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フィンデルとの契約

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口付けの後、フィンデルはアイルーナを抱きしめた。
フィンデルは決意した。
アイルーナの横で生きていくと。
護衛でもない。
側近でもない。
アイルーナを愛する事をもう諦めない。
アイルーナは皇帝となる為、夫は一人ではないかもしれない。
だが、私はアイルーナ様一人を愛し抜こうと。


「フィン、ありがとう。もう何も思い残すことない。」
アイルーナがポロポロ涙を流す。

いつでも強く真っ直ぐ前を向くアイルーナ。
元々優秀だ。
だが、それだけではない。
人には言えないような努力をしていたのをフィンデルは知っている。
どんなに辛くても泣く事などなかった。

「アイルーナ様‥」
アイルーナ様が泣くのは何年振りだろうか。
手で優しくアイルーナの涙を拭う。
泣かせているのは自分である。
その優越感に浸った。

「何かお別れみたいな発言ですよ。これからはずっとお側にいます。」
アイルーナ様が愛おしい。
抱きしめたアイルーナは思っていたより小さくて守ってあげたいと思った。
主ではなく、命をかけて愛したい唯一の存在。
それが腕の中にいる。

こんなに愛する方と共にいる事が幸せだなんて‥
今まで知らなかった。
目に涙を浮かべるアイルーナ様は本当に美しい‥
フィンデルはウットリとアイルーナを見つめる。

「ずっと側にいます。アイルーナ様、愛しています。」
フィンデルはアイルーナに微笑む。
アイルーナはフィンデルに返事はせず無言で抱きしめていた。

アイルーナとフィンデルは契約を結ぶ。

アイルーナはフィンデルを夫とする。
フィンデルはアイルーナを妻とする。

皇族の契約は絶対だ。
これが正式に承認されれば二人は夫婦となる。
もう一度口づけをする。

フィンデルはアイルーナを欲した。
だが、成人するまでは、結婚が承認されるまではと踏みとどまった。
これ以上はまずい。
これからいくらでも時間はあるのだ。
ゆっくりすすめていこう。

「今日のところは部屋に戻ります。また、朝に来ますね。明日は本当の恋人として一日過ごしましょう。」

「フィン、本当にありがとうね。あなたがいてくれて本当に幸せだったわ。」
アイルーナ様は優しく微笑んだ。

フィンデルはアイルーナの部屋を出た。

これから大変な事はたくさんあるだろう。
だが、アイルーナ様となら乗り越えていける。
フィンデルはアイルーナとこれからも一緒に生きていけると信じていた。

そう信じていたのはフィンデルだけだった事に翌朝気づく事になる‥






朝アイルーナの部屋に来たフィンデルは嫌な予感がした。
部屋にアイルーナ様はいない‥
部屋は綺麗に整えてある。
昨日、フィンデルから教わった事をしっかりと守っていた。
そしてテーブルの上には手紙があった。
フィンデルは手紙を慌てて読む。

『愛するフィンへ
愛してくれてありがとう。とても良い思い出となりました。あなたの事を忘れる事はないでしょう。あなたに幸せが訪れますように。
アイルーナ』

手紙には涙の跡がある。
アイルーナ様は泣きながら書いたのだ。

何故?
どうして何も言わずにいなくなった?
私と同じ気持ちではなかったのか?
フィンデルは混乱した。

思い返せば、昨日からおかしかった。
浮かれていて深く考えなかったが‥
アイルーナ様はずっと過去形で話していた。
もつ私との関係が終わったように。

どうして‥
私は捨てられたのか。
いや、それだったら泣きながら手紙などなど書いていないはずだ。

「フィンデル、愛している。この気持ちは生涯変わらない。これから何があろうとその想いだけは信じて欲しいの。」
昨日アイルーナ様が言ってくれた言葉‥

アイルーナ様に何かあったのだ。
アイルーナ様から真意を聞くまではその言葉を信じよう。
私を愛しているといったアイルーナ様を信じよう‥

フィンデルはそう自分に言い聞かせた。



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