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「ミルアージュ殿、もうこれ以上無理をするな。」
ダミアンと別れてミルアージュはダミアンと出会ったときのことを思い出していた。

そこにマカラックの声がし、部屋の中が明るくなるとマカラックの姿が確認できた。

「マカラック様…すみません。お待たせしてしまいましたね。」
ミルアージュはマカラックに頭を下げた。

「いや、私が勝手についていただけだからそれは気にしなくてもいいが…倒れるのは何度目だ?」
マカラックはミルアージュの体調が心配でならなかった。

「今日はちょっと無理をしただけです。大丈夫。」
ミルアージュの大丈夫は大丈夫じゃない。
それを認めないのは本人だけだ。

「私はミルアージュ殿を任されている者だ。これ以上は見過ごせない。」

ミルアージュがダミアンと知り合って数ヶ月は過ぎている。

ミルアージュがダミアンをはじめとする反領主の勢力とともにいる事をマカラックも知っている。
ダミアンもリーダーとしては優秀でも平民で構成された整備された組織ではなかったため統制が取りきれていず、ミルアージュが手助けをしていた。
そして商業、教育や医療にまでミルアージュは助言をし、責任者的な役割をこなしていた。
それが今のミルアージュにとってはかなりの負担がかかっていたのだ。

「マカラック様、もう少しなのです。今、民が我慢しきれず武器を手に立ち上がってしまえば、完全に潰されてしまう。」

「クリストファー殿を頼ればすぐにでも解決するのではないか?ミルアージュ殿がこんな無理をしてるのを知れば、どうなるかわからない訳ではないだろう?」

ミルアージュはマカラックの言葉に反応し嫌な顔をした。

「確かにクリスが出てくるとややこしいことになりますね…」

ウーンとミルアージュは腕組みをして考え事をしている。

「ですが、上から抑え込むのは最終手段にしたいんですよね。平民たちはただ命令をきき従うだけの存在じゃないって貴族たちや平民たち自身にも知ってもらわないといけないですから。」

あくまで自主的に考え、動くのをミルアージュは裏から手助けするだけにしたいようだ。

「言いたいことはわかるが、平民主体でこれだけ街が変われば、怪しまれるぞ。戦うのか?」
今まで何もできなかった平民たちが変わろうとしている。
その事実が何を意味するのか、難しい答えではない。

「もちろんと言いたいところですが、意味のない犠牲者を出すわけにはいかないのでそういう状況となれば私が抑え込むでしょうね。」
ミルアージュはにこりと笑うが、悪魔の微笑みだった。

マカラックは背筋がゾクリとした。
さすが王族と言うべきか。
これ以上私も口を挟むべきではないとマカラックは思った。

ゴクリと唾を飲み込み、落ち着いてからミルアージュに向かい手を出した。

「手を出して。もうブレスレットと一日一回の加護では対応できない。今日から朝夕の2回私が加護をかけに来よう。」

「ありがとうございます。」

ミルアージュはマカラックの手の上に自分の手を重ねた。
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