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第1章

聖女候補の少女達

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聖女候補の選定の発表の日。

大勢の少女達やその家族が集まっている。
みんなソワソワしているのがわかる。
でも、聖女になりたい子ばかりではないらしい。

聖女はこの国でとても神聖で与えられる位も高い。
聖女候補になっただけで縁談なども優位にできるため、16歳の成人まで神殿で過ごしたい令嬢が多くいる。
幸せな結婚をしたい為に集まっているだけで、本当に聖女になりたいと思う者は少ないとラハールさんは嘆いていた。

少女達の前に神官達が並んでいる。
その中にラハールさんもいる。
知っている人がいるのは心強く、リーナの緊張は少しだけ減っていた。

書状を持った神官が名前を読み上げていく。

「公爵令嬢アリーティナ・ライ・レフーガン」
まず名前を呼ばれたのはアリーティナだった。
家族とともに喜んだ彼女は本当に美しい。
そこにいた皆、その笑顔に引き込まれた。

数人の名前が続いた後、「リーナ」と呼ばれた。
他の令嬢のように家名はない。

平民である事がすぐに皆わかり会場がざわつく。

平民が聖女候補に選ばれるなどあり得ないという風にコソコソ話したり、ジロジロとこちらを見ている少女とその家族。

何か感じ悪い‥
村育ちのリーナは貴族達と関わる機会が今までなかったから、どのように思われているかなんて考えたこともなかった。

神官はそのざわつきを無視し
「以上7名が聖女候補である。」
と声高らかに締めくくる。

あんなにたくさんいた少女達から選ばれたのは7人だけ‥

思っていた以上に少ない。
この中で聖女になれるのはさらに減り、神に皆が選ばれず聖女が出ない時もある。

その一方で、過去には多数の神から選ばれた聖女候補もいたらしい。
結ばれた神の数に比例するように大きな力を手にいれた聖女の事は伝説となっている。

神によって特性や性格、好むものが違う。
その為に神々との交流を通じて神様に好感が持たれるようにしていくのも聖女候補の役割だと聞いた。
聖女候補の勉強の中にも神様の攻略方法やアピールの仕方などがあるらしい。

ラハールさんからその話を聞いてリーナは少し嫌な気持ちになった。

力を得る為に神様を利用するように感じたから。
確かにリーナも神様と結ばれて聖女になりたい。
だけど、神様の攻略方法なんて学ぶ必要があるのか。
神様に合わせて対応を変えるなんてできそうにない。

神様と聖女候補の絆の上に関係が成り立つとばかり思っていたリーナには理解しがたい考え方だった。

後2年で聖女になれるかどうかが決まる。

「私のかわいい子‥」
あの神様の声が忘れられない。

会いたい。
2年後、あの神様の聖女になれるのかな?

家族や周囲の人の為に動く。
それがリーナのすべてだった。
いつでも周りの人の為、自分の事など後回しにしていた。

神様と結ばれる。
それは家族や周囲の人のためだけじゃない。

だからこそ、神様とは心で通じ合いたい。

自分のためにリーナは初めて神様を望んだ。




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