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女王の苦悩

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「お父様、お母様は、お姉様に説明なさらなかったのですね。」

ローズミナは悲しそうな顔をした。

ミルラレティーはその発言を聞き、怒りがこみ上げてきた。
憎い思いながらも一人ぼっちの孤独の中、会いたくてたまらなかったこの世にいるただ1人の家族。
そんな妹から同情されている。
自分が知らないことすら父母たちと共有していると言っている。
国王たちにとって大切な王女はローズミナ‥
私は必要のない王女‥

クーデターが起こり国王、王妃は殺害されミルラレティーは孤独と疑心の中、生きてきた。

頼れる者はいない。
いつ裏切られるのか‥ずっと怯え、人に弱みを見せたら終わる。
ひたすら虚栄を張り続けた。

その中、愛されたローズミナは国外に逃れ、幸せそうに笑っている。

どうしてこの子だけ!!

「あなたには同情などされたくはない。国を捨てたくせに、何も祖国の現状をのことを知らないのに‥国王たちに愛されてたからすべてはあなたのものなの?あなたは笑いながら悪気もなく、わたくしが必死で守ってきたものを簡単に奪うんだわ。」

ミルラレティーは扇子でギリギリと握りしめた。
今回の帰国も貴族達の申し入れが多かったこともある。
クーデターは落ち着いたといってもまだまだ国は安定していない。
王位第二位であるローズミナをいつまでも国外に置くのは醜聞だと貴族達はいうが、ミルラレティーよりもローズミナを王位につけたいと思っている者たちも多くいた。
何もしないのに、ただ愛されるだけのローズミナに憎みがこみ上げる。

「お姉様‥勘違いをしていますね。あの国に、お父様、お母様に捨てられたのは私ですよ。」

ローズミナは悲しそうに笑いながら言った。

「なっ!そんなわけないわ、あの時、わたくしを逃すはずだったのに国王、王妃が反対し、あなたが国を出ることになった。あなたが選ばれたのよ!生き残る価値のある王女だと!」

ミルラレティーは亡き両親を父母と呼ぶことをやめていた。
自分を必要としなかった人たちだ。
自分にも必要がない人たちだと自分に言い聞かせていた。

「そうですね、生き残る可能性は大きかったでしょうね。」

ローズミナは苦笑いしかできなかった。
選ばれなかったのはローズミナ。
その真実を知っているから。
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