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領主から出た言葉はミルアージュが一番嫌いなものだ。

人の上に立つ義務を果たさず、税をむしり取り領民がどうなろうと関係ない。
自分の行いを反省もせず他者のせいにする。

弱い者たちを苦しめる。
自分はそれをしても良い人間だと勘違いしている愚か者。

ギリギリとミルアージュの拳が握られるのをクリストファーとアビーナルは見逃さなかった。

これ以上何も喋るな!
そんな念を込めてみるが、領主は興奮しておりミルアージュの怒りなど全く見えていない。

「私は事実を言ったまでだ!まともに税も納められないクズはのたれ死ねばいいん…」

それ以上領主は暴言をいえなかった。
ミルアージュが領主の喉元に剣を突きつけたから。

「黙りなさい。」

領主は無言でゆっくりと両手を上にあげて降参のポーズをする。

「クリス!」
ミルアージュは剣を突きつけたまま、クリストファーを呼んだ。

クリストファーもいきなり振られて驚きはしたが戸惑いながらも「ああ、何だ?」と何とか答えた。

こういう時のミルアージュには逆らってはいけない。
それはクリストファーは身をもって体験している。口出したくない。
だが、今まずい状況である事も理解もしていた。

「領主の権限を今ここで解いて!」

「…いや、それは…きちんと議会を通さないと…」
ルーマンでは王族が独断で領主の解任も身分の剥奪もできない。
議会で承認されて初めて認められる。
貴族の力が強いルーマンでは貴族達の納得なしでは話が進まないのだ。

それはミアも理解しているはず。
なのにそんな要求をするなんて。
何を考えている?
ほんの数秒だったが、クリストファーは頭の中で必死に考えていた。

ミアの意図を読み間違う事は許されない。
ジッとミルアージュを見つめ次の発言を待ったが、ミルアージュは口を開かない。

ミルアージュの言葉を聞いて領主は真っ青な顔をして叫んだ。
「そんな事はできるはずがない!私を守ってくれる貴族達も多い!議会で通るはずがない。」

領主の叫びを聞きミルアージュはクスリと笑う。

「アビーナル、今の言葉を控えているわね?」
ミルアージュはクリストファーの質問には答えずアビーナルに声をかける。
アビーナルはペンを止めた。

「はい、一言一句逃していません。」
アビーナルが静かだと思っていたら書記をしていた。
ミルアージュは書類に目を通して書類を回した。

「ここにいる者達全て証人です。領主の発言に間違いありませんよね?サインもお願いします。」

皆読んでからサインをし、書類を回している。

領主と一緒に来ていた男の一人で書類は止まった。
ジッと見つめた後、なかなかサインをしない。

「早くサインしてくれないかしら?主人の言動の証人なんて嫌かしら?」

ミルアージュは手が止まっているその男を見つめていた。
振る舞いなどを見る限り、彼は貴族であろう。どの家門のものか調べればすぐにわかる。

サインをすれば証言した事になり撤回できない。領主を庇うであろうキュラミールと敵対する恐れがある。
だが、内容は事実であり否定すればこの場で捕まる恐れがある。

どちらを選ぶかしら?
ミルアージュはその男が何を選ぶのかを待った。

「どうかお許しください。主人を裏切れません。」
その男は深々と頭を下げた。
証人になれないのは主人の為と言った。

どちらの主人?領主、キュラミール?
まぁどちらでもよいわ。

「ダミアン、頼んでいた領主に関しての書類を出して。」
ミルアージュに言われてダミアンはいくつかの書類を出してきた。



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