

「あぁ、あの時そう言っていたな。ではどうしてルーマンが弱体化しているとわかった?」
外務大臣の感情的な大声と対照的にレンドランドは静かに聞いた。

「国軍をかなり連れていたにも関わらず、ルーマン国王が攫われ監禁されるなどあり得ない事態でしょう?詳細な報告を見ましたよね?」

「そう、それが謎だった。どうしてそんな詳細な内容を入手する事ができたのか。国を揺るがす事態だ、ルーマン国内ですら発表もされず、箝口令が引かれていた。その当時同盟国であり、探りを入れていたわけではないだろう?」

「それは…」
外務大臣が言い訳する前にレンドランドが言葉を重ねる。

「どこから入手した報告だったのか説明してもらおう。ちなみに攫われた場所はレンラグスではなくレーグルトだそうだぞ。そこまで詳細な報告があるのにどうして肝心なところが違うんだろうな?」

レンドランドからレーグルトと名が出て謁見の間にいた者達からざわつきが起こった。
アンロックでは過去の経緯からレンラグスが自国の敵であると認識している者は多かった。
特にレンラグスからの戦争や暗殺を経験している年配の者にはその傾向は強い。

だから、そんな国に負けるような国との同盟破棄が良い。
そう皆思っていた。

「知っていたのだろう?レーグルトでルーマン国王が拉致監禁されたと。都合が良いように報告を書き換えた。違うか?」

「そんな事は知りません!大体、あれはレーグルトではなくレンラグス第一王子がしでかした事ではないですか!レンラグスの仕業です。」

「そう、ルーマンもレンラグスも第一王子が関わっていた事は黙っていた。どうして知っている?そして、攫われたのはレーグルト国内だった。どうしてレンラグスの仕業だと思った?」

「それは影からの報告で…」

「ではその影から直接話を聞きたい。呼んでもらおうか。」

「今すぐは…外に出ていますので…」
外務大臣はオロオロした様子を見てレンドランドがクスリと笑う。

「では誰か教えてもらおうか?まさか国王の呼び出しを拒否するものはこの国にはいないだろう?」

「…」

「決着がついたかな?レンドランド王は証拠も押さえてただろう。わざわざこんな場を作ったのはミアの為か?」
クリストファーは鼻歌を歌いそうな勢いだ。

「レンドランド…」

流れを見るとレンドランドは全てを掌握していたのだろう。
今まで待ったのはミルアージュの名誉回復の為。

自分が決着をつける。
レンドランドがそう言ったのはアンロックとルーマンの同盟だけではなかった。



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