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「ははっ、思いっきり追い出されていたな。」
マカラックはスゥとミルアージュの前に姿を現した。

「マカラック様…全部見ておられたのに。お人が悪いですね。」
ミルアージュは途中からマカラックがいる事に気付いていた。

「まぁ、そういうな。私がいきなり現れる訳にはいかないだろう?」
確かにいきなりマカラックが姿を現わしたら普通驚くだろう。
何もないところにいきなり人が出現するのだから。

「そうですね。マカラック様、また私の調子を見に来てくれたのですか?私なら大丈夫です。最近とても調子が良いのです。」

「そのようだな。」
マカラックはミルアージュの手を握り、優しい微笑みを向けた。

「どういった心境の変化があった?」

「何から話せば良いのでしょうね。ですが、もう何があろうとクリスの側から離れないと決めました。」
そう言ってミルアージュは笑った。

「あなた自身の幸せはそれなんだな。本当に二人は似ているな。」

似た者夫婦…
クリストファー第一優先はミルアージュ。
そしてミルアージュの幸せはクリストファーのそばにいる事。

「私が死ねば…そう思うと怖かったけれど、クリスは私がいないだけでダメなら結論は同じですよね?」

「そうだな…」
あまり交流がないマカラックですらミルアージュへの執着がわかるのだ。
ミルアージュ自身一番よくわかっているのだろう。

ミルアージュはずっと考えた。
今までのこと、これからの事…

皆言っていた。

「自分の幸せも考えろ。」

その意味はよくわからなかった。

クリスの様子を見ながら試すような事もずっと言っていた。
それなのにいつまでも離れられなかった。

私がいないとクリスがダメになる。
そんなの言い訳だ。
自分が離れられないだけ。

そう思った時から体調が良くなった。

そしてアザイルに言われた言葉で気付いた。

「私には迷惑かけられない…ですが、クリストファー様なら迷惑かけてもいいと思われたのでしょう?」

その通りだ。
私の存在はクリスにとって迷惑をかけている。ルーマンにとっても良くない。
そうわかっていたのに…

そしてアンロックとルーマンの同盟破棄…
どう考えても私が原因だ。
それなのに結局はクリスのそばにいることを選んだ。

クリスは何があろうと私を離さない。
全て言い訳だ。

国だ、王族だと言いながら結局は自分の希望を優先している。

そう気づいた時、光っていたブレスレットは完全に消失した。


「もう加護も私の力も必要としないな。幸福を受け入れたミルアージュ殿はもう大丈夫。それは私が保障するよ。安心して幸せになってくれ。国も民もクリストファー殿もそしてあなた自身も。」
マカラックはにっこりと笑った。

前にマカラックから与えられた幸福の感覚。
その時よりもずっとずっとあたたかい感情に包まれている。

「クリストファー殿に早く伝えた方が良いぞ。泣いて喜ぶかもな。」

「まさか、そんな事はないですよ。」
ミルアージュも笑いながらマカラックに返した。

だが、その晩マカラックの言う通りになった。
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