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アレクサンダーの決意

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アレクサンダーは後悔と悲しみ、父への憎しみがだんだんと強くなった。
自分さえいなければ良かった。
もう皇帝などどうでもいい。
なりたい奴がなればいい、自分には何の関係もない。
父の思い通りなどならない。
初めて父皇帝へ反抗する意思を固めた。

そんな時ダーティールからまだ小さな王太子を連れた使者が来た。
ラミオンが亡くなる前にアレクサンダーの所に行けと命令されたと使者は震えながら語った。
ダーティール滅亡の裏にイオマミールが関わっている事は知っている。
その敵陣とも言える所に生き残った王太子を連れて来るなど来るなどあり得ない。
使者は王太子もろとも殺される事を覚悟していた。

その使者は書状をアレクサンダーに渡す。
その中身を見たアレクサンダーは使者の前であるにも関わらず、涙を流しその書状を大切そうに抱いた。
「ラミーはこのような状況でも私を信じてくれたのだな。」
使者が持ってきた書状は2,3が書き込まれた契約書だった。

使者は確信した。
皇帝候補はこの件に絡んでいなかった。
そして、ラミオンの判断は間違っていなかったと。

ダーティール滅亡の際、王弟ラミオンはあり得ない提案をしていたのだ。
王太子をアレクサンダーに保護してもらうと‥
イオマミール帝国がジールベルンの後ろにいる事はわかっており、イオマミールを敵に回したくない他国からも王太子は狙われる恐れがある。
他に方法はなかったが‥アレクサンダーが王太子を殺さないという保証はない。
アレクサンダーがアリエランダに横恋慕したのが今回の原因だと言われていたからだ。
その時、使者に向かいラミオンは笑った。
「アレクなら大丈夫だ。必ずこの子を守ってくれる。この件にアレクは関与していないから。」
使者はラミオンのこの信頼はどこから来るのかわからなかった。
だから、ここに来るまで半信半疑だったのだ。

アレクサンダーは自分を奮い起こした。
ラミーからの絶対の信頼。
ラミーが私を信じてくれたのなら私は命をかけてもその信頼に応えよう。

「この子の名は何という?」
泣きながら眠っているのが痛々しい。
この子は家族を全て失ってしまった。

「フィンデル・ラング・ダーティール殿下です。もうすぐ4歳となられます。」

「そうか、私の命をかけてでもこの子は守ろう。名は周りに知れているのか?」

「まだお披露目をしていませんので、公には出ていません。」
暗殺防止も兼ね、お披露目をするまでは王族の名は言わない国も多い。

「そうか、ならばこの子はフィンデルのままとしよう。この子から家族を奪ってしまったのに名まで奪いたくない。」
アレクサンダーは悲しそうにフィンデルの頭を撫でる。

アレクサンダーがこれからの人生をかけてするべき事は決まった。
フィンデル、アリエランダを守る。
それが自分の償いだ。

すでに嫁入りしてきていたアリエランダを見てアレクサンダーは胸が押しつぶされそうだった。
ラミーを失い呆然としている。
悲しみを表出することすらできていない。
ただ、生きている‥
いや、もう生きる気力すら残されていないかもしれない。
あとを追ってしまう‥
ラミーはそんな事望んではいないと彼女に私が言っても届かないだろう。

アリエランダにダーティール滅亡の関与をほのめかす。
悲しみではなく怒りを生きる糧にしてほしい。
彼女の全ては私が受け止める。
間接的ではあるがラミーを殺したのは間違いなく私が原因なのだから。

ジールベルンを罰したいが、罪が罪だ。
ジールベルン王家の存続も怪しくなる。
母国の為、私の元に嫁いできた。
そんなアリエランダがさらに傷つくかもと思うとジールベルンへの行いを表沙汰にするのはどうしてもできなかった。
ただダーティール領地はジールベルンのものになるのだけはどうしても許せない。
ダーティールは帝国で管理する。
いつかフィンデルに返す事ができるように‥

ラミー、私では彼女を幸せにできない。
すまない、契約は成立できない。
だが、命をかけてでも彼女を守るから許してくれ。

その為に権力を手に入れよう。
皇帝となり、アリエランダを皇后としよう。
もう誰も彼女を害する事ができないように。
彼女の周りも彼女を守れる者たちで固める。
これ以上、アリエランダが傷つける者は許さない。

もう父にも手出しなどさせない。
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