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「で、お前はどうしたいんだ?」
皇帝は呆れた視線をノルディに送る。
聖女を連れ帰りノルディの妃する旨は皇帝に前もって伝えられていた。
最初は喜んでいた皇帝もノルディの口から事の真相を聞き、息子の対応に呆れかえるしかなかった。
「どうもこうもずっとレピアを見守りますよ。」
ノルディは皇帝の反応を無視した。どんな反応をされるのか話す前からわかっていたからだ。
「偽物の夫としてか?そんな無理やり娶ってもうまくいくはずないだろう?聖女が逃げ出したらどうするんだ?」
魔の扉を閉めてるのもこの国一番の治癒力を使うのも聖女が自ら動かなければならない。
聖女に強制をし拒否されたら…それが皇帝が想像する最悪のシナリオだった。
「レピアが無事ならばそれでも構いません。」
ノルディはそんな事よりも聖女の方が大切だと全身でいっていた。
「お前という奴は…」
聖女が何より大切だと言い切るノルディに対し皇族としての責任を果たせと言いたい。
いや、聖女以外のことはきちんと果たしているけれど。
うーんと唸る皇帝。
「ノルディ、聖女を脅し妃とした事後悔はしていないか?二度と聖女の心を手に入れられないかもしれないぞ。」
それは皇帝ではなくノルディを思う父親からの言葉だった。
「そんな事はわかっています。それでもレピアがいつか笑えるようになれば…それで私は満足です。」
そんな父親からの心配ですらノルディは聞こうとしない。
「その時隣にいるのが自分でなくてもか?」
この言葉にノルディは反応した。
そんなのは当たり前だと言うようにフッと笑った。
「…私はもう無理でしょう。きっと恨まれていますから。もし私がレピアなら私という存在を許さないでしょう。最愛の者を脅しに利用し結婚を迫るなど許されざる行為です。」
もしレピアの存在を脅しに使い関係を迫る令嬢がいればノルディは脅しには屈しても生涯許さないだろう。
「それがわかっていながらやったのか?お前はどこまでも愚かだな。」
そこまでの覚悟を持って行った。
もう皇帝も何もいえなくなった。
聖女を呼び戻せただけでもよしとするか。
このまま、ここが気に入って生涯いてくれるのを願うのみだ。
「…で、結婚式はいつするんだ?皇室と聖女の婚姻だ、大々的にしないとな。」
皇帝はいつまで話しても平行線だとわかり話を切り替えた。
「その事ですが、結婚式をするつもりはありません。」
ノルディは皇帝にキッパリと答える。
「ハッ?何を言っている?結婚式をしないなどあり得ない!これは命令だ。聖女との結婚式が国にとってどれくらい重要なものかわからないお前ではないだろう!」
「いえ、これは決定事項です。」
皇帝に怒鳴られてさえ、ノルディは皇帝をまっすぐ見据えて返答した。
「何を…」
「お忘れですか?私の妃はあなたより立場は上なのですよ。命令は聞けません。では失礼します。」
ノルディは頭を下げ皇帝の執務室を出た。
執務室から少し離れるとノルディはため息をついた。
「結婚式などできる訳がないだろう…」
結婚式では必ず誓いを行う。
レピアは聖女として育ち、潔癖とも言えるくらい嘘が嫌いだ。
皆の前で私への愛を誓わせる。
それがどれほどの負担をかけるのかと思うと結婚式など行えるはずもなかった。
それに…
ノルディは真っ白なドレスを着て頬を赤らめ愛を誓うレピアを想像した。
だが、そんなレピアの横にいるのはアールだ。アールならそんな笑顔を引き出せたに違いない。
だが、実際に結婚式でレピアの隣に立つのは自分。
レピアに恨まれている自分が隣に立つなんてノルディは考えられなかった。
「私なら嘘でも嬉しいのだがな。」
ノルディの独り言は悲しみと諦めの音色を含んでいた。
皇帝は呆れた視線をノルディに送る。
聖女を連れ帰りノルディの妃する旨は皇帝に前もって伝えられていた。
最初は喜んでいた皇帝もノルディの口から事の真相を聞き、息子の対応に呆れかえるしかなかった。
「どうもこうもずっとレピアを見守りますよ。」
ノルディは皇帝の反応を無視した。どんな反応をされるのか話す前からわかっていたからだ。
「偽物の夫としてか?そんな無理やり娶ってもうまくいくはずないだろう?聖女が逃げ出したらどうするんだ?」
魔の扉を閉めてるのもこの国一番の治癒力を使うのも聖女が自ら動かなければならない。
聖女に強制をし拒否されたら…それが皇帝が想像する最悪のシナリオだった。
「レピアが無事ならばそれでも構いません。」
ノルディはそんな事よりも聖女の方が大切だと全身でいっていた。
「お前という奴は…」
聖女が何より大切だと言い切るノルディに対し皇族としての責任を果たせと言いたい。
いや、聖女以外のことはきちんと果たしているけれど。
うーんと唸る皇帝。
「ノルディ、聖女を脅し妃とした事後悔はしていないか?二度と聖女の心を手に入れられないかもしれないぞ。」
それは皇帝ではなくノルディを思う父親からの言葉だった。
「そんな事はわかっています。それでもレピアがいつか笑えるようになれば…それで私は満足です。」
そんな父親からの心配ですらノルディは聞こうとしない。
「その時隣にいるのが自分でなくてもか?」
この言葉にノルディは反応した。
そんなのは当たり前だと言うようにフッと笑った。
「…私はもう無理でしょう。きっと恨まれていますから。もし私がレピアなら私という存在を許さないでしょう。最愛の者を脅しに利用し結婚を迫るなど許されざる行為です。」
もしレピアの存在を脅しに使い関係を迫る令嬢がいればノルディは脅しには屈しても生涯許さないだろう。
「それがわかっていながらやったのか?お前はどこまでも愚かだな。」
そこまでの覚悟を持って行った。
もう皇帝も何もいえなくなった。
聖女を呼び戻せただけでもよしとするか。
このまま、ここが気に入って生涯いてくれるのを願うのみだ。
「…で、結婚式はいつするんだ?皇室と聖女の婚姻だ、大々的にしないとな。」
皇帝はいつまで話しても平行線だとわかり話を切り替えた。
「その事ですが、結婚式をするつもりはありません。」
ノルディは皇帝にキッパリと答える。
「ハッ?何を言っている?結婚式をしないなどあり得ない!これは命令だ。聖女との結婚式が国にとってどれくらい重要なものかわからないお前ではないだろう!」
「いえ、これは決定事項です。」
皇帝に怒鳴られてさえ、ノルディは皇帝をまっすぐ見据えて返答した。
「何を…」
「お忘れですか?私の妃はあなたより立場は上なのですよ。命令は聞けません。では失礼します。」
ノルディは頭を下げ皇帝の執務室を出た。
執務室から少し離れるとノルディはため息をついた。
「結婚式などできる訳がないだろう…」
結婚式では必ず誓いを行う。
レピアは聖女として育ち、潔癖とも言えるくらい嘘が嫌いだ。
皆の前で私への愛を誓わせる。
それがどれほどの負担をかけるのかと思うと結婚式など行えるはずもなかった。
それに…
ノルディは真っ白なドレスを着て頬を赤らめ愛を誓うレピアを想像した。
だが、そんなレピアの横にいるのはアールだ。アールならそんな笑顔を引き出せたに違いない。
だが、実際に結婚式でレピアの隣に立つのは自分。
レピアに恨まれている自分が隣に立つなんてノルディは考えられなかった。
「私なら嘘でも嬉しいのだがな。」
ノルディの独り言は悲しみと諦めの音色を含んでいた。
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