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神殿からレピアの言う通りに正式発表があった。

全て悪いのは聖女。

レピアは民衆に発表したいと言ったが、国内が混乱し暴動なども起きる可能性があると言われ断念した。

国のお偉方だけが呼ばれ発表されたが、内容が内容なだけに大騒動となった。

「こんな発表をさせるために一年も神殿に出していた訳ではないぞ。」

ノルディは皇帝から呼び出しを受けていた。

「申し訳ありません。私の力不足です。」
ノルディは父である皇帝に頭を下げる。
ノルディだってそんな発表をさせたくはなかった。
そんな悔しさがにじみ出ていた。

皇帝、ノルディの兄である皇太子がいる執務室への呼び出しであり正式な報告でない事はノルディもわかっていた。

かなり気をつかってくれている…
だが、レピア様の不利になるような言動はできない。
ノルディは一年ぶりに会う肉親よりもレピアを守るため、かなり身構えて皇帝や皇太子に会っていた。

「聖女の話は聞いている。お前が聖女を止める事はできなかっただろう。真相を報告しろ。」

ノルディの考えなどお見通しである皇帝はノルディに催促をした。
ノルディが聖女一人を悪者にした報告をするとは考えられないから。

「こちらになります。」

ノルディから渡された書類に目を通して皇帝はため息をついた。

そして皇帝から皇太子に報告書が回った。
皇太子も目を通し「こんな事が…」と声が漏れた。

国を守る聖女の喪失は婚約者の聖騎士によって引き起こされたもの。
それが神殿とノルディの結論だった。

「お前がさっさと聖女を手に入れていたらこんな事にならなかっただろう。しかも聖女の相手を全く調査せずに諦めるなど愚か者め。」

「はい。」
ノルディは唇をグッと噛み締めた。
皇帝の言う事は最もだ。
こんな風にレピア様が傷つく前にアールから引き離すべきだった。

「これからどうするつもりだ?」
皇太子はノルディに聞いた。

「レピア様が神殿を去ると言う意思はかたいので私も付いていこうと思っています。」
ノルディは父である皇帝をまっすぐに見つめ皇位継承権の放棄を希望した。

「却下する。真相が明らかになった今、お前は皇族としての役目を果たせ。」

「レピア様を一人にはできません。私も行きます。」
ノルディの心はもう決まっていた。

「ノルディ、頭を冷やせ。今聖女の評判は地に落ちている。その上、お前が皇位継承権の放棄し聖女とともに去れば聖女への風当たりはさらに強まる。」

「それはそうですが…」

「わしからの提案だ。お前はここに残り、皇太子とともにこの国を支えろ。そう約束するなら聖女には優秀な護衛や治癒師もつけるし、聖女の醜聞も皇室から箝口令も出そう。どうだ?」

皇帝からの提案は魅力的なものだった。
貴族たちに手を回すだけでも悪評をかなり抑えられるだろう。

皇室を出た自分がレピア様にできる事は限られている。
それならば…

「承知しました。この国のために尽くすと誓いましょう。私はこれで失礼します。」
ノルディは皇帝と皇太子に頭を下げ退室した。

パタンと部屋の扉が閉まるのを見てから皇太子が口を開く。

「父上も人が悪い。」

「何のことだ?あれは聖女のためだけに生きている。皇帝にも興味はないし実力はある。お前の治世には必要だろう。」
皇帝は悪びれず答えた。

「いてくれれば私も助かります。ですが、それだけではないでしょう?」
皇太子は笑った。

「お前にはお見通しというわけか。ノルディには全く伝わっていないぞ。」
皇帝も面白そうに笑った。

「聖女の性格を考えれば民衆を見捨てるという選択はできないから必ず神殿に戻ってくる。魔の扉は必ず現れるからな。」
ノルディの報告書にレピアの聖力を使えなくなっているとあったが、色々と検査をして失っていない事は証明されている。
アールを死なせた事により聖女自身がその力を無意識に抑え込んでいるとの結論だった。

「そうですね。」
皇太子も真顔になった。

「ノルディが力をつければ聖女が戻った時守りやすくなるだろう。このままでは聖女とともに破滅の道しか見えないからな。」

「そう言ってあげればいいのに。」

「あの頑固者がわしの助言などまともに聞くと思うか?」
今までだって聖女優先で父からの助言も皇帝からも命令もまともに聞き入れた事がなかったのに。
そう言うと皇帝は拗ねたような表情をした。
臣下には見せない皇帝の表情に皇太子はクスリと笑った。

「あなたとそっくりではないですか。まぁ、ノルディの初恋は私も応援したいですけどね。」

「あぁ、ノルディは一生聖女に振り回されるな。頭が痛い。」

「そうですね。」

ノルディはこんな二人の会話を全く知らず、レピアと一緒に行くことができない怒りを側近のウースにぶつけていた。
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