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王妃の懺悔
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王様は眉をしかめながらも言葉を発しなかった。
王様自身考えることがあるのだろう。
そんな王様への配慮などなく話がすすんだ。
「全てはわたくしが愚かだったのよ。」
王妃様はため息をついて話し出した。
アレンはとても優秀な子だった。
この子なら王として十分にやっていける。
王妃はそう思っていた。
しかし、5歳を過ぎたくらいより違和感を感じるようになった。
全く笑わない。
嬉しい、悔しい、悲しいという感情が全く見えない。
というよりないのかもしれない‥
王族として感情を出さないよう教育される。
しかし、アレンはそういった感情がそもそもないように感じる。
決定的になったのはある領地での暴動が起こった時だ。
不作が続き、領民が飢えていた。
国に助けを求めていたが‥
死者だけが増えていく。
特別扱いだと他の領主たちの批判を受け、国も大っぴらに動くことができなくなり、対応が遅れている中で起こった事だった。
「どうして助ける必要性があるのですか?不作が続いたのは不幸ですが、国に助けを求める前に領主がその事を想定して貯蓄などするべきでしたよね?そんな領に生まれたのです、死ぬのも仕方ないでしょう?」
アレンは領民を救うのではなく、弾圧するべきだと言った。
言っていることは間違いないかもしれない。
領主も悪い人間ではなかったが、先を読むことができていなかった。
誰もアレンのように先々まで考えられるわけではない。
できていなかった事を今更いっても遅い。
実際に今飢えていく領民がいる。
死んでいる領民がいる。
にも関わらず、死ぬのは当然だという。
目の前にいるのは可愛い我が子。
でも王としては大きな欠陥がある。
国民を思いやる心がない。
国を、国民を守るための王家。
この子には何があっても守るという思いはない。
必要があれば簡単に切り捨てる。
「私はなんとかアレンの考えを変えようとしたけどダメだった。アレンを王太子から外すことを視野に入れたの。」
えっ、外す?
王妃様がアレンを?
「そこで、まだ小さなマリアージュ妃の子に王太子教育を始めようと思ったの。子に縋っていたマリアージュ妃は、王子をわたくしにとられると思い、抵抗したわ。それが最悪の結果を招いた。」
王妃様の後悔、悲しみのオーラがさらに強くなる。
「王妃として女としての醜い感情に支配されて母としての愛情をアレンに向けなかった。王子教育はわたくしの役目‥子育てもまともにできない上、マリアージュ妃の子に手をだし、その結果、取り返しのつかない事態に陥らせた。処刑されてもおかしくない罪よ。」
そこまで一気に話をした王妃様は一口紅茶を飲んだ。
「どうして相談しなかった?」
王様が重い口を開いた。
王妃様が辛そうに笑った。
「あなたに頼りたくなかったのです。わたくしはアレンしか産めなかった。国を存続させるため、王として子をつくることの大切さは理解していましたが、わたくしのプライドが許さなかった。あなたを愛していたからこそ余計に辛かった。アレンを立派な後継者にし、あなたがした事は無駄な事だと証明し、後悔させたかった。あの子にもマリアージュ妃にもひどい事をしたわ。」
王妃様の目から涙が流れた。
王様が王妃様に近づき涙を手で拭おうとしたが、王妃様が体を後ろにそらし態度でその行為に拒否を示す。
王様は傷ついた顔をした後に手を引っ込めた。
「わたくしにはあなたの妻である資格もアレンの母である資格もありません。そして王妃としての資格も‥」
私の方を見つめ王妃様は言った。
「わたくしはあなたに王妃教育をしたわ。アレンが王太子から外れることができない以上、横にたつのはあなたしかいないから。あなたは、国民たちを守り、人の心に寄り添って支えていける人よ。アレンは国民たちの心に寄り添うことは難しい。あなたがアレンを導いてあげて。王としてのアレンを助けてあげて。」
少し間を開けて王妃様は続けた。
「何より、アレンが唯一感情を向けるあなたにアレンのそばにいてほしい。最後のはアレンの母としてのお願いです。」
一息おき、私を見つめ優しそうな笑顔をみせた。
「そして、あなたにも幸せになってもらいたいの。あなたが今まで何に囚われて生きてきたのかは知っているわ。これからは、アレンをうまく利用しなさい。彼はあなたの望みを叶える事に関しては優秀よ。」
フフフッと王妃様は、乾いた笑いを浮かべた。
王様自身考えることがあるのだろう。
そんな王様への配慮などなく話がすすんだ。
「全てはわたくしが愚かだったのよ。」
王妃様はため息をついて話し出した。
アレンはとても優秀な子だった。
この子なら王として十分にやっていける。
王妃はそう思っていた。
しかし、5歳を過ぎたくらいより違和感を感じるようになった。
全く笑わない。
嬉しい、悔しい、悲しいという感情が全く見えない。
というよりないのかもしれない‥
王族として感情を出さないよう教育される。
しかし、アレンはそういった感情がそもそもないように感じる。
決定的になったのはある領地での暴動が起こった時だ。
不作が続き、領民が飢えていた。
国に助けを求めていたが‥
死者だけが増えていく。
特別扱いだと他の領主たちの批判を受け、国も大っぴらに動くことができなくなり、対応が遅れている中で起こった事だった。
「どうして助ける必要性があるのですか?不作が続いたのは不幸ですが、国に助けを求める前に領主がその事を想定して貯蓄などするべきでしたよね?そんな領に生まれたのです、死ぬのも仕方ないでしょう?」
アレンは領民を救うのではなく、弾圧するべきだと言った。
言っていることは間違いないかもしれない。
領主も悪い人間ではなかったが、先を読むことができていなかった。
誰もアレンのように先々まで考えられるわけではない。
できていなかった事を今更いっても遅い。
実際に今飢えていく領民がいる。
死んでいる領民がいる。
にも関わらず、死ぬのは当然だという。
目の前にいるのは可愛い我が子。
でも王としては大きな欠陥がある。
国民を思いやる心がない。
国を、国民を守るための王家。
この子には何があっても守るという思いはない。
必要があれば簡単に切り捨てる。
「私はなんとかアレンの考えを変えようとしたけどダメだった。アレンを王太子から外すことを視野に入れたの。」
えっ、外す?
王妃様がアレンを?
「そこで、まだ小さなマリアージュ妃の子に王太子教育を始めようと思ったの。子に縋っていたマリアージュ妃は、王子をわたくしにとられると思い、抵抗したわ。それが最悪の結果を招いた。」
王妃様の後悔、悲しみのオーラがさらに強くなる。
「王妃として女としての醜い感情に支配されて母としての愛情をアレンに向けなかった。王子教育はわたくしの役目‥子育てもまともにできない上、マリアージュ妃の子に手をだし、その結果、取り返しのつかない事態に陥らせた。処刑されてもおかしくない罪よ。」
そこまで一気に話をした王妃様は一口紅茶を飲んだ。
「どうして相談しなかった?」
王様が重い口を開いた。
王妃様が辛そうに笑った。
「あなたに頼りたくなかったのです。わたくしはアレンしか産めなかった。国を存続させるため、王として子をつくることの大切さは理解していましたが、わたくしのプライドが許さなかった。あなたを愛していたからこそ余計に辛かった。アレンを立派な後継者にし、あなたがした事は無駄な事だと証明し、後悔させたかった。あの子にもマリアージュ妃にもひどい事をしたわ。」
王妃様の目から涙が流れた。
王様が王妃様に近づき涙を手で拭おうとしたが、王妃様が体を後ろにそらし態度でその行為に拒否を示す。
王様は傷ついた顔をした後に手を引っ込めた。
「わたくしにはあなたの妻である資格もアレンの母である資格もありません。そして王妃としての資格も‥」
私の方を見つめ王妃様は言った。
「わたくしはあなたに王妃教育をしたわ。アレンが王太子から外れることができない以上、横にたつのはあなたしかいないから。あなたは、国民たちを守り、人の心に寄り添って支えていける人よ。アレンは国民たちの心に寄り添うことは難しい。あなたがアレンを導いてあげて。王としてのアレンを助けてあげて。」
少し間を開けて王妃様は続けた。
「何より、アレンが唯一感情を向けるあなたにアレンのそばにいてほしい。最後のはアレンの母としてのお願いです。」
一息おき、私を見つめ優しそうな笑顔をみせた。
「そして、あなたにも幸せになってもらいたいの。あなたが今まで何に囚われて生きてきたのかは知っているわ。これからは、アレンをうまく利用しなさい。彼はあなたの望みを叶える事に関しては優秀よ。」
フフフッと王妃様は、乾いた笑いを浮かべた。
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