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「クリス、少し話しましょう。」
ミルアージュはクリストファーを落ち着かせようとするが、クリストファーは話ができる状態ではなかった。

「ミア、体調はどうだ?心配していたんだ。もう私から離れないと約束してくれ。お願いだから。」
ミルアージュを抱きしめクリストファーは懇願は止まらない。

「心配をかけてごめんなさい。」
ミルアージュも謝った。

ミルアージュもクリストファーに会ったのは数ヶ月ぶりだ。

会えて嬉しい。
問題も色々とあるが、そう素直に感じる心にミルアージュは従いたいと思った。

だが、話しておくべきことがある。

「クリス、ここに来るからには問題を解決する目処がたったのでしょう?」

ミルアージュはクリストファーが何もなしでここに来ることはないと思っていた。
クリストファーがミルアージュの事をわかっているようにミルアージュもまたクリストファーの性格をよくわかっていた。

「せっかくの再会なのに…」
ブツブツとクリストファーは文句を言うが、すぐに真顔に変わった。

「まだ結果は出ていないが、罠ははった。後はかかるのを待つだけだ。」
クリストファーはもう一度ミルアージュを強く抱きしめた。

「クリス、先に話をしましょう?話が終わったら久しぶりに夫婦水入らずで過ごせるから。」

夫婦水入らずの言葉に反応したクリストファー。
「そうだな。話が終わったら一緒に過ごすと約束したぞ。」

「わかったわ。」

ミルアージュも頷いた。

「じゃあ、さっさと話し終えてミアとの時間を過ごそうか。まず、レンラグスの第一王子は秘密裏に処刑され、それにより第一王子についていたレンラグスの貴族たちが保身のために寝返った。」

「そう…」
レンラグス第一王子を思い出していた。
処刑されても仕方ない罪を犯していたが、ブランの心境を考えるとミルアージュは複雑な気持ちだった。

「その者たちの告発からレーグルトの動きが明らかになった。国王誘拐も今回の暴動を誘導したのも同じ理由だ。ルーマンの弱体化しているのを承知の上でルーマンを侵略するつもりだ。」

「だけど、いくらルーマンが弱体化しているとしてもレーグルトにはそんな力はないでしょう?今なぜそんなバカな事をするの?」

クリストファーはフゥと息を吐いた。
言いたくなさそうにしているが、覚悟を決めたのか言葉を発した。

「ミアに秘密にしてまた逃げられるのが嫌だから話すんだ。誤解はするなよ。わかったな。」

クリストファーはミルアージュに何度も念押しをした。

「アンロックとルーマンが同盟破棄をしただろう。次にアンロックが手を結んだのがレーグルトだった。いや、レーグルトと同盟を結ぶためにルーマンを切ったと言う方が正しいか…」

「なぜ?アンロックが…レーグルトと?対立とまでいかなくてもまともに国交がないのに。いくらルーマンが弱くなったとしてもその後がレーグルトとなんて…アンロックとルーマンは親交もありうまくやっていたわ。レンドランドの妃はあなたの妹よ。急すぎる。」

アンロック王レンドランドと王妃の仲が良い話はミルアージュにも届いていた。

クリストファーはミルアージュを見つめて話し出す気配がない。

その様子を見てミルアージュは気づいてしまった。

「私が原因だったのね…」

「違うといってもすぐにバレるから言うが、ミアが追い出されたためにアンロックに復讐をするのではないかとの噂が流れていたそうだ。ミアが私を利用してアンロックに戦を仕掛けるという戯言を扇動した者たちがいる。」

クリストファーはミルアージュを抱きしめる力が強まった。

「危険因子であるルーマンの弱体化をアンロックに流し、同盟破棄をさせレーグルトとの同盟を議会で可決させた。レンドランド王たちではどうしようもできなかったようだ。」

それはアンロック議会の貴族たちに裏で手を回されていた事を意味していた。

「私がレーグルトとの戦いの指揮をとるのが嫌なのだと思っていたわ。」

「それはもちろんだ。私はミアを危険に晒すつもりはない。」

クリストファーならそうだろう。
だが、アンロック宰相がなぜ出てきたのかがわからなかった。
同盟破棄など伝えに来れば人質になったり、首を切られて送り返えされても不思議ではないのだから。
アンロック宰相がルーマンに来るのは明らかにおかしかった。

「彼もどうしてアンロックに私を連れ戻そうとしているのかわからなかった。宰相は、私がこれ以上アンロックの危険因子に思われないようにしたかったのね。」

全てが繋がった。
私がルーマンの兵を指揮してレーグルトと戦い、しかも勝ってしまえばアンロックでの脅威が大きくなる。

アンロックに戻り大人しくしていれば少なくともそれ以上の貴族たちの反感は買わない。

早くルーマンを潰そうとの動きが加速する。
それをレンドランドも宰相も止めたかったのだ。
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