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サキュバスの魅了

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 俺は父上や親族の者たちに、俺が何をして、どういう状態だったかを説明した。

「なるほど、そのアンジェリカと言う娘、推測だが魔族との混血だな。それもサキュバスといったところか」

 おじさんがアゴに髭を整えながらそういう。

「なぜ魔族が人間の領域に潜り込んで、いや、なぜ魔族がこの国に入ってこれたのです」

 この国は他国の侵略から国を守るために結界が張られている。それは空や地上からの侵入を防ぎ民を守る。
 だから魔族が入ることなど、あり得ないのだ。

「サキュバスは下位の魔族だ、故に魔族の反応がなくなるまで血を極限にまで薄めたのだろう、何度も何度も人間との混血を作ることによって」

「なんのために」

「魔神王を解放させるためだろうな」

 王国の西端にある魔王城跡地の魔の森に封じられている魔神王。
 魔神王を封印して生まれた魔の森には大量の魔物がおり魔神王を守るかのごとく魔の森からは出てこない。

 魔の森は高い壁で覆われており、入り口は一つで中央には十年毎に巫女による再封印が行われる教会があり、その中に祭壇で儀式が行われる。
 巫女には魔神王を封じた女神の加護があり魔物は巫女や護衛の者を襲うことができないし、封印の中心である教会の周囲にも入ることが出来ない。

「殿下を落とすことで、巫女による再封印をさせないようにして魔神王を復活させようとしたと言うのか」

 父上が魔族のたくらみに驚きおののく。

「おそらく」

「だだ、不幸中の幸いだったな。今夜、巫女による再封印の犠が行われると言うことだ。これが二、三年後だったら魔神王が復活しておったわ」

 今日、邪魔される心配が無いと言っても、このままでは確実に殿下はアンジェリカのモノになってしまう。

「アンジェリカを殺せば殿下たちの魅了は解けるのですか」

「無理だなサキュバスの魅了は精神支配だから、そやつを殺しても殿下の魅了は解けない。たぶん王族の怒りを買い、うちの家がとりつぶしにあいかねん」

 まあ、竜勇者ドラヴィオンの家系を潰すことなどできんがなと父は笑う。

「犯せ」

 おじさんが唐突に呟く。

「は?」

「そのアンジェリカとやらを犯して逆に精神支配してやるのだ竜勇者ドラヴィオンには精神支配は効かない。逆に竜勇者ドラヴィオンは快楽による全支配能力がある。その力でそのアンジェリカを支配すれば魅了された者たちは戻るだろう」

「あんな糞女を抱けと言うのですか? しかも苦しめるならともかく快楽の虜にするなど」

「それしか皆を救う道はない」

 皆を救う? ベラロルカ様はすでに俺に、俺なんかに汚されたのに、アンジェリカの魅了を解いたとして救われるのか?
 だが何もしなければ再びアンジェリカにベラロルカ様は凌辱されるそんなのは絶対に許されない。
 俺が命に代えても守るんだ。

「……わかりました。それなら、とっておきの方法でみんなの魅了を解いて見せます」

「うむ任せたぞ」

「ただ父上、私はいつまで人間でいられるでしょうか?」

「分からん、怒りに身を任せれば任せるほど早まるとしか言いようがない」

「そうですか分かりました」



 翌朝、学校へ向かった俺は、いの一番でベラロルカ様のクラスへと向かった。

 すでに授業も始まろうとしているのにベラロルカ様の姿はなかった。クラスの者に聞いても俺を無視して話を聞いてもらえない。

「ロミリオ!」

 その声に振り向くとにこやかに微笑みながら殿下が俺の元に駆け寄る。

「レオ、おはよう」

 俺はいつも通り名前で挨拶をする。幼馴染みな俺たちに敬語は不要なのだ。

「お前やったな!」

「なにがだ?」

「ここじゃなんだ、ちょっとこっち来い」

 階段の誰も異な場所に来るとレオが俺の手をとり頭を下げる。

「お前のお陰でアンジェリカと結婚できる感謝するぞ」

「どういうことだ?」

「とぼけなくなったっていいよ。俺とお前の仲だろ。ロミリオ、ベラロルカを犯してくれたんだろ」

 俺の竜眼には殿下の細かいパラメーターが映っている。

状態異常:魅了

 だからこれは殿下の本心じゃない殿下も本当はベラロルカ様が好きなのだから。

「……はい」

「それでな、どうやらベラロルカの奴、妊娠したようなんだよ。誰の子かは絶対に言わなかったとかで、その日の内にベラロルカは修道院送りになったそうだ」

 妊娠? 子供? そんな馬鹿な。いや、操られていた俺は毎日なん十回とベラロルカ様とセックスをしていたのだ生まれない方がおかしい。

 そうか、アンジェリカがベラロルカ様を蹴ったときベラロルカ様を庇ったのは俺が本能的にベラロルカ様のお腹に赤子がいることがわかっていたからにほかならない。

 右目がピクピクと動き、暴れたい衝動に駆られる。

「ベラロルカ様はどこに、どこの修道院に送られたのですか!」

「いや、それは分からない。どうしたんだそんな大声だして」

「そうそう、アンジェリカが後で図書室に来てくれといってたぞ。いいな、なにかご褒美もらえるんだろうな羨ましい」

「ええ、未来の王妃様にご褒美をいただけるなど光栄の極みです」

 羨ましいものかと殿下に心の中で悪態をつく。

「ロミリオならアンジェリカのアナルくらいまでなら許してやるぞ。前は絶対に俺がもらうがな」

 自分の好きな人の一部でも他人にとられて良いなんて。殿下は完全に魅了状態なのだ。
 これでは王妃にならせないために処女を奪ったとしても、自分が奪ったと言い張ってアンジェリカを王妃にしようとするだろう。

 アンジェリカを殺したい気持ちを押さえて、俺はその日の授業に出た。殿下を救ってからベラロルカ様に罰してもらおう。いや、あの方は優しい、俺を糾弾することを願い出ても許すだろう。
 なら、せめて殿下を救いベラロルカ様に謝罪をした後、俺はどこかで死のう。

 戦いでしか死ねないなら魔族を滅ぼすのもいいかもしれない。

 二度とこの国にちょっかいをかけられぬよう徹底的に。

 
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