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聖女倒れる
しおりを挟む「聖女様、ルーラン様が本日、お越しになると連絡が入っております。」
ミルダさんの声がする。
「えっ?もう?いくら何でも早すぎない?ルイード脅してないかな‥」
ルイードと話したの昨日なのに。
連絡を入れてすぐ、会いに来てくれるらしい。
すぐに会いに行けとか命令してなければいいけど‥
「そのような事はないと思いますが‥」
視線を外すミルダさん。
うん、ミルダさんもないとは言い切れなかったのだろう。
わかる!
ルイードの最優先事項は聖女だからね‥
あんまり信用できない。
でも、楽しみ!
アイーダの妹ってどんな子なんだろう。
ここに来て友達がいなかったから、色んな話をしてみたい。
こっちの世界の女の子はどんな話するんだろ?
ドレスの話?
ついていけない気がする‥
はっきり言って興味ない。
流行り物?
何が流行っているのか全く情報は入ってこないからさっぱりわからない。
彼氏の話はないだろうし‥
会って何話すかさっぱりわからない!
ルイードとはいつも何話していたっけ?
ルイードは、私がペラペラ喋っているのを聞いていることが多い。
あぁ、最初が肝心なのに!
ルーランさんと仲良くなって友達第一号になってもらいたかったのに。
向こうからみたらお姉さんだろうけど、私からみたらアイーダの妹で、友達と心の中で思うのは許してもらいたい。
「ミルダさん、友達とどのような話をするのか書いている本はない?」
ちょっとでも話を広げるきっかけが欲しい。
日本じゃ、友達の作り方ってネットで検索すればすぐに出てきそうだけど。
ここには、そんな便利なものはない。
「聖女様、そのような本はありません。それにもうすぐルーラン様は到着されます。間に合いませんよ。」
ミルダさんは呆れ気味。
うぅ、そんな事はわかっているけど、最後の悪あがき‥
ちょっとでもいい印象を持ってもらいたいんだよ。
だって久しぶりに人に会うんだから。
ソワソワ
オロオロ
部屋の中をクルクル動き回る。
「聖女様、少し落ち着いてください。いつも通りで大丈夫ですから。」
ミルダさんが笑いながら声をかけてくれる。
いつも通り?
いつも通りってどうだっけ?
「初めまして」はおかしい。姉妹だ。
「久しぶり!」アイーダのテンションとは違うから驚かれそう。
「お会いできて嬉しいです。」他人行儀すぎ‥
最初の挨拶すらわからない!
ここにはいないルイードを恨む。
仕事早すぎなんだよ!
もっとゆっくり連絡してくれれば、心の準備もできたのに。
あぁ、どうしよ。
緊張してきた。
コンコン
「失礼いたします。」
可愛らしい声がする。
胸がざわつき始めた。
ドキドキドキ‥心臓の鼓動が早くなる。
何だろう、この感覚‥
身体が一気にこわばる。
何で?そんなに緊張してるのだろうか。
部屋のドアがノックされ淡いピンクのドレスを着た女の子が入ってきた。
姿勢も歩き方も綺麗だけど、下を向いてプルプルと震えているのが見える。
ルーランさんも緊張しているのかな?
と思った瞬間‥
ルーランさんが顔を上げた。
ルーランさんの顔を見た瞬間、息が吸えなくなった。
いきなりフラッシュバックする。
景色が変わった。
正確には同じ場所だ。
だけど違う。
直感した。
アイーダの最期の瞬間だ。
喉が痛い。
息が苦しい。
誰か助けて。
血を多量に吐く。
両手が血まみれだ。
その苦しみの中で目の前にガタガタと震え涙を流す妹、ルーランが見える。
えっ、何?
アイーダは、最後の力を振り絞って何をしようとしてるの?
どうしてそんなことするの?
そんなことすれば死んじゃうよ!
やめて、お願いだからやめて‥
聖女の力を使う。
「アイーダ!!だめ!」
喉が痛くて声が出ない。
心の中で叫ぶ。
あぁ、アイーダがどうして死んだのかわかった。
どうしてそんな事を‥
バカだ。
ぼんやりそんな事を考えていたら、パァと明るくなって何も見えない真っ白な空間が広がる。
本当に一人だけ。
静かな音のない世界。
この世の終わりを意味しているのは肌で感じる。
頭の中に色んな感情が入り乱れる。
ルイードへの愛情。
ルーランへの想い。
そして父親への怒り。
別世界の同一の存在を探さないと。
本能がそう言っている。
私と同一の存在、魂はどこ?
聖女の印から光が真っ直ぐに伸びる。
この道を進めば、同一の存在に会える。
そう、アイーダと私の出会いに繋がるのだ‥
「聖女様⁉︎」
ミルダさんが慌てる声が遠くで聞こえる。
あぁ、まだこの世界にいるんだ。
アイーダの感情に引っ張られて日本に行くのかと思ってしまった‥
「帰りたいな‥」
そこで私は意識を失った。
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