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第三部隊も毎日工事ばかりでは不満が出てきそう…という心配もない。
軍部大将はルーマンの兵士たちにも剣の指導をしてくれていた。
アンロックの軍部大将はルーマンでも有名な武人であり、第三部隊の兵士からすれば会うことなど許されない雲の上の人だ。
平民から実力で今の地位まで上がった軍部大将に憧れを持つ者が多かった。
頑張ったものには直接指導の時間をつけるといえば、皆死に物狂いで頑張って工事を進めた。
「姫様、他人事だと思って適当なこと言って!こちらの身にもなってくれ。」
軍部大将はため息をつく。
「ごめんなさい、あんなに皆が必死になるとは思わなくて。それにしてもすごい人気ね。」
全く悪いなど思っていない笑顔をミルアージュは軍部大将に向けた。
砕けていた表情の軍部大将が第三部隊に向けて真剣な眼差しになった。
「面白いもの達ですね。」
ミルアージュは嬉しそうに笑う。
「そうなの!あなたにもわかるわよね。きっとこの部隊はいい隊になるわ。」
そこまで言うとフッと視線を落とした。
「私はもう関われないかもしれないけどね…」
「姫様の隊になるはずだったのですか?」
「今回の遠征で様子を見てね。結果は難しいでしょうね。」
ミルアージュ自身仕方がないと思っていた。自分がそう仕向けたのだから。
そんなミルアージュを見て軍部大将は眉間にしわを寄せた。少し考えてから低い声を出した。
「…姫様、勝負を挑みます。」
軍部大将は剣を抜く。
ミルアージュは目を大きくした。
「何を言っているの?なぜ今あなたと勝負しないといけないの?」
「たまには良いでしょう。ルーマンに行って腕が鈍っていないか見てみましょう。」
軍部大将は挑戦的な目をしていた。
いつものミルアージュ大好きなおっさんではなく、アンロック軍部大将の風格を前面に出していた。
ミルアージュはどうするべきか考えたが、受けることにした。
確かにルーマンに嫁いでから鈍っているのは間違いない。
「受けさせてもらうわ。」
ミルアージュも剣を抜いた。
そのことに気づいた隊員達は静まり返り、剣を下ろし、二人の様子を眺めていた。
「久しぶりね、本気で行かせてもらうわ。」
「お手柔らかに。」
軍部大将もニヤリと笑う。
剣を交えてから一旦離れた。
先に攻撃を仕掛けたのは軍部大将だった。
第三部隊はその試合を見て固まった。
軍部大将は自分達の相手をしてくれていたが、かなり手加減をしてくれているとは思っていた。
だが…子どものお遊び程度だったのだと知った。
軍部大将とミルアージュの試合を目で追うだけでもやっとであり、自分達なら一瞬で勝負がついてしまうのがわかる。
第三部隊で最強と言われるアルトも目をそらすことができず食い入るように見ていた。
ミルアージュとの勝負を悔しがっている場合じゃない。ミルアージュの実力はアルトの何倍、いや何十倍も上だ。
決着が早すぎてその認識すらできていない自分の愚かさを恥じた。
軍部大将は力でミルアージュを圧倒しているが、ミルアージュは小さな動きで全て交わしている。受け流す動作にも隙がない。
押しているのは軍部大将だが、ミルアージュが負けるとは思えないその余裕な表情に皆唾を飲み込んだ。
自分達が散々バカにしていた王太子妃の実力。
軍隊に所属している自分達よりずっと強い。
いや、比べる事すら間違っている。
戦場で会えば、一瞬で殺されるそんな殺気が二人から出ていた。
試合なのか?本当に殺し合いをしていると思わせる気迫が二人から感じられる。
ミルアージュの剣が軍部大将の喉元の手前で止まる。
「参りました。」
軍部大将は剣をおろしミルアージュに頭を下げた。
ミルアージュの勝利で勝負はついた。
軍部大将はルーマンの兵士たちにも剣の指導をしてくれていた。
アンロックの軍部大将はルーマンでも有名な武人であり、第三部隊の兵士からすれば会うことなど許されない雲の上の人だ。
平民から実力で今の地位まで上がった軍部大将に憧れを持つ者が多かった。
頑張ったものには直接指導の時間をつけるといえば、皆死に物狂いで頑張って工事を進めた。
「姫様、他人事だと思って適当なこと言って!こちらの身にもなってくれ。」
軍部大将はため息をつく。
「ごめんなさい、あんなに皆が必死になるとは思わなくて。それにしてもすごい人気ね。」
全く悪いなど思っていない笑顔をミルアージュは軍部大将に向けた。
砕けていた表情の軍部大将が第三部隊に向けて真剣な眼差しになった。
「面白いもの達ですね。」
ミルアージュは嬉しそうに笑う。
「そうなの!あなたにもわかるわよね。きっとこの部隊はいい隊になるわ。」
そこまで言うとフッと視線を落とした。
「私はもう関われないかもしれないけどね…」
「姫様の隊になるはずだったのですか?」
「今回の遠征で様子を見てね。結果は難しいでしょうね。」
ミルアージュ自身仕方がないと思っていた。自分がそう仕向けたのだから。
そんなミルアージュを見て軍部大将は眉間にしわを寄せた。少し考えてから低い声を出した。
「…姫様、勝負を挑みます。」
軍部大将は剣を抜く。
ミルアージュは目を大きくした。
「何を言っているの?なぜ今あなたと勝負しないといけないの?」
「たまには良いでしょう。ルーマンに行って腕が鈍っていないか見てみましょう。」
軍部大将は挑戦的な目をしていた。
いつものミルアージュ大好きなおっさんではなく、アンロック軍部大将の風格を前面に出していた。
ミルアージュはどうするべきか考えたが、受けることにした。
確かにルーマンに嫁いでから鈍っているのは間違いない。
「受けさせてもらうわ。」
ミルアージュも剣を抜いた。
そのことに気づいた隊員達は静まり返り、剣を下ろし、二人の様子を眺めていた。
「久しぶりね、本気で行かせてもらうわ。」
「お手柔らかに。」
軍部大将もニヤリと笑う。
剣を交えてから一旦離れた。
先に攻撃を仕掛けたのは軍部大将だった。
第三部隊はその試合を見て固まった。
軍部大将は自分達の相手をしてくれていたが、かなり手加減をしてくれているとは思っていた。
だが…子どものお遊び程度だったのだと知った。
軍部大将とミルアージュの試合を目で追うだけでもやっとであり、自分達なら一瞬で勝負がついてしまうのがわかる。
第三部隊で最強と言われるアルトも目をそらすことができず食い入るように見ていた。
ミルアージュとの勝負を悔しがっている場合じゃない。ミルアージュの実力はアルトの何倍、いや何十倍も上だ。
決着が早すぎてその認識すらできていない自分の愚かさを恥じた。
軍部大将は力でミルアージュを圧倒しているが、ミルアージュは小さな動きで全て交わしている。受け流す動作にも隙がない。
押しているのは軍部大将だが、ミルアージュが負けるとは思えないその余裕な表情に皆唾を飲み込んだ。
自分達が散々バカにしていた王太子妃の実力。
軍隊に所属している自分達よりずっと強い。
いや、比べる事すら間違っている。
戦場で会えば、一瞬で殺されるそんな殺気が二人から出ていた。
試合なのか?本当に殺し合いをしていると思わせる気迫が二人から感じられる。
ミルアージュの剣が軍部大将の喉元の手前で止まる。
「参りました。」
軍部大将は剣をおろしミルアージュに頭を下げた。
ミルアージュの勝利で勝負はついた。
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