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「ノア。明日もアールに会えるかしら?」
ベットに入ったレピアが側についていたノアに聞いた。

「休みとは報告を受けていませんので来ますよ。」
そう言った時のレピアの嬉しそうな表情にノアの顔も綻んだ。

神殿で育ったレピア様がここまで興味を持つ人間が今までにいただろうか。

ウンウンとレピアはノアの答えを待っていたように頷いた。
「そうよね。わかっているけど、確認しておきたかったの。明日がとても楽しみだわ。」

「レピア様が初対面の人をそのように気にいるのは珍しいですね。」

何でも手に入るレピアだったが、皇帝よりも高位である身分が邪魔してレピアとの距離を縮めようとする者は少なかった。
レピア自身もそれを自覚して人と距離を保っており、親密になる事はなかった。

ノルディ様くらいだと思っていたのに…
アールは決して聖騎士の立場を超えてはいない。
レピア様がアールとの距離を縮めたのだ。

「ええ、これは一目惚れっていうよ。出会った瞬間時間が止まるって本当だったわ。」

レピアは興奮しながら早口で話した。

「そんなに興奮していたら眠れませんよ。」
クスリッとノアは笑う。

「ノルディからもらった本の通りだった。ノルディには感謝しなくちゃね。」

「ノルディ様は嬉しくないと思いますが…」
ボソリとノアはレピアに聞こえないように呟いた。

ノルディ様がレピア様を妃にと望んでいることは周知の事実だ。
ノルディ様自身が隠すこともなく、堂々とアプローチしているのだから当たり前だけど。

そのノルディ様の想いに微塵も気付かないレピア様はかなり鈍感だとノアも思っている。

でもレピア様が望まない限りノルディ様は結ばれない。
皇族とはいえ、ノルディ様には決定権などないのだから。

一生懸命アプローチし続けるノルディ様には悪いけど、こんなにレピア様が心を寄せる者はいなかったわ。

レピア様が望めば、アールと結ばれることもできる。

ノアは純粋にレピアの幸せを願っていた。

聖女なら皆を救って当たり前。
そんな皆の期待を一身に受け、レピア自身もそれが当たり前だと思っている。
誰かの犠牲になっているという意識すらないのがノアには歯がゆくて仕方なかった。

だからこそ、レピア自身が自ら心を開く者ができたことにノアは喜んだ。

宝石もドレスも何も欲しがらない。
ただ皆の幸せを願い祈るレピア。

「レピア様、おやすみなさいませ。明日も良い一日でありますよう。」
ノアはレピアに一礼をし部屋を出た。

「大神官様に報告をしなくてはいけないわ。」
ノアはレピアの嬉しそうな顔を思い浮かべながら早足で大神官のところに向かった。
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