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「ブラン、情けないな。ここがお前の見せ場だろう。私がここを仕切ってもいいのか?この国がルーマンのものになってもいいなら喜んでやるぞ。」

ミルアージュもブランも慌てて声のする方を見た。

ここにいないはずのクリストファーの声がするのだ。
驚きもするだろう。

「…あいつが大人しくしておくのも無理だったな。」
ブランは苦笑いした。

クリストファーお得意の不法侵入だ。
まぁ、状況が状況だけにすぐに揉み潰せるだろうが、ミルアージュはため息をついた。

ミルアージュもブランも常識人だ。正当な解決策を優先にしようとする。

だが、クリストファーはよく言えば、常識に囚われない人、悪く言えば非常識人だ。常識など通用しない。

ルーマンが攻め入るかのようなクリストファーの発言にレンラグス王城内は騒ついた。

「クリス!何故あなたがここにいるの?」
ミルアージュは呆れ果てていた。

「ミアを一人こんな所にやれないだろう。ブラン、何堂々とエスコートしてるんだ。お前、あとで覚えていろよ。」
今の場面で言うことではないだろうが、今回それが一番クリストファーを苛立てていた。

ミルアージュに怒られるから飛び出したいのをグッと我慢していたのだ。

「最初からいたみたいね…」

「ああ、レンラグスというより俺を警戒してここに来たんだよ、あいつは…」

ミルアージュとブランがコソコソと話しているのを見てクリストファーの殺気が強くなる。

「この国ごとお前を潰すぞ!」
クリストファーの怒りはブランに向かった。

だが、あまりの殺気にレンラグス王城内はパニックになった。

誰からともなく、ルーマンが攻めてくると言い出し、余計に騒ぎは大きくなった。

はぁ、もうグダグタ。
ブランがここを仕切らねば、次期王として認められない。

第一王子との争いもブラン自身がおさめなければならなかったのに。

「ミルアージュ、怒ってくれるのは嬉しいが、落ち着け…」

隣からブランの声が聞こえるが、ミルアージュの耳には届いていない。

クリストファー以上にミルアージュから強い殺気が出ている。

おいおい、夫婦そろって本当に殺し合いをする気か?と言いたいくらいにミルアージュが笑顔で怒っている。

クリストファーもその殺気を感じ取った。

「ミア…私が悪かった。後で話し合おう…」
クリストファーはすぐさま謝った。
こうなるとミルアージュはしばらくクリストファーと口をきかなくなる。

それが一日なのか一ヶ月なのか、その時の怒り具合にもよるが…一日で終わるような殺気ではない。

「何を話し合うのかしら?あなたが勝手にここに来たこと?それともこの茶番について?」

ニッコリと微笑むミルアージュにクリストファーは完全に青ざめている。

ブランはいい加減にしろと言いたい。
人の国まで来てイチャつく気か?

二人は本気だが、周囲から見ればただじゃれ合っているだけだ。

その周りの人々はパニックに陥り、それどころでないが…

「クリストファー、いい加減にしろ。大人しくしなければ、お前を捕縛するぞ。」
ブランはクリストファーに剣を向けた。

「へぇ、面白い。お前が私に勝てるのか?」
ニヤッと嫌な笑いをしたクリストファーはブランの方に目を向けた。

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