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目の前で微笑んでいるのは本当のアルフード様?
お兄様を失脚させてどうして笑っていられるの?
今レアン様はどうなっているの?
わからない。
何がどうなったらそうなるの?
私のせい?
私がアルフード様との婚約から逃れるために王妃になりたいなんて嘘をついたから?
こんなのダメだ。
こんな気持ち悪い微笑みを浮かべるアルフード様も失脚させられたレアン様も。
早く過去に戻らないと…
こんな世界間違っている。
私がそうしてしまった。
座り込んだ私に手を伸ばすアルフード様の手を払いのけた。
早く魔女の所に行かなければ!
その場から私は走り出した。
令嬢なら王城の中を走るなどしないため、皆が振り返っている。
もうどうでもいい。
早く終わらせなければ…
「アメリア嬢…」
目の前にやつれた王妃様が立っている。
私は足を止めた。
「王妃様…」
王妃様から冷たい視線を向けられた事はあった。だけど、こんな風に憎しみのこもった目を向けられたのは一度もなかった。
「ねえ、あなたは何をしたの?」
「…私は…」
「アルフードは優秀よ。だけど、王位には興味がなかったし、レアンと関係性はよかったわ。」
知っています。
とても仲の良い兄弟だったのは…
「なのに、どうしていきなりレアンを罠にはめるの?どうして王位を望むの?」
「……」
「アルフードはあなたに執着していた。あなたがアルフードをそそのかしたのでしょう?あなたがいなければこんな事にはなっていなかったはずよ…」
そういうと王妃様は泣き崩れた。
アルフード様がレアン様を罠にはめた…
レアン様はきっとアルフード様に裏切られるなんてきっと考えてはいなかったはず。
王妃様もレアン様も傷つけてしまった。
何も言えない。
私の言葉でこんな事態を引き起こしたのに何て声をかければ良いの?
そんな資格なんてない。
「王妃様、行くところがあるので失礼します。」
泣き崩れている王妃様をおいてまた走りだす。
少しだけ待ってください。
もうこんな事は起こしません。
私はもう何もしません…
「また来たのかい。」
魔女が呆れたように言った。
「これが最後です。もう私は何もしません…だから、お願いです。もう一度だけ時間を戻してください。」
「報酬さえ出してくれれば、構わないさ。」
私はつけていた宝石の外し、髪も切って渡した。
魔女はジッと私を見つめて言う。
「…あまり無理をするな。顔が死にそうだ…」
魔女の言葉に涙が溢れる。
私がいなければ、こんな事にはならなかった。
私が存在しなければ…
パァと光が広がり包まれた。
魔女の家の扉が開き、アルフードが入ってきた。
「…お前さんもしつこい奴だな。いつまでこんな事を続けるのだ?そろそろあの娘をはなしてやれ。」
魔女はアルフードを睨む。
「…金が入れば何でもする魔女であるお前が私の事情に口を挟むな。」
魔女の前に金貨が入った袋を投げ渡した。
「いつも通りアメリアより多い額だ。」
アルフードは笑っている。
魔女はこの笑いが嫌いだった。
「今度はどんなアメリアを見せてくれるのだろうな。平民も良かったし、王妃を望むアメリアも良かった。私の希望は彼女が側にいることだけだ。だから彼女が望む道に私も進む。」
ウットリと上機嫌に話すこの王子は本当に人の気持ちなど考えた事がないのだろうな。
あの娘の隣にいるのは自分だと思いこんでいる。
好きな道を選ばせているように見せかけて、結局はあの娘の望みをわかっていない。
さっきの娘の様子を見るともう限界だろう。
アルフードに向ける思いも変わってきている事に気付かないとはバカな王子だ。
「さっさと行け。」
明るい光にアルフードは包まれた。
今までと同じく、アメリアとアルフードは同じタイミングで時を戻った。
「アメリア、こんな茶番さっさと終わらせろ。お前だけがあのバカ王子を何とかできる。」
一人になった部屋で魔女は呟く。
お兄様を失脚させてどうして笑っていられるの?
今レアン様はどうなっているの?
わからない。
何がどうなったらそうなるの?
私のせい?
私がアルフード様との婚約から逃れるために王妃になりたいなんて嘘をついたから?
こんなのダメだ。
こんな気持ち悪い微笑みを浮かべるアルフード様も失脚させられたレアン様も。
早く過去に戻らないと…
こんな世界間違っている。
私がそうしてしまった。
座り込んだ私に手を伸ばすアルフード様の手を払いのけた。
早く魔女の所に行かなければ!
その場から私は走り出した。
令嬢なら王城の中を走るなどしないため、皆が振り返っている。
もうどうでもいい。
早く終わらせなければ…
「アメリア嬢…」
目の前にやつれた王妃様が立っている。
私は足を止めた。
「王妃様…」
王妃様から冷たい視線を向けられた事はあった。だけど、こんな風に憎しみのこもった目を向けられたのは一度もなかった。
「ねえ、あなたは何をしたの?」
「…私は…」
「アルフードは優秀よ。だけど、王位には興味がなかったし、レアンと関係性はよかったわ。」
知っています。
とても仲の良い兄弟だったのは…
「なのに、どうしていきなりレアンを罠にはめるの?どうして王位を望むの?」
「……」
「アルフードはあなたに執着していた。あなたがアルフードをそそのかしたのでしょう?あなたがいなければこんな事にはなっていなかったはずよ…」
そういうと王妃様は泣き崩れた。
アルフード様がレアン様を罠にはめた…
レアン様はきっとアルフード様に裏切られるなんてきっと考えてはいなかったはず。
王妃様もレアン様も傷つけてしまった。
何も言えない。
私の言葉でこんな事態を引き起こしたのに何て声をかければ良いの?
そんな資格なんてない。
「王妃様、行くところがあるので失礼します。」
泣き崩れている王妃様をおいてまた走りだす。
少しだけ待ってください。
もうこんな事は起こしません。
私はもう何もしません…
「また来たのかい。」
魔女が呆れたように言った。
「これが最後です。もう私は何もしません…だから、お願いです。もう一度だけ時間を戻してください。」
「報酬さえ出してくれれば、構わないさ。」
私はつけていた宝石の外し、髪も切って渡した。
魔女はジッと私を見つめて言う。
「…あまり無理をするな。顔が死にそうだ…」
魔女の言葉に涙が溢れる。
私がいなければ、こんな事にはならなかった。
私が存在しなければ…
パァと光が広がり包まれた。
魔女の家の扉が開き、アルフードが入ってきた。
「…お前さんもしつこい奴だな。いつまでこんな事を続けるのだ?そろそろあの娘をはなしてやれ。」
魔女はアルフードを睨む。
「…金が入れば何でもする魔女であるお前が私の事情に口を挟むな。」
魔女の前に金貨が入った袋を投げ渡した。
「いつも通りアメリアより多い額だ。」
アルフードは笑っている。
魔女はこの笑いが嫌いだった。
「今度はどんなアメリアを見せてくれるのだろうな。平民も良かったし、王妃を望むアメリアも良かった。私の希望は彼女が側にいることだけだ。だから彼女が望む道に私も進む。」
ウットリと上機嫌に話すこの王子は本当に人の気持ちなど考えた事がないのだろうな。
あの娘の隣にいるのは自分だと思いこんでいる。
好きな道を選ばせているように見せかけて、結局はあの娘の望みをわかっていない。
さっきの娘の様子を見るともう限界だろう。
アルフードに向ける思いも変わってきている事に気付かないとはバカな王子だ。
「さっさと行け。」
明るい光にアルフードは包まれた。
今までと同じく、アメリアとアルフードは同じタイミングで時を戻った。
「アメリア、こんな茶番さっさと終わらせろ。お前だけがあのバカ王子を何とかできる。」
一人になった部屋で魔女は呟く。
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