上 下
18 / 23

18

しおりを挟む
目の前で微笑んでいるのは本当のアルフード様?
お兄様を失脚させてどうして笑っていられるの?
今レアン様はどうなっているの?

わからない。
何がどうなったらそうなるの?

私のせい?
私がアルフード様との婚約から逃れるために王妃になりたいなんて嘘をついたから?

こんなのダメだ。
こんな気持ち悪い微笑みを浮かべるアルフード様も失脚させられたレアン様も。

早く過去に戻らないと…
こんな世界間違っている。
私がそうしてしまった。

座り込んだ私に手を伸ばすアルフード様の手を払いのけた。

早く魔女の所に行かなければ!

その場から私は走り出した。
令嬢なら王城の中を走るなどしないため、皆が振り返っている。

もうどうでもいい。
早く終わらせなければ…

「アメリア嬢…」
目の前にやつれた王妃様が立っている。
私は足を止めた。

「王妃様…」

王妃様から冷たい視線を向けられた事はあった。だけど、こんな風に憎しみのこもった目を向けられたのは一度もなかった。

「ねえ、あなたは何をしたの?」

「…私は…」

「アルフードは優秀よ。だけど、王位には興味がなかったし、レアンと関係性はよかったわ。」

知っています。
とても仲の良い兄弟だったのは…

「なのに、どうしていきなりレアンを罠にはめるの?どうして王位を望むの?」

「……」

「アルフードはあなたに執着していた。あなたがアルフードをそそのかしたのでしょう?あなたがいなければこんな事にはなっていなかったはずよ…」

そういうと王妃様は泣き崩れた。

アルフード様がレアン様を罠にはめた…
レアン様はきっとアルフード様に裏切られるなんてきっと考えてはいなかったはず。
王妃様もレアン様も傷つけてしまった。

何も言えない。
私の言葉でこんな事態を引き起こしたのに何て声をかければ良いの?
そんな資格なんてない。

「王妃様、行くところがあるので失礼します。」
泣き崩れている王妃様をおいてまた走りだす。

少しだけ待ってください。
もうこんな事は起こしません。
私はもう何もしません…





「また来たのかい。」
魔女が呆れたように言った。

「これが最後です。もう私は何もしません…だから、お願いです。もう一度だけ時間を戻してください。」

「報酬さえ出してくれれば、構わないさ。」

私はつけていた宝石の外し、髪も切って渡した。

魔女はジッと私を見つめて言う。
「…あまり無理をするな。顔が死にそうだ…」

魔女の言葉に涙が溢れる。
私がいなければ、こんな事にはならなかった。
私が存在しなければ…


パァと光が広がり包まれた。




魔女の家の扉が開き、アルフードが入ってきた。
「…お前さんもしつこい奴だな。いつまでこんな事を続けるのだ?そろそろあの娘をはなしてやれ。」
魔女はアルフードを睨む。

「…金が入れば何でもする魔女であるお前が私の事情に口を挟むな。」

魔女の前に金貨が入った袋を投げ渡した。

「いつも通りアメリアより多い額だ。」

アルフードは笑っている。
魔女はこの笑いが嫌いだった。

「今度はどんなアメリアを見せてくれるのだろうな。平民も良かったし、王妃を望むアメリアも良かった。私の希望は彼女が側にいることだけだ。だから彼女が望む道に私も進む。」

ウットリと上機嫌に話すこの王子は本当に人の気持ちなど考えた事がないのだろうな。

あの娘の隣にいるのは自分だと思いこんでいる。
好きな道を選ばせているように見せかけて、結局はあの娘の望みをわかっていない。

さっきの娘の様子を見るともう限界だろう。
アルフードに向ける思いも変わってきている事に気付かないとはバカな王子だ。

「さっさと行け。」

明るい光にアルフードは包まれた。

今までと同じく、アメリアとアルフードは同じタイミングで時を戻った。

「アメリア、こんな茶番さっさと終わらせろ。お前だけがあのバカ王子を何とかできる。」
一人になった部屋で魔女は呟く。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたばかりの私は、第一王子に呼び出される

さくしゃ
恋愛
他の貴族令嬢がマナーなどに時間を費やす中、農業に精を出す男爵令嬢メリアは、学園卒業式の日、誰も居ない教室に呼び出されーー 「メリア・フレグランス!貴様との婚約を破棄する!」  婚約者クロノから婚約破棄を言い渡された。しかもその隣に佇むのは友人のオルナ。  状況が掴めない中、クロノによってメリアは蔑まれ、オルナは賞賛される。最後には妾ならと誘われるがーー  その後領地に戻り、病んだメリアは農業に打ち込むが、突然「王城へ来られたし」との手紙を目にし青ざめる。メリアが呼び出された理由は一体ーー  農業女子貴族令嬢による婚約破棄ラブコメ物語。

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

伯爵令嬢の苦悩

夕鈴
恋愛
伯爵令嬢ライラの婚約者の趣味は婚約破棄だった。 婚約破棄してほしいと願う婚約者を宥めることが面倒になった。10回目の申し出のときに了承することにした。ただ二人の中で婚約破棄の認識の違いがあった・・・。

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

君を自由にしたくて婚約破棄したのに

佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」  幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。  でもそれは一瞬のことだった。 「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」  なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。  その顔はいつもの淡々としたものだった。  だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。  彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。 ============ 注意)ほぼコメディです。 軽い気持ちで読んでいただければと思います。 ※無断転載・複写はお断りいたします。

とある侯爵令息の婚約と結婚

ふじよし
恋愛
 ノーリッシュ侯爵の令息ダニエルはリグリー伯爵の令嬢アイリスと婚約していた。けれど彼は婚約から半年、アイリスの義妹カレンと婚約することに。社交界では格好の噂になっている。  今回のノーリッシュ侯爵とリグリー伯爵の縁を結ぶための結婚だった。政略としては婚約者が姉妹で入れ替わることに問題はないだろうけれど……

愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?

海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。 「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。 「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。 「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。

処理中です...