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「アビーナル、こっちに来てくれ。」
「いや、こっちが先だ。」
ダミアンが在籍する治安部隊の横にある執務室ではアビーナルは引っ張りだこで目も回りそうな忙しさだった。
アビーナルは自分を仕事ができる人間と思っていた。
今の今までは…
仕事内容がわからない訳ではない。
だが、量が多すぎるのと必要なものが何もない状態に困惑していた。
これをミルアージュが一人でこなしていたと思うとアビーナルは驚きしかなかった。
ミルアージュはのんびりお茶を飲みながらアビーナルの足りないところを指摘してくる。
王城と違い話が進まない。
物も知識も人材も何もかも足りない。
アビーナル自身こんな環境で仕事をした事がなく知らなかった。
どれだけ恵まれた環境で仕事をしていたのかを。
そしてミルアージュはアビーナルの不足部分を的確にピンポイントで指摘してくる。
アビーナルの自信というものが粉々になりかけていた。
「ミルアージュ様、王城では手を抜いていたのですか?」
アビーナルはミルアージュを睨む。
「抜いていた訳ではないけど、優秀な人材がいるのに私が出しゃばる訳にはいかない。国の損失にしかならないもの。」
そう王城は専門家が集まって議論をし、色々と融通がきかないところもあるが、役割分担もしっかりされた組織だった。
そこに王太子妃のミルアージュが口を出せば、クリストファーの手前話を合わせてくるものたちがいるのをミルアージュは知っていた。
この領には何もない。
だから、ミルアージュはこの領の者たちに知識を身につけさせようとした。
素人に教えることは自分でするより何倍も時間がかかる。
それをミルアージュは何ヶ月も行なっていたのだ。
「ミルアージュ様は欲張りすぎです。」
「そうね、よく言われる。でもこの街が変わるのを想像したらワクワクしない?」
「そうですね…」
アビーナルはこんなに打ち込んで仕事をした事がなかった。
はっきりいって素人に毛が生えただけのような者たちだが、ミルアージュから必死に学ぼうととしている姿はアビーナルから見ても好感が持てた。
明日の生活がかかっているのだ。
必死にならないわけがない。
街の立て直しを領主ではなく領民主導で行う。
そんなものを目の当たりにするなんて信じられないとアビーナルは心の中で思った。
そんな事は自分なら思いつきもしなかった。
貴族が領地を治めるのが当たり前で領民は守られる人間だけと決めつけていた。
こうやって皆で領の改革を行えば、とても大きな力になる。
たとえ一人一人は小さな力だったとしても。
「フフッ、王城では味わえない達成感を味わってみたくない?」
ミルアージュはアビーナルに笑いかけた。
こういう時のミルアージュは何かを企んでいる。
「どういう意味ですか?」
怪しむようにアビーナルはミルアージュを見た。
「言葉の通りよ。第三部隊が予定通り到着したら味わえないわよね?」
「まぁ、そうでしょうね。」
ミルアージュの身分もばれてしまうし、これ以上ここで仕事も続けられないだろう。
「じゃあ、少し足止めをしましょうか。もちろん、あなたも共犯よね。」
「何をするつもりなのです…」
アビーナルは嫌な予感しかなかった。
「いや、こっちが先だ。」
ダミアンが在籍する治安部隊の横にある執務室ではアビーナルは引っ張りだこで目も回りそうな忙しさだった。
アビーナルは自分を仕事ができる人間と思っていた。
今の今までは…
仕事内容がわからない訳ではない。
だが、量が多すぎるのと必要なものが何もない状態に困惑していた。
これをミルアージュが一人でこなしていたと思うとアビーナルは驚きしかなかった。
ミルアージュはのんびりお茶を飲みながらアビーナルの足りないところを指摘してくる。
王城と違い話が進まない。
物も知識も人材も何もかも足りない。
アビーナル自身こんな環境で仕事をした事がなく知らなかった。
どれだけ恵まれた環境で仕事をしていたのかを。
そしてミルアージュはアビーナルの不足部分を的確にピンポイントで指摘してくる。
アビーナルの自信というものが粉々になりかけていた。
「ミルアージュ様、王城では手を抜いていたのですか?」
アビーナルはミルアージュを睨む。
「抜いていた訳ではないけど、優秀な人材がいるのに私が出しゃばる訳にはいかない。国の損失にしかならないもの。」
そう王城は専門家が集まって議論をし、色々と融通がきかないところもあるが、役割分担もしっかりされた組織だった。
そこに王太子妃のミルアージュが口を出せば、クリストファーの手前話を合わせてくるものたちがいるのをミルアージュは知っていた。
この領には何もない。
だから、ミルアージュはこの領の者たちに知識を身につけさせようとした。
素人に教えることは自分でするより何倍も時間がかかる。
それをミルアージュは何ヶ月も行なっていたのだ。
「ミルアージュ様は欲張りすぎです。」
「そうね、よく言われる。でもこの街が変わるのを想像したらワクワクしない?」
「そうですね…」
アビーナルはこんなに打ち込んで仕事をした事がなかった。
はっきりいって素人に毛が生えただけのような者たちだが、ミルアージュから必死に学ぼうととしている姿はアビーナルから見ても好感が持てた。
明日の生活がかかっているのだ。
必死にならないわけがない。
街の立て直しを領主ではなく領民主導で行う。
そんなものを目の当たりにするなんて信じられないとアビーナルは心の中で思った。
そんな事は自分なら思いつきもしなかった。
貴族が領地を治めるのが当たり前で領民は守られる人間だけと決めつけていた。
こうやって皆で領の改革を行えば、とても大きな力になる。
たとえ一人一人は小さな力だったとしても。
「フフッ、王城では味わえない達成感を味わってみたくない?」
ミルアージュはアビーナルに笑いかけた。
こういう時のミルアージュは何かを企んでいる。
「どういう意味ですか?」
怪しむようにアビーナルはミルアージュを見た。
「言葉の通りよ。第三部隊が予定通り到着したら味わえないわよね?」
「まぁ、そうでしょうね。」
ミルアージュの身分もばれてしまうし、これ以上ここで仕事も続けられないだろう。
「じゃあ、少し足止めをしましょうか。もちろん、あなたも共犯よね。」
「何をするつもりなのです…」
アビーナルは嫌な予感しかなかった。
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